話題
「脱ブラック部活」は実践例の共有へ 弊害を叫ぶだけでは終わらない
短い時間で効果的な練習を目指すチームが集まった「部活動サミット」が、9月16、17日に開かれました。主催したのは、短時間練習を実践する静岡聖光学院高ラグビー部。長時間練習など行きすぎた活動が問題視されてきた中高の部活動ですが、「ブラック」を叫ぶだけの時代は終わり、「脱ブラック」の実践を共有する段階に入っています。(朝日新聞スポーツ部・中小路徹)
参加校は、広島県の安芸南高サッカー部など6チーム。部員たちが、短い時間の中で練習の質を高める方法を発表したり、ディスカションをしたりしました。
静岡聖光学院高ラグビー部は「練習の質に波があるのが課題」と報告。参加校の生徒が入り交じってそれを克服する方法を話し合い、「試合中に近い脈拍になるような負荷をかけ、練習時間を試合と同じ時間に設定するなど、リアリティーが必要では」などの意見が出されました。
短時間の活動に加え、部員が練習メニューや試合のメンバーなどを決める「ボトムアップ式」と呼ばれる方法を採る安芸南高サッカー部からは、仲間の良いところを投稿し合う「いいねBOX」の工夫が発表されました。「みんながポジティブになれ、何でも議論し合える環境作りにつながる」
メンバーを部員同士で選ぶことについては、「選ばれた側にみんなの代表という責任、選んだ側に支える気持ちが生まれ、チームに一体感が出る」と言います。
2016年に全国中学校体育大会で優勝した埼玉県春日部市の豊野中バスケットボール部の田中英夫監督も講演。平日の練習は2時間程度で、下校時間が早まる冬場は1時間だそうです。
「24秒以内でシュートしなければいけないルールがあることから、一つの練習を24秒にして、リズムを体に覚えさせる」「練習メニューもフォーメーションも選手が主体になって決め、代替わりした時に一からしなくてすむよう、先輩後輩を組み合わせて練習する」といったやり方が披露されました。
このサミットから読みとれる短時間練習のポイントの一つは、部員たちの自主性です。自分たちで考え、話し合い、練習を組み立てることで、質の向上につなげる。そんな運営になると、顧問も見守る姿勢になり、暴力的な指導とも無縁になります。
このサミットを企画したのも、静岡聖光高ラグビー部員です。企画の中心になった3年の風間悠平さんは「安芸南高サッカー部の見学に行き、『もっと他の学校から学びたい』『短時間での効果的な練習の方法を共有する場をつくりたい』と思った」と話します。
筆者はこのほど、『脱ブラック部活』(洋泉社)を刊行しました。運動部活動の問題点や部活動改革への動きなどを担当し、朝日新聞に書いてきたことに加筆したものです。
文武両道を阻み、生徒にとっても顧問を務める教員にとってもゆとりを奪う長時間の活動のほか、暴力的指導の横行、重大事故の多発など、「ブラック部活」の現状は今なお、克服されていません。しかし、「脱ブラック」の実践は全国で生まれています。部活動改革には、問題が生じる背景の分析とともに、実践例の共有が必要だと思います。『脱ブラック部活』には、そんな取り組みを紹介することで、それぞれの現場でのヒントになれば、という願いも込めています。
1/233枚