はじめての音楽体験
縦長のスクリーンには指揮者の動きに合わせた映像が映し出される=写真提供・日本フィルⒸ山口敦
青く光っているのがOntenna、観客が抱いているのがSOUND HUG=写真提供・日本フィルⒸ山口敦
変態するオーケストラ
指揮者の海老原光さん=写真提供・日本フィルⒸ山口敦
映像はどことなく肋骨のようだった=写真提供・日本フィルⒸ山口敦
ボレロを見て、ボレロに触れる
海老原さんと日本フィル交響楽団には盛大な拍手が送られた=写真提供・日本フィルⒸ山口敦
音楽会のあと
オーケストラとは、人の意地
落合さんは「それ(オーケストラの本質)はすごくある」と話します。
「例えば、記憶だったり心の中にある風景だったりするようなイメージって絵でもないし、音でもないじゃないですか。だから音を聴いて頭の中に出てくるイメージみたいなものは、それは音でもないし光でもないし、違う形をしている」
「でも作曲家が表現したいのはそれだから、それと同調するといいんですよ。ビゼーの気持ちになる、ってやりながら聴いていると、なんかそういうものが出てくるんじゃないかと思う」
「演奏家は音を演出したいかもしれないけど、作曲家は別に音をやりたい訳じゃなさそうなこともよくあるからね。画家は、絵もかきたいんだけど、絵を通じて表現したいものがあって、それをどうやって感覚に分けない段階まで、抽象的に戻るか。そういうことなんじゃないですか」
「イメージを音に限定しない。オーケストラって、僕は人の意地だと思っている。ああいうのはすごいいいと思います」
テクノロジーと障がい
落合陽一さん=写真提供・日本フィルⒸ山口敦
「ひと言でいうと、感覚をマルチにして解像度を高める。耳で聴くものと目で見るものと体で感じるものを全部一気に合わせると、耳が聞こえる人、目が見える人も楽しいし、例え耳が聞こえなくても楽しくなる」
「そういう一つの感覚に頼っているものをマルチ感覚にしていくかということやっていきたくて。そうすれば、あらゆる芸術の解像度は上がっていくじゃないですか。それをやりたいんですよね」
「耳で聴かない音楽もいいし、目で見ない絵画もやりたいんですよ。いま、例えば目が見えない人のためのプロジェクトをやっていて、感覚がマルチ化していくと楽しいよねって」
「変態する音楽会」は、テクノロジーを用いることで、障がいが問題とならない地平でオーケストラをしようとしているように見えました。
オーケストラを「再発明」した落合さん。聞こえる人も、聞こえにくい人も、聞こえない人も、それぞれの人がそれぞれの方法でオーケストラを楽しむことができる。そんな未来の扉が少し開けているのを見たような気がしました。

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