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敏感なあなたは「繊細さん」かも HSPの生きづらさを軽くする方法
「相手が気を悪くするといけないから、断れない」「職場で機嫌が悪い人がいると、気になって仕事が手につかない」。こんな悩み、ありませんか? 他人の感情やまわりの環境に、人一倍、敏感な人たちがいます。カウンセラーの武田友紀(ゆき)さん(34)は、そんな人たちを「繊細さん」と呼び、悩みに耳を傾けてきました。繊細さを大切にしたまま、元気に生きるための処方箋(しょほうせん)について、武田さんにうかがいました。
繊細さんは、他人が気づかない小さなことに気づく人です。感じる力が強く、多くの情報を受け取る人とも言えます。
その対象は、多岐にわたります。人の表情や雰囲気、気温の変化、わずかな音、仕事の改善点、自分の気持ち……。その結果、「人と長時間一緒にいると、疲れる」「小さなミスに気づいて仕事がはかどらない」と、悩みがちです。
繊細さんであることは「性格」ではなく、生まれついた「気質」です。ですから、自分の意思で「気づく・気づかない」をコントロールすることはできません。アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が、こうした人たちを「HSP(Highly Sensitive Person)」と名付けました。脳の神経システムに違いがあり、5人に1人の割合でいるとされます。
HSPを「敏感すぎる人」と訳されることもありますが、この気質をポジティブにとらえたいと考え、私は「繊細さん」と呼んでいます。
台所から響く「トントン」という包丁の音の大きさから、「母はイライラしているのかな?」と気になり、不安になることがありました。
大学卒業後、技術者として商品開発を担当しました。でも、一つ実験をすると、あの実験もやらないといけない、あれもこれもやらなきゃと気づいてしまう。すべてに対応しようとして無理が続き、疲れ果ててしまいました。そんな中、アーロン博士の本と出合い、「あっ、私はHSPなんだ」と腑(ふ)に落ちました。その後、自分の特性を生かしたいと、カウンセラーとして独立しました。
読者からは「自分の感じやすさが悪いのかと思っていたので、救われた」「私はコレだ!コレだったんだ!!と心の中で叫びました。私の中に、これでいいんだと芯が入った」との感想を頂きました。
繊細さんの中には、「自分がおかしい」と思っている人もいます。繊細さが性格ではなく、5人に1人の割合でいる気質だとわかるだけでも、気持ちが楽になれる方がいます。
繊細さんが気づくのは自然なことです。ただし気づいたことに片っ端から対応していると、「気づき→対応→気づき→対応→気づき→対応……」の繰り返しに陥り、やることが山積みになって、疲れてしまいます。大事なことは、「気づいたときに対処する方法」です。ポイントは「気づくこと」と「対応」を切り離すことです。
私はよく、相談者に「気づいたことすべてには対応しなくていい」とアドバイスします。ある相談者は職場で休めないという悩みをもっていました。休憩時間にもあれもこれもやらなきゃと、率先して働いていました。電話対応でも、コールが鳴ると同時に手を伸ばしていました。
相談者に、受話器に手を伸ばすのを、一瞬だけ待ってもらいました。すると、同僚がコールをとるようになったと言います。「なんだ、この人ってコールとれるんだ。自分がやらなくても仕事は進むんだ」と、気が楽になったと言います。
一方、コールに気づいても対応しない自分に罪悪感を抱いてしまう繊細さんもいます。こうした葛藤に疲弊しないためには、マイルールをつくることが大切です。たとえば、コールは3回に2回は無視すると決めれば、考えすぎず行動に移すことができます。
繊細さんは、メールを一通出すのにも、「あの情報も必要じゃないか」「表現はどうしよう」と考え続け、時間がかかってしまいます。そんな時は、「とりあえず」、今ある情報だけでメールを送る。何度かやるうちに、ベストでなくても物事が進むことを実感できます。それだけで、気持ちは楽になれます。
繊細さんは人づきあいや仕事では配慮でき、ミスの少ない人として評価されます。自分のまわりにある「いいもの」にもたくさん気づけ、深く味わえます。朝、カーテンの影が床にゆらゆら揺れるのを見るだけでも、私は「きれいだなぁ」と感動します。人の笑顔に、身も心もふっくらします。
人の感情、雰囲気、音、におい……。あらゆる情報を敏感にキャッチしてしまう繊細さんは、刺激を物理的に防ぐ工夫が必要です。
私の場合で言えば、マスク、耳栓は常備品です。緊張するときに気持ちを落ち着かせるお守りとして、ハンドクリームとイヤリングも欠かせません。メガネは2種類用意します。人と話すときは、度が弱いメガネをかけます。よく見えるメガネだと、話し相手のしわまで情報が入ってしまい、うまく話に集中できないためです。
何度も言いますが、繊細さんが「感じる」「気づく」ことはコントロールできません。環境の選択はコントロール可能です。自分の本音を大切にして、好きな人がいる場所に行く、好きな仕事をすることが大切です。
自分に合う環境に身を置くことが大切なのは、非・繊細さんにもあてはまります。ですが、繊細さんは感じる力が大きい分、合わない環境にいるとストレスが大きくなってしまうので、重要です。
自分が繊細さんかどうか判断するために、アーロン博士によるHSP診断テストがあります。「他人の気分に左右される」「騒音に悩まれやすい」「生活に変化があると混乱する」など23個の質問に対し、「はい」「いいえ」で答えていきます。
本人が繊細さんだと思って悩んでいて、このチェックリストでも「はい」が12個以上あれば、おそらく繊細さんでしょう。
ただ、チェックリストはあくまで目安です。「はい」が多くても、その人が必ず繊細さんというわけではありません。「自分は繊細さんじゃない」と思う人は繊細さんではありません。自分がどう思うかが大切であって、他人が決めつけるものではありません。
「自分の繊細さは気質」と思うことで気持ちが楽になれ、私が伝えるノウハウが役に立つのであれば、「私は繊細さんだ」と主観的に認定すればいいのではないかと思います。
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