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「Wの悲喜劇」初めて男性が出演した番組とは?



誰も教えてくれなかった「男の性教育」 アベマTVが切り込んだ理由

「Wの悲喜劇」の放送シーン=AbemaTV提供
「Wの悲喜劇」の放送シーン=AbemaTV提供

目次

 女性の問題を正面から取り上げ、「男子禁制」とうたうインターネットテレビ局Abema(アベマ)TVの番組「Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース~」が8月、初めて男性出演者を招いた番組を作りました。テーマは「オトコの性教育」。男性の芸人や俳優らがこれまで誰にも聞けなかったという悩みも吐露し、泌尿器科医と助産師を交えて話し合いました。収録の様子を取材し、プロデューサーに企画の狙いを聞きました。

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「コーラで洗うと妊娠しない、信じてた」

 番組冒頭、司会のSHELLY(シェリー)さんから「学校で性の知識を習った記憶はありますか?」と質問された男性たちは「小学校の時、女子が体育館で集められたけど、男子はサッカーをしてた」「間違ったことも含めて友達や先輩から聞いた」などと話し、「習った」という人はいませんでした。

 大人になってからウソだと気づいた情報として、芸人コンビ「ストレッチーズ」の福島敏貴さん(26)が「避妊せずに(セックスを)した時に女性器をコーラで洗うと妊娠しないと聞いて、ずっと信じてた」と言うと、うなずく男性陣。男性には「あるある」の話だそうです。

 テレビ局のアシスタントディレクター、今泉翔太さん(30)は「(女性の)顔に射精していいもんだと思ってた」と打ち明けました。

「Wの悲喜劇」の放送シーン=AbemaTV提供
「Wの悲喜劇」の放送シーン=AbemaTV提供

初めて精液を見て「大パニック」

 マスターベーションの仕方が分からなかった、自慰行為をしすぎると死ぬ「テクノブレイク」といううわさ話を聞いて不安だった……、といったことも話題に。

 小中高校生に性教育の授業をしている助産師の桜井裕子さん(54)によると、「彼女が潮を吹きませんが……」という悩みを相談する男の子も多いそうです。番組内で桜井さんが「(潮吹きは)AVでの演出です」というと、「え、そうなんですか」との声があがりました。

 成長段階に応じた知識を身につけられていないため、1人で悩む男性の姿も伝わってきました。「ストレッチーズ」の高木貫太さん(27)が「(初めて自分の精液を見た時に)大パニックになった」と振り返ると、助産師の桜井さんは深くうなずきます。

 性教育の授業をした小学5年生の男の子から「ちんこのガンだと思ってた。白いウミが出るから、もうすぐ死ぬんだと思ってた」と言われたことがあるそうです。

包茎手術の広告に「お金をためなきゃ」

 包茎も話題にあがりました。福島さんは「僕は包茎なんですけど、女性がしてくれる時に『痛い』と言えなくて真っ赤に腫れたことがある。でも恥ずかしくて病院に行けませんでした」と明かし、今泉さんは「包茎手術の広告を見て『お金をためなきゃいけないのか』と思っていた」と振り返りました。

 「射精道」を提唱し、学校などで性教育をしている泌尿器科の今井伸医師(47)は「普段から、むいて戻す『むきむき体操』をしておくといい」と助言しました。

 今井医師からは「間違ったオナニーをしていると、膣(ちつ)内でうまく射精ができなくなってしまい、不妊の原因になる」という話も。出演者からは驚きの声があがりました。

「Wの悲喜劇」の放送シーン=AbemaTV提供
「Wの悲喜劇」の放送シーン=AbemaTV提供

「学校でもフランクに教えてくれたら」

 最後は、どのようにして好きな相手との距離を縮めたらいいのか、というテーマに。

 「手つないでいい?とか、キスしていい?とか、めっちゃ聞きます」という意見の一方、「ださいな、と思っちゃうから絶対に聞けない」という声も。俳優の岸天智さん(24)は「そもそも、なんで『男性から女性』が当たり前なんですかね? バランスが違いすぎる感じがする」と疑問を投げかけました。

 収録後、出演者に話を聞きました。「ストレッチーズ」の福島さんは「テクノブレイクとか安全日とか、改めてうその情報が多いんだと感じました。今日は専門家に断言してもらえて良かった。でも、まだ知れてないことがあるのでは、と不安もあります」。

 高木さんは「自分でなんとか得てきた知識は間違っていたんだと、今日気がつきました。そろそろ人の親になってもおかしくない年齢なので、知らないことがあることが怖くなった」といいます。「学校でも、今日みたいに先生がフランクに教えてくれたら良かったな、と思いました」

 今井医師は「今日の話は、普段性教育の授業をしている中高校生と変わらないような内容。疑問を持ったまま大人になっている、ということですよね」。今はインターネットで様々な情報を得られますが、間違った情報も流布しています。「病院のサイトなどから、正確な情報を得てほしい」と呼びかけます。

「Wの悲喜劇」の放送シーン=AbemaTV提供
「Wの悲喜劇」の放送シーン=AbemaTV提供

スマホ番組「親に知られず見られる」

 これまで「男子禁制」とうたってきた番組で、なぜ男性向け性教育をテーマにしたのでしょうか。「Wの悲喜劇」の鎮目博道プロデューサー(49)に話を聞きました。

     ◇

 「この番組は若い方がスマホで見ているので、親やきょうだいに知られずに見られるという特徴があります。だから、知っておかないといけないけど、人には聞きにくい知識を伝えたいと思いながらいつも番組を作っています。女性の性教育は過去に3度取り上げました」

 「男の子にとって、性の知識を身につけるのは孤独な闘いなんです。『この先輩なら知ってるかな』『アダルトビデオを見たら分かるかも』と手探りで探し回って見つけていくんだけど、その中にデマも混じっている。そうして大人になり、人の親になっている。これって、恐ろしいよね、と」

 「女の子は男子に比べたら性教育を受けているかもしれないけど、男の子については習わないだろうなと思い、今回は男女両方に役立つのではと思いました」

「Wの悲喜劇」の放送シーン=AbemaTV提供
「Wの悲喜劇」の放送シーン=AbemaTV提供

「普通に話していいんだ、という空気を」

 「番組には同時進行でコメントが書き込めるのですが、いつもは厳しめの反響も多いのに、今回は『ありがとう』『勉強になった』というコメントが並びました。みんな知らなかったんだろうな、やって良かったな、と思いました」

 「性にまつわることは恥ずかしいからタブーになっている。でも、実害も出ているし、困っている人も多いんだから、『普通に話していいんだ』という空気を作らないといけないと思います」

 「男女で話すことが恥ずかしいから行き違いがあって、セクハラが起きたり、デートレイプが起きたりするのかもしれない。会話できないことが根本的な問題なのだと思う」

 「『女性にはニコニコ優しく笑っていてほしい。性のことなんか知らないでほしい』というような幻想を持っていたい男性の気持ちは分かります」

 「でも、そんな幻想の存在と、人間として対等に付き合えないですよね。悪いけど、幻想は捨ててください、と言うしかない。人間なんですもん。ましてや、男性と女性という分け方ができないぐらい、多様性がある」

 「性のことだけではなく『言わなくても分かるでしょ』というのは怖い。お互い『ああだこうだ』と言っていく世の中にならなきゃいけないと思う」

「Wの悲喜劇」の放送シーン=AbemaTV提供
「Wの悲喜劇」の放送シーン=AbemaTV提供

取材を終えて

 今回の取材では目からウロコがボロボロと落ちるような気がしました。女性は初潮を迎える前にある程度の知識を学校や家庭で教わるのに比べて、男の子は何も知らないまま精通を迎えて「病気かも」と思うことがあるなんて……。

 それなのに性に関しては「男の方が詳しい。男子がリードすべき」と思ってしまう風潮が男女ともにあるのではないでしょうか。みんなが知識をつけてカジュアルに話し合えるようになれば、お互いをもっと尊重しあい、いとおしめる関係が築けるのではないかと感じました。

 「性教育の取材をしている」と話すと驚かれることがありますが、学べば学ぶほど、自分やパートナーを大事にするためには身につけておくべき知識だとの思いが強くなります。

 何より、自分の体のことはきちんと知っておきたい。歯が痛ければ歯医者さんに行くように、性器に心配なことがあれば産婦人科や泌尿器科に行くのが当然、という風になればいいな、と思います。

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