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「キリンもゾウもいない動物園が…」 園長がポスターに込めた思い
北九州市にある動物園「到津の森公園」のポスターが、ネット上で注目を集めています。

「キリンもゾウもいない、そんな動物園があってもいいじゃないか」。そんな書き出しで始まるポスターが、ネット上で注目を集めています。北九州市にある動物園「到津の森公園」の園長が書いたもので、園内に貼り出されています。もともと民間企業が経営していましたが、2000年に経営難で閉鎖。市が買い取って再出発した経緯がある動物園です。文章に込めた思いを園長に聞きました。

ツイッターで話題に
今月3日にツイッター投稿された画像。写っているのは到津の森公園に貼ってあるポスターです。
そこには、こんな文章が書かれています。
キリンが1頭死んだ。キリンは群れで飼いたい。
ゾウは、いま2頭いるけれど、死んだらもう飼わない。
もともと群れで生活している動物を2頭だけで生活させるなんて、ゾウのことを考えていないと思う。
この動物は2頭だけでは子供をつくれないのだから。
飼うなら10頭。インドゾウなら、森のなかで暮らせるようにしてあげたい。
キリンもゾウもライオンもいない、そんな動物園があってもいいじゃないか。
外国の動物園を真似たようなのじゃなく、日本人らしい情趣のある公園のような動物園。
森で憩える動物園。
ここは、一度無くなりかけたけれど、北九州市民がとりもどした動物園なんですから、市民のみなさんには自分の庭だと思って来ていただきたい。
到津の森公園園長 岩野俊郎

園長に聞きました
5年ほど前から貼り出されているというこのポスター。メッセージの上には動物のイラストが描かれています。園長の岩野さんは、こう話します。
「デジタルツールを使った動物画の審査員をしたことがあって、その特選作品をポスターにしようということになったんです。その際に、一緒に園からのメッセージも書くことになりました」
一度つぶれて再建された経緯がある動物園。固定概念を壊して、新しい動物園を模索する姿勢を表現したといいます。
「キリンもゾウもいない動物園があってもいいじゃないか、と書きましたが、現在キリンは3頭、ゾウは2頭います。でも、書いてある通り、ゾウが死んでも新しく飼う予定はありません。もともと群れで生活している動物ですから」
岩野さんの理想は、自然界で何か起こった際のバックアップとしての環境を動物園が持つことです。

動物を見るのではなく、感じて
旭山動物園の元園長とも交流があるという岩野さん。施設整備に関しては旭山動物園をまねないと心に決めているそうです。
「それぞれの環境や気候に合った園を目指すべきだと思うんです。到津の森公園では、飼育施設の地面をコンクリートではなく土や草にして、より自然に近い環境になるように取り組んでいます」
動物を見るのではなく、感じてもらいたい。そんな思いで運営しているといいます。
ポスターが話題になったことについては、こう話します。
「ときどき来園者に声をかけられることはありますが、ツイッターでも話題になったと聞いてありがたいです。今までの動物園とは違うと感じてもらえたのであればうれしいですし、それが各地の動物園を変えていくきっかけになると思います」