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農家の「野焼き」やめられない理由 下草火災、恐ろしすぎるその現場
長野でなぜか多い「下草火災」。被害を目の当たりにした人は「一気に火が……もう手に負えなかった」と振り返ります。それでも、野焼きをするのはなぜか? 農家の本音を聞いてみました。(朝日新聞長野総局記者・田中奏子、大野択生)
「メラメラと一気に火が広がっていった。もう手に負えなかった」
4月上旬、農作業中に下草4千平方メートルを焼く火事を出してしまった長野県内の60代女性は、こう語りました。
野菜の収穫を楽しみにしている孫のために、畑を整備しよう――。女性は朝から畑に向かいました。
「風もない。午後から雨だから今のうちに」
寄せ集めた枯れ草に火をつけると、あっという間に広がったそうです。
持っていた鎌で必死に火をたたくも勢いは止まりません。慌てて119番通報しましたが、消防車が到着するまで待つ7分ほどが「数十分にも感じられた」とか。
約1時間後に消し止められ、けが人はいませんでした。
野焼きをする時は強風の日を避けるなど、注意してきたつもりでした。この日も、火をつける枯れ草は周囲と約50センチのすき間を作っていました。
「油断してしまった。やりきれない」。女性は肩を落としてそう話していました。
長野県北部の北信地方のリンゴ農家の男性(70)は、剪定(せんてい)した枝を毎日のように燃やしています。
理由は簡単です。
「回収してもらうのはお金がかかるし、灰は肥料になる」
子どものころから注意点も教えられてきました。
(1)水分を含む青々した草や枯れ草を払った土の上で少しずつ燃やす
(2)水を用意しておく
(3)その場を離れない
それでも一度だけ火事を起こしそうになったことがあるそうです。
「私たち農家も高齢化して、注意力が下がっているのでは」と話します。
別の農家の男性は「農家が減って荒れ地が増え、火が燃え広がりやすくなっているのではないだろうか」と話していました。
(1)強風のときには、野焼きやたき火をしない。風が出たらやめる
(2)野焼きやたき火をするときは、常に水をくんだバケツなど消火の備えをする
(3)野焼きやたき火は1人ではなく、複数で行う
(4)火から離れるときは、必ず消火を確認する
(5)万一の時に消防に連絡できるよう、携帯電話を準備しておく
(長野県の担当者への取材から)