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「産後の父親」が、今するべき仕事 「とにかく、早く帰ってきて!」
出産後は赤ちゃんとの幸せな生活をイメージしがちです。ですが、産後に母親がうつになるケースが後を絶たず、父親がうつになることもあるそうです。助産師であり、産後うつに詳しい東京情報大学の市川香織准教授に、実情と対策を聞きました。(朝日新聞文化くらし報道部記者・山本恭介)
――産後の母親へのケアの大切さについて、提唱しています。
「出産後、母親の7~10人に1人がうつになるというデータがあります。子どもの名前や保育園探しなど、夫婦で出産前に話し合うべきテーマは多いですが、母親の産後ケアの準備は忘れがちです。しっかりと話し合っておくべきテーマです」
――産後は赤ちゃんとの幸せな生活をイメージしますが、どのようなメカニズムでうつになるのしょうか?
「『産後、母親の体はすぐ元に戻るだろう』と考える人が多い。でも、体が戻るまでに3カ月はかかります。産後に母親はホルモンが激減して精神的に不安定になります。体にも大きいダメージが残ります。高齢出産も増えているのでなおさら」
「そんな状態でも赤ちゃんは2時間おきに泣くし、排泄もするし、思い通りにはならない。『私では育てられないのでは』と母親は心身ともに追い込まれていきます」
――「産後うつ」には、どのような兆候がありますか?
「チェックポイントは、いつも通りご飯を食べられているか、眠れているか(寝たいけどうまく眠れない)、笑顔があるかなどです。父親にできることは、仕事から帰ったら『今日は元気だった?』『ご飯食べられた?』と声がけをして、『気遣う』ことです」
――産前にどんな準備が必要ですか?
「子育ては母親だけでは成立しません。周囲の人やサービスを活用できる環境を準備しておくべきです。できないことはできないと頼ること。母親の『孤育て』にしてはいけません」
――「孤育て」を防ぐにはどうすれば?
「夫、実家の両親、経済的に余裕があれば外部サポートを考慮に入れて、役割分担をしていきましょう」
――役割分担するにも父親には家事が苦手な人も少なくありません……。
「父親は家事の分担をするだけでなく、仕事を早く切り上げて母親が1人になる時間を減らすだけでも違います。『早く帰って来てくれるだけで安心』という母親は多いです」
――自治体のサポートなどを利用する際の注意点は?
「実家の両親にも、どのようなサポートがほしいかを事前に話し合っておきましょう。住む自治体でどのような育児サービスを受けられるか確認しておき、民間のサービスも把握しておくといいです」
「うつになると、人は自分で対応したり、行動したりするのは難しくなるので、事前の準備が大切です」
――「産後うつ」は特にどのような人がなりやすいのですか?
「バリバリと仕事をしてきた人に多く見られます。産後に育児が思い通りにならず、そのギャップを受け入れられないことが多いからです。『今頃仕事をしていたらなあ。私、何しているのだろう』とふさぎこみがちです」
「そういう母親には、『子育ては大きな仕事で、ステップアップの機会だよ』と言います。赤ちゃんを育てることでマルチタスクをこなせるようになり、仕事にも生かせるのです」
――父親がうつになる場合もあるそうですね
「父親の産後うつにも注意です。母親と同じくらいの割合でなるとも言われます。仕事も育児も完璧にというまじめな父親ほどなりやすいです。互いに気負いをせずに、SOSを出しやすい状況を作ることですね」
「大切なのは、夫婦一緒に同志としてやっていくこと。産後の特に大変な時期に一緒に育児をしたという経験は、後々の夫婦関係にもプラスに働きます。もし産前に準備ができていなかったとしても、大丈夫です。互いを気遣って、話し合っていけば、遅すぎることはありませんよ」
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