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京都のお寺、あえて「インスタ」アピール 本当に伝えたいこと…

清水寺の満開の桜=2018年3月、京都市東山区、写真家・須藤和也さん撮影
清水寺の満開の桜=2018年3月、京都市東山区、写真家・須藤和也さん撮影

目次

 古いものを守っている寺は、意外にも新しいもの好きです。少しずつ時代の先端を取り入れてきました。「インスタ映え」が流行語になる今は、インスタグラムを使いこなし、寺の魅力をアピールしています。ただ、目的はそれだけではありません。スマホより、祈りのひとときに――。(朝日新聞大阪社会部記者・岡田匠)

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Shusho-e|修正会 2018.1.7

音羽山 清水寺|Kiyomizu-deraさん(@feel_kiyomizudera)がシェアした投稿 -

清水寺の公式アカウントに込められた思い

 先駆けとなったのは、「清水の舞台」で知られる京都の世界遺産・清水寺です。まだインスタが広まる前の2014年に始めました。公式アカウント「feel kiyomizudera」には、清水寺そのものを感じてほしいという思いが込められています。

 四季折々の風景はもちろん、僧侶や仏像にもカメラを向けています。たとえば正月の行事「修正会(しゅしょうえ)」の写真では、ほの暗いお堂のなかで2人の僧侶がお経を唱えています。「まるでフェルメールの絵のようです」「凛(りん)とした気が満ちあふれてます」とフォローされました。

 今年3月、随求(ずいぐ)堂というお堂で、222年ぶりにご開帳された大随求菩薩(ぼさつ)の写真には「素敵」「素晴らしい。美しさに涙が出ます」というコメントが寄せられています。

清水寺の大随求菩薩=2018年3月、京都市東山区、写真家・須藤和也さん提供
清水寺の大随求菩薩=2018年3月、京都市東山区、写真家・須藤和也さん提供

「現在進行形仏教寺院」って何?

 インスタを担当する僧侶の大西英玄(えいげん)さん(40)は清水寺の特徴として、「歴史的文化遺産」と「現在進行形仏教寺院」を挙げます。

 「特に現在進行形仏教寺院として、祈りの場であることがまず大前提です」と説明してくれました。

 ただ、修学旅行生や外国人観光客をはじめ、お参りにくる人たちはスマホをかざし、撮影に夢中になります。

 その人たちが撮りたくなるスポットの写真を、清水寺がインスタにアップしておけば、撮影にあてる時間を短くできるかもしれない――。

 そんな狙いも、実はあるのです。大西さんはこう呼びかけます。

 「もちろん写真を撮る時間も大切ですが、寺では手を合わせてほしいと思います。30秒でも1分でもいい。祈りのひとときにあて、自分自身と向きあってください」

清水寺の大西英玄さん(左)=京都市東山区、写真家・須藤和也さん撮影
清水寺の大西英玄さん(左)=京都市東山区、写真家・須藤和也さん撮影

若い世代に「信仰」を

 清水寺から祇園へ歩き、八坂神社を抜けると、高さ24メートル、幅50メートルの巨大な三門(国宝)がそびえ立ちます。浄土宗総本山の知恩院です。

 この三門で4月、僧侶が夜通しで念仏を唱える「ミッドナイト念仏」が営まれました。知恩院のインスタには、そのときの写真もアップされています。

 知恩院は3年前からフェイスブックに取り組んできました。ただ、フェイスブックでは届きにくい世代がある、と感じていたそうです。

 僧侶の池口龍法(りゅうほう)さん(37)は「10代、20代の女性や外国人に知恩院の魅力を知ってもらい、信仰に結びつけてほしい」と明かします。

インスタ引っ張るのも若い僧侶たち

 お寺が自らインスタ? 最初、この取り組みを聞いたときは寺の懐の深さを感じました。伝統的な寺と最新のインスタはかけ離れているように思えますが、僧侶たちの話を聞いていくうちに親和性を感じました。

 むかしから仏の教えをわかりやすく伝えるため、曼荼羅や絵解きのように目で見る手法や、節をつけた声明やご詠歌のように耳から入る方法があります。技術の進歩にあわせてツールは変わっても、根底にあるのは「寺を身近に」という思いです。

 インスタにアップするために旅行をする人がいるほど、SNSが浸透した時代。

 「インスタ映え」するお寺にとって、観光地としての側面がますます目立ちやすくなってます。

4月からインスタグラムを始めた知恩院。中心になった僧侶の池口龍法さん=2018年6月2日、京都市東山区
4月からインスタグラムを始めた知恩院。中心になった僧侶の池口龍法さん=2018年6月2日、京都市東山区

 そんな中、お寺自らがインスタを活用してまで目指すのは「祈り」でした。

 実は知恩院のインスタを始めたのは、池口さんら20代、30代の若い僧侶たちです。奈良の長谷寺のインスタは、30代の僧侶が撮影から編集まですべてを担っています。

 若い僧侶が「開かれた寺」をめざし、寺の可能性を広めています。最後に清水寺の大西さんの言葉を紹介します。

 「移りゆく時代のなかで存在意義を示すことが伝統です。寺も時代、時代で変わっていきます。大切なのは“軸”を見失わないこと。その軸は信仰です」

知恩院で営まれた法要=京都市東山区、知恩院提供
知恩院で営まれた法要=京都市東山区、知恩院提供
【関連リンク】
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