お金と仕事
ピーターラビットと信託の意外な関係 世界一の景色守った作戦とは
映画でも大人気の「ピーターラビット(TM)」。実は「信託」と深いつながりがあるそうです。信託銀行や投資信託・・・。信託がついた言葉はいくつか思い浮かびますが、なんだか難しそうなイメージ。一体、どんな関係があるのでしょう。
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映画でも大人気の「ピーターラビット(TM)」。実は「信託」と深いつながりがあるそうです。信託銀行や投資信託・・・。信託がついた言葉はいくつか思い浮かびますが、なんだか難しそうなイメージ。一体、どんな関係があるのでしょう。
映画でも大人気になった、ご存じ「ピーターラビット(TM)」。イギリスの田舎を舞台にした、かわいいウサギが主人公の物語です。このピーターラビット、じつは「信託」と深いつながりがあるそうです。信託銀行や投資信託……。信託がついた言葉はいくつか思い浮かびますが、なんだか難しそうなイメージ。どんな関係があるのか、答えを探しに「信託博物館」にやってきました。(朝日新聞記者、柴田秀並)
東京駅から徒歩3分。丸の内の超一等地に、西欧風の重厚な建物が見えてきます。「信託博物館」です。
運営する三菱UFJ信託銀行本店ビルに隣接していますが、本店ロビーにもいきなり、ウサギたちの森が。
謎が深まります。
さっそく「信託博物館」の中へ。
館内には、信託の歴史が分かる資料や、基礎知識をまとめた映像を映す大型モニターが並びます。
その一角に、ありました。見慣れたジャケットを着たウサギの展示です。
事務局長の友松義信さんが解説してくれました。
「ピーターラビットの作者ビアトリクス・ポター(TM)(1866~1943)は、英国・湖水地方をとても愛した方でした。物語の舞台として、この地が多く登場します」
「湖水地方」とは、イングランド北西部、大小の湖が点在する美しい景観で知られる地域です。
ポターは小さい頃から避暑でこの地を訪れていたそうです。やがてこの地に魅了されたポターは湖水地方のニア・ソーリー村という所に移り住みます。ここで、多くの作品を生み出していきました。
しかし当時は開発ラッシュの時代。売りに出された土地が業者によって乱開発される恐れがありました。
自らの愛した土地や自然を守ろうと、ポターは私財をなげうって自ら土地を購入する決断をします。
「ポターは1905年にニア・ソーリー村にあった農場を買ったのを皮切りに、土地だけでなく、小さな一軒家など、どんどん買い取っていきました。その資金には、本の売り上げもあてられています」
私財を捧げ、自らの愛した地域を守るなんて、頭が上がりません。でも、それと「信託」がどう関係するの?
「ポターはこの地を後生に残すために、イギリスで発生し、勃興しつつあった『信託』=トラストを使いました」
友松さんによると、信託とは「誰かが誰かに何かを託す」仕組みです。その源流の一つが中世の騎士と言われているそうです。
出征すると自らの土地が妻子だけになり、近隣の有力者に奪われる危険がありました。そこで騎士たちは、信頼する友人に管理を託して土地を譲渡したのです。
イギリスではこうした仕組みが進化し、託された者にきちんと管理させる法制度も整っていきます。そして、信託の仕組みがあらゆる場面で使われるようになりました。
ポターも自分がいなくなった後に自然が破壊されないよう、信託しました。彼女の遺言で、東京ドーム360個分という広大な土地のほか、農場や数多くのコテージを「ナショナル・トラスト」という非営利団体に寄贈しました。
信託された団体は、自然環境や歴史的建造物を保護管理する目的に創設され、現在では日本も含めて世界各地で設立されています。
ポターから信託された広大な土地や自然を、いまも守っています。数多くの観光客が訪れ、その入場料収入がこの地域の保全・維持にあてられているそうです。
ちなみに彼女の遺言の一部はとてもユニークです。自らが愛した風景をそのまま残したいという思いがにじみます。
三菱UFJ信託銀行は、ピーターラビットをイメージキャラクターに使って今年で30年といいます。
「愛されるキャラクターであるのはもちろんです。それに、ポターが自らの愛した自然を残したいという願いを信託しました。我々も、お客様からいろんな財産を託して頂き、思いに応えるお手伝いをしています。少々おこがましいですが、そういう意味では同じだと思っております」。友松さんは、そう締めくくりました。
信託博物館は入場無料。平日の午前10時~午後6時に開館しています。ピーターラビットのプリクラも撮れちゃいます。「8種類あって、撮影は無料です。全パターン撮るファンの方もいますよ」と友松さんの部下の堀いづみさん。
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