お金と仕事
「メルカリ映え」する意外なブランド 内部データから見えた世界
メルカリの上場によって注目を集めたフリマアプリは、新しい価値観を生み出しつつあります。「マンガ全巻を出品してから読む」「ユニクロの中古でも平気」。メルカリの内部に蓄えられた膨大なデータから、物欲という言葉の定義を揺さぶるフリマの世界を覗いてみました。
設立から5年のメルカリですが、アプリのダウンロードは7100万という、日本最大のフリマアプリになっています。
そんなメルカリの内部に蓄積されたデータからは、急速に発展しているフリマという二次流通の世界が見えてきます。
まずブランドもの。落札されるブランドの1位はユニクロ、出品されるブランドでもユニクロは2位でした。ユニクロが存在感を持つ理由は、全国的な知名度があること。そして、中古品に対する抵抗感が薄れている背景があります。
【落札アイテムのブランド】
1位ユニクロ
2位ナイキ
3位アディダス
4位シャネル
5位ラルフローレン
(2013年7月2日〜2018年4月30日)
【出品アイテムのブランド】
1位ナイキ
2位ユニクロ
3位アディダス
4位シャネル
5位ラルフローレン
(2013年7月2日〜2018年4月30日)
ランキングにはシャネルのような高級ブランドも入っています。メルカリによると、例えば口紅は他の人が使った先の方を少し削って、そのまま使う人がいるそうです。中古品への抵抗感の薄まりは、高級ブランド品のコスメ商品にも現れています。
出品と落札、どちらも5位にいるラルフローレンが入っています。シャネルほど高級ではありませんが、子ども服などに「ちょっといいもの」を安く手に入れたい需要があるそうです。
ナイキとアディダスも上位にあります。これはスニーカーのコレクター同士が売り買いをしているためです。
「価格.com」のような比較サイトによって、実店舗で試して最安値の通販サイトで購入する「ショールーミング」が広まりました。
今、メルカリによって生まれているのは、フリマに出品することをあらかじめ考えた上で購入する行動です。その代表格が「マンガ全巻」です。
メルカリは落札が決まると決められた日数以内に配送しなければいけません。メルカリユーザーの中には、期限内に読み切ることを前提にマンガを買いすぐに出品、汚さずに読み終えた物を配送する人がいます。
定価で買ったとしても、下取りの価格が引かれるので結果的に格安でマンガを読むことが可能になります。
買う側の心理にも変化は起きています。それが「修理を前提」にした落札です。
メルカリでは画面が割れたスマホがよく出品されます。時計なども動かなくなった状態であっても落札されます。
修理業者にメルカリの画面を見せて修復可能かどうかを聞いた上で、落札しているのです。
中には自分で直せる人や、別の使い方をする人、多少の破損は気にしない人もいるそうです。
従来なら高級自動車や不動産でしか成立しにくかった中古市場が、普段使いのアイテムでも生まれています。
中古市場の拡大によって思わぬ発見もあります。
メルカリの定番アイテムに「玉ねぎの皮」があります。普通なら生ゴミですが、染色の素材として需要があります。
同じようにピスタチオの殻、トイレットペーパーの芯も工作の材料として人気です。牛乳を飲まない家庭にとって、牛乳パックを集めるのは大変です。そんな時、メルカリで検索すれば「椅子作成用1個分」が送料込み300円で手に入ります。
メルカリのデータからは地域の特徴も浮かび上がりました。全国のユーザーを見ると次のランキングになります。
【全国の人気カテゴリー】
1位キャラクターグッズ
2位アイドル関連グッズ
3位ミュージシャン関連グッズ
4位iPhoneグッズ
5位ハンドメイドグッズ
(2017年1月1日〜2017年12月31日)
ところが、4位に「野球」が入ってくる県があります。広島県です。
【広島県の人気カテゴリー】
1位キャラクターグッズ
2位アイドル関連グッズ
3位ミュージシャン関連グッズ
4位野球
5位ハンドメイドパーツ
(2017年1月1日〜2017年12月31日)
どうやら広島県民にとっては、iPhoneよりもカープの方がニーズがあるようです。
メルカリのアプリが一番多く使われるのは午後10時。帰宅して夕食を済ませくつろいでいる時間帯です。トレンドワードなどで盛り上がったアイテムは、そのままメルカリの出品と落札に跳ね返ります。
ランチの時間帯も利用が増えます。1人で食事をする間、時間を潰す感覚で使う人が多いそうです。
メルカリによると、欲しいアイテムをインスタグラムで調べるような使い方が増えているそうです。
買い物の調べ物ツールは、検索サービスから始まり、女性向けサイトの「MERY」のようなユーザー層を絞ったメディアが加わり、さらにインスタと広がって来ました。
今、起きているのは「とりあえずメルカリで調べる」という流れです。フリマアプリというサービスが買い物の主流になった時、物を持つという価値観自体が変わる可能性を秘めています。
売る前提で買い物をするのなら、「メルカリで高く売れるか」は新品のアイテムを買う際に重要な要素になります。
その結果、シャネルのようなブランド品から、ユニクロのような手頃な商品まで、中古市場を見越した「メルカリ映え」な商品が求められてくるのかもしれません。
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