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コラム

「おk」「うp」「草生える」…使いますか? 広がる「打ち言葉」とは

インターネットの広がりやIT機器の発達で、文字は書くだけでなく「打つ」ものにもなりました。

ネット上に飛び交う「打ち言葉」
ネット上に飛び交う「打ち言葉」

目次

【ことばをフカボリ:18】

 「おk」「うp」「www」――。インターネットの広がりやIT機器の発達で、文字は書くだけでなく「打つ」ものにもなりました。「鬱(うつ)」や、「語彙(ごい)」の「彙」など複雑な文字も簡単に表示できる一方で、従来の表記では伝えにくい感情などを補おうと、顔文字や絵文字、そして、これまで見られなかったユニークな日本語の表記も続々と現れています。そういった表記が増加する背景を調べました。(朝日新聞校閲センター・田島恵介/ことばマガジン)

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メールなどでさまざまな感情を伝える「絵文字」
メールなどでさまざまな感情を伝える「絵文字」

OKを表す「おk」


 ネット空間では、同音の文字などを用いて意図的に誤記・誤変換したような表記が多く見られるようになりました。

 たとえば、OKを表す「おk」、アップロード(アップ)を表す「うp」、アカウントを意味する「垢(あか)」、「お疲れさま」を意味する「乙(おつ)」……。

 さらには、主に文末につける「(笑)」の意味で、 warai の頭文字 w を草の形に見立てた、「www」や「草」、または「草生える」という表現まであります。少し前までは、「(笑)」の代替で「藁(わら)」という誤変換表記もありましたが、こちらはやや廃れています。

 最近では、サッカー・ワールドカップ(W杯)のロシア大会をきっかけに、7、8年ほど前にネットで見られた「本田▲」(「本田三角形」→「本田さんかっけー」→「本田圭佑選手かっこいい」)という表記が復活しました。一部で話題にのぼったので、ご存じの方も多いかもしれません。

サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会に出場した本田圭佑選手
サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会に出場した本田圭佑選手 出典: 朝日新聞

文化庁も注目


 国もこうした傾向に注目しているようです。文化庁は今春、「分かり合うための言語コミュニケーション」という報告を出しました。そのなかで、「おk」や「うp」などを「『打ち言葉』の特性に由来する独特な表記」と位置づけています。

 「打ち言葉」というのは書き言葉の一種ですが、LINEや携帯メール、SNSでやり取りする際に用いられる「くだけた話し言葉的文体」のことを指します。

 東洋大学の三宅和子教授(社会言語学)は、こうした文体を「超言文一致体」と名づけました。「おk」や「うp」などの表記には、正しいとされる規範からあえて逸脱しようとする特徴が見られるといいます。

 文化庁の報告は、それらの表記を「新しいコミュニケーションの形」と評しつつ、その浸透度が世代で異なることを指摘しました。10代の5割が「おk」などを「使うことがある」と答えたのに対し、50代以上では「見たことがない」人が6割を超えたそうです。

文化庁文化審議会国語分科会の「分かり合うための言語コミュニケーション(報告)」
文化庁文化審議会国語分科会の「分かり合うための言語コミュニケーション(報告)」

個性を表現しようとする思いの表れ?


 このような表記が増えているのは、手書き文字には備わっていた書き癖などの個性を、電子メディアでも表現しようとする思いの表れだとも受け取れます。

 かつては「丸文字(変体少女文字)」など、書き文字の形そのものが同世代間のコミュニケーションツールになることもありましたが、文字を「打つ」時代に入って、文字の表す音や文字に備わる「遊戯性」がその代替手段となった観があります。ひところ流行した「ギャル文字」もこの類いだといえるでしょう。

 とはいえ文化庁の報告では、「俗語的な印象の強い誤変換由来の表記は広く受け入れられるには至らない様子がうかがえ」ると、むやみな使用に注意を促しています。

 ネットの世界では、ある種の閉鎖的なコミュニティーが発達しやすくなります。そのため、ネットスラングや専門用語が飛び交い、それらに対する理解を前提に話が進んでゆくこととなって、いきおい初心者などの「他者」を排除しがちです。

 異なる世代間やグループ間のやり取りでは、時に応じ、場合に即した表記のあり方が求められることになるでしょう。

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