連載
#2 コミチ漫画コラボ
「学校が楽しいふり」していませんか? 仮面の自分に気づくマンガ
作品の舞台は海の中。かわいい魚のキャラクターが語りかけます。
「あっ大丈夫?」「目が覚めた?」
「君はあの“陸”から落ちてきたんだねぇ」
海に落ちた「君」は、自分のことを犬だと思っています。陸は「とっても楽しかった」居場所でした。
でも、魚はしんどそうな「君」の本当の姿を言い当てました。「君は おサカナじゃないか…」
世界にはいろんな生き物がいることを伝えます。
「“陸”が暮らしやすい生き物もいれば “海”がいい生き物もいる」
「“群れ”好きがいて… “一人”好きがいる…」
「世界は広いから 君の居場所はきっとあるよーー」
動物が好きだという豊倉さん。学校は「サバンナ」だったと振り返ります。
「学校は、いろんな環境で育った生物が檻(おり)なしで共存しています。動物園でも檻があるのに、肉食動物も草食動物も一緒です。草食動物が生きづらいと感じるのは当たり前です」
「みんなで群れをつくるのが好きな『ライオン属性』の人といるときは、自分もライオン属性になれば、居づらいと思わずに済むんじゃないかと思っていました。自分を励ます時に、わたしは魚だから陸は生きづらいと言い聞かせていたこともあります」
周りのみんなとなじもうとして、楽しく過ごす自分を演じていた日々。息苦しさをどうにか変えるために、新しい環境を探し求めていました。「受験をして新しい場所に行ったら、自分の居やすい場所があるかもしれないと期待しました」。それでも、居心地のいい場所はなかなか見つかりません。
中学校は女子校。仲間はずれにされることもありました。高校は共学になりましたが、男子との関わり方が分からなかったといいます。男子から机に「死」と書かれたこともありました。
学校に行かないという選択肢はありませんでした。「親に嫌われたくない」という不安があったからです。
小学校から私立だったこともあり、学費のことも心配でした。夜トイレに行こうと思ってリビングを見ると、学費の話をしている両親の姿が。高いお金を払ってもらっているのだから、楽しく学校に行く自分を見せないといけないと思ったそうです。
「親も楽しくしている娘を見たいんじゃないかと思って、演じちゃうんです。楽しくない自分を見せたら、精神の弱いヤツだと思われて嫌われるんじゃないか。『学校に行きたくない』という負の言葉は言っちゃいけないと思っていました」
家ではベッドの中が一番の居場所でした。
「ふとしたタイミングで死にたいと思ったこともあります。一息ついたときとか、学校のトイレとか。学校に居場所はないし、家ではまた『学校が楽しい自分』を演じる。いつまでこの繰り返しなんだろうと思っていました」
大学はデザイン学部に進みました。「絵」という共通項がある人たちの中で、評価されたり、仲間が出来たりして、少しずつ本当の自分を出せるようになりました。
マンガ業界に進んだいま、仮面を外して話せる「親友」と出会いました。今回マンガを投稿するときも、マンガ家の友達に意見をもらったといいます。常に居場所を求めてきましたが、ようやくたどり着きました。
「いろんな海に行ったから、居心地がいい場所に出会えました。いままでの旅は無駄ではありませんでした。途中で諦めちゃったら、理解者がいることに気づかなかったかもしれません。ずっと合わない環境で無理やり仮面をつけて暮らしていたと思うんです」
「本当の自分を理解してくれる人、情けないところを見せ合っても許せる人は、見つかると思います。今に絶望しないでほしいです」
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withnewsは7月、マンガのSNSを運営するコルクBooksとコラボし、「#学校がしんどい君へ」をテーマに生きづらさを抱える10代へ向けた作品を募集しました。のべ37作品が集まり、4作品を入賞に選びました。入賞者のみなさんは、どんな思いでマンガを描いたのでしょうか。みなさんの10代も振り返ってもらいました。
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