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「ホワイトタイガー飼いません」動物園が看板製作 覚悟決めた理由は
「今後、ホワイトタイガーは、飼育しません」。福岡県の動物園にある看板が、ネット上で大きな反響を呼んでいます。製作の背景には、人間の都合に振り回される動物について知ってほしいという、スタッフたちの強い思いと覚悟がありました。
看板は、福岡県大牟田市の「大牟田市動物園」が作ったものです。今年2月、メスのホワイトタイガー「ホワイティ」の飼育舎前に設置されました。
2枚組みの板には、ホワイトタイガーの出生にまつわる説明が、イラストや写真付きで載っています。
たとえば、「ホワイトタイガーはみんな親戚!?」と題された解説コーナー。トラを見て「珍しい」「白くてかっこいい」と喜ぶ人たちに、飼育員が「人間が親子や兄弟間で交配させている」「持病があったり短命だったりする個体もいる」と語りかけます。
この他、密猟などにより、トラが絶滅の危機にひんしているという解説文も掲載。最後は「今後ホワイトタイガーを飼育することはありません」と結んでいます。
今月3日、看板の写真がツイッター上に投稿されると、「動物が置かれた現実を考えさせられる」「好きだけどもう増やさないで」などのコメントが殺到。3万件以上リツイートされ、「こういう姿勢は大事にしてほしい」と評価する声もありました。
「正しい情報と、事実をしっかり伝えないといけない。そう考えたことが、製作のきっかけです」。大牟田市動物園で、トラやライオンの飼育を担当する斉藤礼(あや)さん(23)はそう語ります。
ホワイトタイガーは1950年代、インド北東部のベンガル地方で見つかった「ベンガルトラ」の白変種とされています。ホワイトタイガーを公開している東武動物公園(埼玉県宮代町)によると、国内の動物園では、約40頭が飼育下にあります(2016年現在)。
大牟田市動物園のホワイティは人気抜群です。県外から見に訪れるファンがいる一方、好奇の目を向けられることも多く、生態にまで関心を寄せる人はまれだといいます。
「お客さんから『見ると幸せになれるって本当ですか?』と言われたこともあります。園として、ホワイトタイガーについて積極的に説明してこなかったことも原因かもしれません」
この園では、出産を控えた動物の胎児のエコー画像を公開するなど、生き物の情報をありのままに発信してきました。こうした方針を踏まえ、斉藤さんを含む飼育員3人が看板を発案し、1カ月ほどで完成させました。
斉藤さんによると、看板を設置して以降、「まだホワイトタイガーを飼っているのに薄情だ」といった批判も園に届いているそうです。
ホワイティは現在17歳。人間でいえば80歳くらいです。後ろ足の関節が十分に形成されず、うまく歩けないというハンディもあります。そのため、飼育舎内にスロープを設け、地面の段差をなくすなどの工夫を施しています。
「預かった命をみとるところまでが、私たちの役割です。ホワイティの元気な姿を通じ、ホワイトタイガーを始めとした動物たちと、動物園との関わりについて考えてもらえれば、とてもうれしく思います」
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