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2018年06月25日

探偵!ナイトスクープ、涙の「神回」舞台裏 プロには出せない素人力

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平城宮跡で奈良文化財研究所(奈文研)の解析を待つ探偵の田村裕さん(左)と依頼者=朝日放送テレビ提供

平城宮跡で奈良文化財研究所(奈文研)の解析を待つ探偵の田村裕さん(左)と依頼者=朝日放送テレビ提供

 「探偵!ナイトスクープ」(朝日放送テレビ)は、関西人にはおなじみの人気番組です。視聴者からの素朴な依頼を、タレントの探偵たちが大真面目に調べる中で、思わぬ出会いが生まれます。そんな「神回」の一つが「レイテ島からのハガキ」です。消えかけた文字……遺跡発掘のエキスパートの協力で浮かび上がった父の思い。出演者も視聴者も涙なしには見られなかった番組の舞台裏を聞きました。

5千件から選ばれた「ベスト6」

 「探偵!ナイトスクープ」(朝日放送テレビ)は、放送後にインターネットなどで大きな話題になる「神回」と呼ばれる依頼があります。

 2011年に放送された「レイテ島からのハガキ」は、戦争で引き裂かれた親子の絆をつなぐ唯一の手がかりの「ハガキ」をめぐる話です。

 今年、番組開始30周年を記念して、5千件の依頼から選んだ「神回」のベスト6に入りました。

レイテ島にあるマッカーサーの銅像=ロイター

レイテ島にあるマッカーサーの銅像=ロイター

何度も何度も読んで消えかけた文字

 依頼は、60歳代の男性からでした。フィリピン・レイテ島に出征し、戦死した父は、自分が母のおなかにいることを知っていたのかという内容です。

 ヒントは、父が戦地から送ったハガキに書かれた文字。「身重」とも読めそうですが、消えかかっていてはっきりとわかりません。

 依頼者の母親が何度も読み返したため、薄くなってしまったようです。その母親が亡くなり、遺品を整理していたところ、このハガキが見つかりました。

依頼者の父親が戦地から送ったはがき=朝日放送テレビ提供

依頼者の父親が戦地から送ったはがき=朝日放送テレビ提供

最後にやって来た奈良文化財研究所

 この日の探偵役のタレントは麒麟の田村裕さんでした。田村探偵と依頼者は、ハガキを拡大コピーしたり、写真の専門学校などに持ち込んだりしたが、解読できません。

 とくに最後の4行は字がほとんど消えかかっていて、まったくわかりませんでした。

 そして、最後にやって来たのが、奈良文化財研究所でした。

今月完成した奈良文化財研究所の新庁舎

今月完成した奈良文化財研究所の新庁舎

普段の相手は「平城京の木簡」

 奈良文化財研究所とは、奈良県内にある飛鳥宮、藤原宮、平城宮の古代の都を発掘調査している機関です。通称、奈文研(なぶんけん)と呼ばれています。

 当時、奈文研の担当者として対応したのが番組にも出演した馬場基(はじめ)さん(45)でした。

 馬場さんは平城宮跡の発掘調査や木簡などの出土品の分析、日本史や東アジア史の研究などを行う研究者です。

 「鉛筆で文字が書かれているのを見たとき、何とかなるかもしれない」と思ったそうです。赤外線を当てて鉛筆の炭素の成分を強調させれば、解読ができると考えました。

奈良文化財研究所が普段、調査をしている木簡

奈良文化財研究所が普段、調査をしている木簡

出典:(木簡の古都学:9)ゴミ捨て穴が「標本棚」に 山本祥隆:朝日新聞デジタル

職員「供養だから、しっかりやろう」

 それは、平城宮跡などで出土する木簡の、ほぼ消えかかった文字を解読するときの手法でした。

 奈文研写真室の職員が、ハガキを赤外線撮影し、光の色やあて方を変えて撮影した複数の写真を合成することで、ハガキの文字を浮き上がらせることに成功しました。

 馬場さんによると、赤外線撮影の技術が進歩していたことが大きかったようです。「もう少し昔だったら無理だったでしょう」と話していました。

 田村探偵と依頼者が平城宮跡で待機する間、ハガキの文字を、木簡の文字や古文書を読む職員も協力し、一文字ずつ判読していきました。

 職員らは「供養だから、しっかりやろう」と声を掛け合っていたそうです。なんとか依頼者の思いに応えたいという一心だったのでしょう。

番組の中で、はがきに書かれた文字を見る馬場基さん(左)ら=朝日放送テレビ提供

番組の中で、はがきに書かれた文字を見る馬場基さん(左)ら=朝日放送テレビ提供

「やっぱりわかってくれたんですね」

 そして、奈文研に戻ってきた田村探偵と依頼者の前で、馬場さんはハガキのほぼ全文を解読できたと伝えます。

 そこには「身重」「妊娠の妻」という言葉がはっきりと書かれていました。ほとんど読めなかった最後の4行には、依頼者の父親が母親に送った辞世の歌が書かれていました。

 ハガキを読みながら、依頼者の男性は「やっぱり(父は)わかってくれたんですね」と涙をぬぐいました。

 その様子を見た馬場さんも思わずもらい泣き。その様子も放映されました。

 「自分の役割を果たせてホッとしたときに依頼者の涙を見てしまったので」と照れ笑いを浮かべ、振り返りました。

依頼者の涙にもらい泣きをする馬場基さん=朝日放送テレビ提供

依頼者の涙にもらい泣きをする馬場基さん=朝日放送テレビ提供

「自分の経験と重ねた人の心に残った」

 馬場さんは奈文研の研究者として、NHKの「ブラタモリ」や「探検バクモン」などにも出演しています。

 それでも、今も街中で「レイテ島のハガキ」のことで声をかけられることがあるそうです。「探偵!ナイトスクープ」が人気番組だからという理由だけではないと馬場さんは思っています。

 「依頼者と似たような経験をした人は、世の中にはたくさんいる。自分の経験と重ねた人の心に残っていたのではないでしょうか」。実は、馬場さんの祖父も戦時中にフィリピンで亡くなっています。



出典:ツイッターでも有名な奈文研の馬場さん

取材を終えて

 日本に残した妻と、おなかにいた子どもを案じながら戦地で亡くなった父親。戦後、母親は夫からのハガキを大切に保管し、子どもを育てました。

 依頼者の男性の真相を知りたいという切なる思いに、奈文研の馬場さんらが応えようとする様子が、視聴者の心に響き、「レイテ島のハガキ」は「神回」になりました。

 「探偵!ナイトスクープ」が30年も変わらず愛される理由も、このプロには出せない「素人力」にあります。依頼者や馬場さんが思わず流した涙に、多くの人が共感したはずです。

番組の中ではがきに書かれた文字の解読を見守る馬場基さん(右)ら=朝日放送テレビ提供

番組の中ではがきに書かれた文字の解読を見守る馬場基さん(右)ら=朝日放送テレビ提供

 文字の解読を依頼されただけの馬場さんが、依頼者の涙にもらい泣きをした場面をきっちりと抑え、放映する。素人の持つ力を最大限に引き出す番組作りが、関西人に愛される理由なのではないでしょうか。

 激しい視聴率の競争の中にある民放のバラエティー番組の中で「探偵!ナイトスクープ」が異色の存在なのは、すべての出発点が、素人である視聴者の身近な悩みや素朴な疑問から始まっていることです。

 ベスト10入りした「神回」には、「レイテ島のハガキ」以外にも、「23年間会話のない夫婦」や「泥酔する父親に悩む家族」などがランクインしました。どちらも家族という身近な問題に、「探偵!ナイトスクープ」ならではの切り口で問題解決を迫る展開が魅力的です。

はがきの文字の解読を終えて説明する馬場基さん(右)=朝日放送テレビ提供

はがきの文字の解読を終えて説明する馬場基さん(右)=朝日放送テレビ提供

 「神回」のように、地上波のテレビ番組が、ツイッターやインターネットで話題になることで新たな魅力が発見されることも少なくありません。

 「探偵!ナイトスクープ」の人気の理由。それは単に笑いを追求するだけでなく、依頼者に真剣に寄り添い、一見すると馬鹿らしいと思えることでも全力で取り組む姿勢が、視聴者の心に刺さっているのかもしれません。

「探偵!ナイトスクープ」30年の中で選ばれた「神シーン」
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依頼者の涙にもらい泣きをする馬場基さん=朝日放送テレビ提供
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