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災害ボランティア、いつまで善意頼み? 専門家「まとめる官庁ない」
地震や豪雨など大きな災害が頻繁に起きています。復旧・復興のためには、ボランティアの力が不可欠ですが、あまりにもその善意頼みなのが現状です。豪雨で被災した広島県坂町小屋浦4丁目で私が書いた「半取材、半ボランティア」のルポに、「このままでいいのか」というご意見がたくさんありました。ボランティアがもっと参加しやすい環境や、迅速かつ的確に配置できる態勢を、前もって整えておけないのか――。諸外国のNGO・NPOやボランティアの研究を20年以上続けている小野晶子・労働政策研究・研修機構主任研究員に疑問をぶつけてみると、熱がこもって関西弁にもなりつつ、色々教えてくださいました。(朝日新聞編集委員・東野真和)
――災害時の対応をする常設の仕組みがあった方がいいと思うのですが。
「私も常々思っています。度重なる災害だけでなく東京オリンピックの対応も含め、ボランティアをめぐる議論が騒がしくなってきた。各種アンケートでは、こういう激甚災害時に国がボランティアの募集や派遣を行うほうがいいと思う人が80~90%います。しかし国は腰が重い」
――なぜですか。
「国の所管官庁がはっきりしないからだと思います。例えばNPOを所管するのは内閣府なんですが、ボランティアを直接扱っているわけではない。災害やオリンピックとなると、色んな省庁や民間団体がからみあった組織を作らねばならないが、どこがハンドリングするかが難しい。何とか、マスコミで世論を動かしてもらうしかない」
――災害ボランティアのため、というのではないですが、自民党内では復興庁の後継で「防災省」のようなものをつくるべきだという幹部もいますね。
「ドイツにTHW(連邦技術支援隊)というNPOがあるが、内務省が所管していて、そこから年間200億円くらいお金が出ている。そういう官庁ができるとだいぶ違う」
――どんな組織ですか。
「防災、災害救助のほか海外の災害や疫病への国際協力もする。1000人くらいの有給の職員がいて、登録されているボランティアが約8万人。ボランティアは活動したら申請して、実費や小遣い程度のお金をもらう。全国に支部組織があり、トレーニングセンターも持っていて、重機の使い方やマネジメントを学べます」
――派遣や官民の調整などもするんですか。
「2002年のエルペ川(ドイツ東部)の洪水のとき、色んなNPOが援助に来たのですが中心になって采配するところが無いために現場がうまく回らなかったことを教訓にして、2004年にBBK(市民防災支援局)をつくった。そこが市民保護やハザードマップの策定、警察と民間の調整など、災害時の危機管理をするようになった。そこからNPOに、どこにどのくらい出してくれ、というのを指示します」
――日本にも参考になりますね。
「そう思います。ただ、日本は東日本大震災後にボランティア活動に関して何かできるのかな、と思っていたが、のど元過ぎれば熱さ忘れるというのか。国は『社会福祉協議会があるやん』と思っているのでしょうが、大災害の時に采配するには、キャパが小さく荷が重すぎる。本人達も被災者になっている場合が多く、有事の時は別のシステムを作った方がいい」
「被災地外から支援にきたNPOやNGOとうまくやっている例もありますが、パワーをうまく使い切れていないことも多い。ただ、現場でのノウハウは、だいぶ蓄積されてきていて、例えば東日本大震災で甚大な被害があった石巻市では、団体の窓口を別にしてNPO・NGOの協議会が担うなど柔軟な対応をして、『石巻モデル』と言われていました。柔軟に対応出来るかどうかは、首長にかかっているとも思います」
――派遣を登録、調整する組織も必要ですが、参加しやすいしくみも必要ですね。
「ボランティアを受け入れるには、保険や助成金、態勢などの枠組みを普段からつくっておかねば。今のボランティア保険では弱い。東京オリンピックもそうだが、善意に任せたボランティアは危険です」
――ボランティアといっても、色々ありますね。
「介護とか五輪とか、それぞれのジャンルごとに『パッケージ』を作るのは難しい話ではない。災害ボランティアもパッケージを作って、何か災害が起きれば発動する。ただ、その担当官庁は、介護なら厚労省だが、災害はどの官庁が中心になるかわからないんです。とどのつまりは、そこに行き着きますね」
――何か考える時期に来ていますね。
「日本人の特質から考えたら、国が仕切ったほうがええんかなと思う半面、ボランティアは自主的な活動で、国が募るのは「動員」みたいでいやだという人もいるし。誰が考えてくれるんや、と思うかもしれませんが、アイデア持っている人はいっぱいいる。海外も参考にしながら、みんなで考えましょう」
人が足らない。160世帯ほどのうち8人亡くなって1人不明の広島県坂町4丁目。お家の土砂撤去進まない。今日ボランティアセンターからは1人も来ないので取材中断し手伝う。 pic.twitter.com/OXnNWht7zI
— 朝日新聞編集委員(元南阿蘇➕大槌駐在)東野真和 (@otutichuzai) 2018年7月23日
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