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お金と仕事

レゴランドの入場者数「非公開」の謎 他のテーマパークも…その理由

昨年4月に開業したレゴランド・ジャパン。入場者数は非公開になっている=2017年4月30日、名古屋市港区、朝日新聞社ヘリから
昨年4月に開業したレゴランド・ジャパン。入場者数は非公開になっている=2017年4月30日、名古屋市港区、朝日新聞社ヘリから 出典: 朝日新聞

目次

 昨年4月に名古屋市にオープンした「レゴランド・ジャパン」。開業当初にネット上で「入場料が高い」との意見が噴き出し、その後、割引策を打ち出したり、ホテルや水族館を開業したりと、様々な話題を提供してきました。では、開業から1年でどれだけの人が訪れたのでしょうか。運営会社に聞くと、答えは「公表しません」。えっ、テーマパークや遊園地が入場者数を言わないってアリなの? 入場者数「非公開の謎」について調べてみました。(朝日新聞名古屋報道センター記者・山本知佳)

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目標は公言、でも非公開

 休みの日に出かけるところを探していて、「入場者数ランキング1位」とか言われたら、行ってみたくなりませんか?(私は行ってみたくなります……)。

 取材をする時にも、どれぐらい人気な施設なのかを示すため、年間入場者数を聞くことはままあることです。

 ちなみにレゴランドは、初年度の年間目標を200万人に設定していました。昨年9月には100万人を突破したことも発表しています。

 では、目標を公言しているのに、なんで入場者数を出さないんでしょう。運営会社に尋ねてみると、意外な答えが返って来ました。

レゴランドのショー「ニンジャゴー・トレーニング・ザ・ファイト」=2018年3月17日、名古屋市港区、戸村登撮影
レゴランドのショー「ニンジャゴー・トレーニング・ザ・ファイト」=2018年3月17日、名古屋市港区、戸村登撮影 出典: 朝日新聞

「目標を達成したかも、公表しません」

 「親会社(英マーリン・エンターテイメンツ社)の株主総会で公表しないと決まっているので。目標を達成したかも、公表しません」

 まさか株主総会で決まっているとは……。入場者数って本当は公表しちゃいけない数字なのでしょうか?

 そこでほかの施設にも、公表の有無と理由を聞いてみることにしました。

レゴランド・ジャパンのトーベン・イェンセン社長=2018年3月、吉本美奈子撮影
レゴランド・ジャパンのトーベン・イェンセン社長=2018年3月、吉本美奈子撮影 出典: 朝日新聞

USJも非公開、オリエンタルランドは……

 まずは、日本屈指の人気を誇る「東京ディズニーランド」と「東京ディズニーシー」を運営するオリエンタルランド(千葉県)。

 ランドとシーを合わせた人数を、半期に一度公表しているそうです。その理由は「上場企業なので、投資家への情報提供のため」。半期に一度なのは、決算の時期にあわせたからとのことでした。

 それでは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪市)はどうでしょう?

 「今は公表しなくなりました」(広報担当)

 なんと! レゴランドのほかにも公表していないところがあったとは。

 聞くと、昔は公表していたようですが、昨年4月に運営会社が米メディア大手のコムキャストの完全子会社になってから公表しなくなったとのことです。

 担当者によると、一般的に海外では収益の方が重視され、入場者数を公表しない場合の方が多いといいます。入場者数には招待客も含まれるため、入場者数がそのままテーマパークの収益と結びつくわけではないから――ということでした。

 親会社にとってテーマパークは、ホテルや映画制作といった事業の中の一つ。会社全体の収益で判断してほしい、という思いがあるようです。

オリエンタルランドは半期に一度公表。写真は東京ディズニーランドの開業35周年を記念したパレード「ドリーミング・アップ!」=2018年4月、千葉県浦安市
オリエンタルランドは半期に一度公表。写真は東京ディズニーランドの開業35周年を記念したパレード「ドリーミング・アップ!」=2018年4月、千葉県浦安市 出典: 朝日新聞

志摩スペイン村は3期間だけ

 最近、人気急上昇中のハウステンボス(長崎県)は、入場者数の情報を、株主のためのほか、報道機関向けにも半期に一度のペースで公表しています。

 ハウステンボスは開業から18年、営業赤字が続いて経営危機に陥ったことがありました。その経験から、入場者数も「業績の一つ」として積極的に出しているとのことでした。

 一方、期間をしぼって公表しているところもあります。

 三重県にある志摩スペイン村が公表しているのは、ゴールデンウィーク、夏休み、正月の3期間だけ。なぜこの期間だけなのかというと、三重県内の主要観光施設の観光者数を県が調べ、公表しているからだそうです。

志摩スペイン村はGWなどの3期間だけ公表。写真は観客も参加するストリートミュージカル=2017年2月、三重県志摩市
志摩スペイン村はGWなどの3期間だけ公表。写真は観客も参加するストリートミュージカル=2017年2月、三重県志摩市 出典: 朝日新聞

「人気商売ですから……」

 毎年、国内の主要レジャー施設の総覧を出版している「綜合ユニコム」(東京都中央区)は、テーマパークのほか、動物園や水族館などを含めた約600施設に入場者数などを聞くアンケートを送っています。

 そのうち半分くらいが回答を送ってくるそうです。どうも、入場者数を公にはしていなくても、業界紙のアンケートやマスコミの取材には答えている施設はあるようです。

 その理由として、あるテーマパークの担当者はこう話します。「人気商売ですから、そういうランキングに名前が出なくなるのは困ります」

入場者数も「業績の一つ」として積極的に出しているハウステンボス。イルミネーションが冬の目玉企画になっている=2018年1月、長崎県佐世保市
入場者数も「業績の一つ」として積極的に出しているハウステンボス。イルミネーションが冬の目玉企画になっている=2018年1月、長崎県佐世保市 出典: 朝日新聞

専門家「細かく公表すると無用な影響」

 施設によってこんなに対応がばらばらなのはなぜなのでしょうか。レジャー産業に詳しい桜美林大学の山口有次教授(観光学)に聞いてみました。

 山口教授は「細かく公表すると無用な影響が出てしまう」と指摘します。

 入場者数は天候や休日の並びに左右されがち。それなのに細かく公表されると、減ったと知られれば「人気が落ちた」と思われて避けられ、増えると「人気だから」と客が集中しすぎて、かえって不満が出る可能性があるといいます。

 また、入場者数を細かく公表しすぎても、他社に経営の中身や利益率のことを探られかねないとも指摘します。

 その上で、山口教授は、「経営がしっかりできていることを示す意味でも、年間の入場者数ぐらいは出してもいいのでは」と話します。

 楽しい時間を過ごせるテーマパークや遊園地。入場者数を巡る対応の裏には、シビアで現実的な理由があるようです。

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