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フォロワー5千人で逮捕も?エジプトで成立の法律がとんでもなかった
フォロワーの多い人は要注意? エジプト国会はこのほど、フォローしている人の数が5000を超えるツイッターやフェイスブックなどの個人アカウントを、「メディア」とみなす法案を可決しました。エジプトはメディアに対する規制が厳しく、さしたる説明もなく記者が長期間にわたって拘束される例が相次いでいます。その範囲を広げ、ソーシャルメディアを狙いうちにしたものと言えそうです。(朝日新聞国際報道部・神田大介)
エジプトでとんでもない法案が可決。フォロワー5000件以上のツイッター、フェイスブック、ブログなどは個人アカウントでもメディアとみなし、政府がフェイクニュースを流したと判断すれば刑事罰を受ける。ロイター。 https://t.co/OO8Y3F7P4c
— 神田大介 (@kanda_daisuke) 2018年7月19日
現地からの報道によると、法案は定数596のエジプト国会で、3分の2の議員が賛成して可決しました。フォロワーが5000を超えるアカウントは新聞、テレビなどのメディアと同じ扱いとなります。
そしてエジプトはメディアの動向を厳しく監視。当局が「フェイクニュースだ」と判断すれば、記者は拘束されてしまいます。何がフェイクなのかの線引きは明確にされていませんが、はっきりしているのは、「政権批判はまずい」ということです。
エジプトでは2013年、軍部によるクーデターがあり、その後就任したシーシ大統領は陸軍の出身。
次第に強権的な姿勢を強め、今年3月にはメディアに「軍や警察に対する侮辱はすべてのエジプト人の名誉を汚す行為だ。言論の自由ではなく、国家への反逆である」と警告しました。
実際に、大統領の政策に批判的な記事を書いた記者が「大衆を扇動している」などとして、数カ月間にわたって拘束されるケースが相次いでいます。
2015年9月には、衛星テレビ局アルジャジーラの記者3人に禁錮3年の有罪判決が言い渡されました(後に恩赦)。クーデターを受けて「エジプトは内戦状態」と報じたことで、虚偽報道やテロ組織支援などの罪に問われました。
国際NGO「国境なき記者団」が発表した2018年の「報道の自由度ランキング」で、エジプトは180カ国・地域のうち、最低ランクに位置する161位。「記者にとって世界で最も巨大な牢獄のひとつだ」と評されました。
エジプトではいま、激しいインフレで物価が上がり、国民の暮らし向きが悪化しています。ですが、政権を批判する報道は影を潜めています。
今回の法案は、こうした動きを一般市民にも広げるのではないかと警戒されています。
エジプトでは2011年、「アラブの春」と呼ばれる民主化革命がありました。若者を中心とした大規模な反政府デモが起き、独裁政権は退陣。
このとき、人々が連絡をとりあうツールとして使われたのが、当時はまだ普及の途上にあったフェイスブックやツイッターでした。
政権はこうした動きを恐れている可能性もあります。
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