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まさに最強、大阪の「阪堺電車」! 地震あっても…10分で運転再開

18日朝に大阪北部を襲った最大震度6弱の地震。関西のJRや私鉄などほぼ全線が長時間運休し、交通機関が混乱しました。そんな中、地震発生後すぐに運転を再開した交通機関も。それは大阪の南部を走る「阪堺電車」。阪神・淡路大震災の際も当日に再開したとのすご技。すぐに再開できた理由、調べてみました。

阪堺電車を待つ人たち=2018年6月18日、天王寺駅前停留所、小川詩織撮影
阪堺電車を待つ人たち=2018年6月18日、天王寺駅前停留所、小川詩織撮影

目次

 大阪北部を襲った最大震度6弱の地震。関西のJRや私鉄などほぼ全線が長時間運休し、交通機関が混乱しました。通勤途中だった記者も、電車内で一斉に鳴り響く緊急地震速報を聞いたあと、そのまま車内に閉じ込められ…。そんな中、発生後すぐに運転を再開した交通機関も。それは大阪の南部を走る「阪堺電車」。阪神・淡路大震災の時も当日に再開したとのすご技。すぐに走り出せた理由、調べてみました。(朝日新聞大阪編集センター・小川詩織)

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5時間かけて出社

 高校野球で有名なPL学園のある富田林市在住の記者は、2018年6月18日朝、いつも使っている金剛駅(大阪狭山市)から南海高野線に乗りました。ここら辺は「南河内」という大阪南部の地域で、かなりきつめの大阪弁をしゃべります。

 そして、電車に乗って5分後に地震が発生。車内に閉じ込められた記者でしたが、徐行と停止を繰り返す中で1時間経ち、電車はようやく最寄りの白鷺駅(しらさぎえき、かっこいい名前ですね)に。堺市北区です。ここでは車内から出る人、出ずに運転再開を待つ人など様々でした。

 記者は白鷺駅で降り、会社までたどり着くために必死で交通機関を探しました。しかし、そこは微妙な田舎。タクシーが止まるような大きな駅ではありません。

 とりあえず主要な駅に向かう路線バスに乗りました。そのバスの中で、無線から聞こえた声は「阪堺電車は運行しています」。まさに天の声! 

 神にもすがる思いでバスを乗り継ぎ、阪堺線の宿院停留所に。電車に乗ることができ、なんとか天王寺駅前停留所にたどり着きました。

 そこからは、動き始めた大阪メトロを乗り継ぎ、約5時間かかって出社しました。仕事の時間はほぼ終わりでしたが…。

 普段は約1時間の道のりのため、5倍の時間がかかった計算になります。

阪堺電車=2018年6月18日、小川詩織撮影
阪堺電車=2018年6月18日、小川詩織撮影

阪堺電車って?

 通称「阪堺電車」は大阪府に残るただ一つの路面電車です。「はんかいでんしゃ」と読み、阪堺電気軌道株式会社が運行しています。

 阪堺電車の名前から分かるように大阪市と堺市にまたがって運行中。1回の乗車で、全区間において大人210円で、市民の「生活の足」となっています。

 乗った客車を馬が引っ張った「馬車鉄道」をルーツとする「上町線」と、旧阪堺電気軌道が建設した「阪堺線」の二つの路線があります。1915年に南海鉄道に買収され、1980年に分離・独立して再スタートを切ったように、かなりの歴史があります。

地域の人たちの足として親しまれる阪堺電車=2011年、大阪市阿倍野区
地域の人たちの足として親しまれる阪堺電車=2011年、大阪市阿倍野区 出典: 朝日新聞

 阪堺線のいくつかの停留所では、都心へ向かう乗客の長蛇の列ができていました。
 
 阪堺線に乗る直前にツイッターで検索していると、「助かった。阪堺電車動いてる」「これで会社に行けます」「最強や。動いてくれててありがとう」「5分くらいで動き出した。ホンマに神」「最後の希望」。唯一動いている阪堺電車に、感謝の嵐です。

 阪堺電気軌道によると、阪堺線は地震発生(午前7時58分ごろ)から10分ほど経った午前8時10分に、時速10キロほどで徐行しながら運転を再開。

 午前8時45分には通常の平均時速40キロで運行していました。似たような区間を走っているJR阪和線や私鉄(南海高野線や南海本線)が昼以降まで運転を再開できない中、この復旧スピードはずば抜けていました。



阪神・淡路大震災でも当日に!

 実は、あの阪神・淡路大震災のときも、阪堺電車は当日に運行を再開していたとのこと。

 どうしてそんなにタフなのか。阪堺電気軌道に聞いてみました。

 「何より他の私鉄などと比べて線路の距離が短いことが、早く復旧できる要因ですね」と営業課の松村正明さん。たしかに、安全確認作業が早くできるというのは大きなメリットかも。

 「それからたまたまですが、今回の地震で沿線は震度4だったので、運転手の目視で線路を確認しながらの運転再開が可能でした」

 鉄道会社では地震の時の安全規定を定めています。阪堺線では、震度4以下であれば「運転手の目視による確認」で済みますが、震度5以上になると「徒歩で巡回して線路を点検する」という規定になっているといいます。今回は運転手の目視による点検だったので、すぐに運転再開ができたということでした。



JRはどうでしょう

 一方、関西の東西南北に路線を持つJR西日本はどうだったのでしょう。JR西日本は、翌日19日の始発でようやく全線が復旧しました。

 広報に問い合わせてみると、ここまで復旧が遅れた要因の一つとして「乗客の誘導に係員をまわした」からだといいます。

 地震が起きると、工務担当の係員が、線路のゆがみや陥没の有無、線路上の石が崩れていないかなど設備点検を行います。しかし、今回は駅ではない場所で停車した列車も多く、乗客の誘導の後に線路の安全点検をしたことで復旧に時間がかかってしまったということでした。

 阪堺電車に話を戻します。「そういうことなので、路面電車だから特別に地震に強いってことはあんまりないかな…」と阪堺電気軌道の松村さんは話します。

 そうでしたか…。しかし、何はともあれ、あの地震で10分で運行を再開した阪堺電車は、記者を含め、多くの通勤困難者の希望の光になったと思います。



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