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連載

#29 城崎広告「会社員のモヤモヤ」

歴代「吉本謝罪会見」担当 元よしもと幹部・謝罪マスター流の謝り方

よしもとクリエティブ・エージェンシー所属の多数のタレントの謝罪会見を取り仕切り、「謝罪マスター」となった元幹部の竹中功さん。謝罪のプロとして、炎上しない謝り方を教えてくれました。漫画形式で紹介します。

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 サラリーマンの日々をキャラ化した「城崎広告」のメンバーが日頃感じている疑問を、withnews編集部がフカボリ取材する「会社員のモヤモヤ」。28回目は「謝罪の方法」についてです。
城崎広告

今回の登場人物

千歳原教次
40歳の営業部部長。経験豊富で、他人に厳しく自分にはより一層厳しい。趣味はオーディオとバイク。

 

大神勇人
営業部所属の24歳。物怖じせずに相手の懐に飛び込む姿勢とフットワークの軽さが自慢。趣味はカラオケと祭。

 

倉知蓮
事業推進部所属の26歳。独特のセンスを発揮するビジュアルデザイナー。趣味はネットサーフィンとアイドル。

 

千歳原

体調不良など事情があるならともかく、大神、今朝のお前はどう考えても単純な寝坊だったわけだな?

 

大神

あっ、ハイ……すんません、なぜか目覚ましが鳴らなくて……

 

倉知

勇人……馬鹿正直だな……

 

千歳原

どうした倉知?

 

倉知

……なんでもないです。

 

大神

同じ遅刻でも言い訳ひとつで全然リアクション違うんすね……

 

千歳原

言い訳の問題ではないと思うが、たしかにやむをえず遅刻する場合の謝罪方法は知っておくべきだな。

 

倉知

じゃあ、今回の取材はそれでお願いしましょう。
「起きてしまったことは取り返しがつかないが、しっかりと謝罪ができれば、再び相手からの信頼につなげることができる」
 
そう話すのは、元よしもとクリエティブ・エージェンシー専務取締役で様々な謝罪会見を取り仕切ってきた竹中功さんです。
takenaka
「謝罪マスター」とも言われる竹中さんに、万が一、遅刻をしてしまった場合の適切な謝り方について聞きました。
 

 

千歳原

竹中さん、本日はよろしくお願いいたします。

 

大神

お願いします!
さっそくっすけど、遅刻した時って、どう謝ると許してもらえるんすかね?

 

竹中

よろしくお願いします。

 

竹中

遅刻の謝罪ですが、まずは前提として謝罪とは「いかり」を「りかい」に変えるための行為ということを覚えておいてください。

 

倉知

「いかり」を「りかい」に、ですか?

 

竹中

そうです。
言うまでもなく「遅刻」という、発生してしまっている事実については、もう変更したり戻したりすることができません。

 

大神

うっす、反省してるっす……

 

竹中

そのため、今回は遅刻という取り返しの付かない事実に対して、関係者が抱いている「怒り」「不満」などのネガティブな感情を「理解」に変えるためにどうするべきかという話をしていきます。

 

千歳原

なるほど、ポイントは相手の理解を引き出すこと、というわけですか。

 

竹中

では、具体的な方法についてですが、「対面」で「迷惑をかけた順」に謝りましょう。

 

大神

ハイ……出社して、上司の教次サンに直接謝るっす。ここはもう覚悟するしかないっすよね。

 

竹中

まずは「対面」という点です。
絶対に避けたいケースとしては、LINEやtwitterといったSNSやメールでの謝罪です。

 

倉知

あー……とりあえずメールとかSNSに頼りがちかも……やっぱり対面は気まずいんで……

 

竹中

これでは、謝罪をする気持ちがあったとしても相手には伝わりにくく、対面で謝罪していればその場で許せることや、そこまで大したことない話をずるずるとひきずってしまいがちです。

 

千歳原

その通りだと思います。倉知、気まずいからこそきちんと対面して謝ることが重要なんだ。

 

竹中

また、「迷惑をかけた順」を意識しましょう。

 

竹中

職場環境や職種によって変わってくると思いますが、一番迷惑をかけたのが同僚であるにも関わらず、マネージャーに謝罪に行くと、状況が把握できていないと思われたり、何に対しての謝罪なのかがわからなくなったりしてしまいます。

 

千歳原

……大神、朝日奈にはもちろん謝りにいったんだろうな?

 

大神

ま、まだっす!!

 

千歳原

お前が遅れた分、あいつが的確なフォローをしてくれたんだ。必ず謝って、状況を引き継いでおけ。

 

竹中

謝罪の際にですが、言い訳や噓は絶対にやめましょう。

 

倉知

……えーと、それってなぜなんですか?

 

竹中

遅刻をしてしまって、迷惑がかかってしまった場合に、実はその理由が何であるかはそこまで重要ではありません。

 

大神

ま、まじっすか!?

 

竹中

一番重要なのは、予定の時間に遅れてしまったこと。つまり、「遅刻をした」という事実が非常に重要なのです。

 

千歳原

しかし、やはり上司としては理由の正当性は気になりますが……

 

竹中

理由については、寝坊、電車の遅延…といったよくある話から、家族に急病人が出た…といったやむを得ないケースまで事情は様々あると思いますが、謝罪にあたっては一旦起きている事実に目を向けるようにしましょう。

 

千歳原

たしかに、まずは事実に対処する必要がありますね。

 

竹中

過去、吉本興業でプロデューサーをしていた際、集合時間に遅刻してきた出演者を待たずに仕事先に移動したことがありました。

 

倉知

えっ、それはかなり厳しい対応ですね……?

 

竹中

彼にも遅刻した理由はあったかもしれませんが、その後のイベントやメディア出演のスケジュールがそれで変更するということはありえません。

 

竹中

厳しいようですが、そういった事態にも備えて対応をしておくことを要求していました。

 

大神

……それがプロってことなんすよね。

 

千歳原

おっしゃる通りですね。では、謝罪の方法について、注意すべきことは他にありますか?

 

竹中

謝罪の気持ちをよりしっかりと伝えるにあたって「見た目」「態度」「心」を意識するとよりよい謝罪ができると思います。

 

大神

メモるっす! 順番にお願いします!

 

竹中

「見た目」に関してはそのままですが、自分を律した服装や格好をすることが望ましいです。

 

竹中

芸能人の謝罪会見などでは普段ラフな格好をしている人も、スーツを着てネクタイを締めていると思います。

 

倉知

たしかに、ゆるい恰好だと誠意が伝わりづらいのかもしれないですね。

 

竹中

また「態度」です。昔から問題行動を起こした際に、坊主にする人がいたりすると思います。そこまでする必要はないと思いますが、行動でも伝えることが必要です。

 

大神

コトと次第によったら、そうやってケジメをつけるってこともあると思うっす。

 

竹中

最後に「心」です。思っていることは伝わりやすいです。誰に対する謝罪なのか、何に対する謝罪なのかをしっかりと把握し、あくまで相手を中心に、相手のことを考えた謝罪をするようにしましょう。

 

大神

……肝に銘じるっす。

 

竹中

また、謝罪の一環として必ず盛り込みたいのが、再発防止策についてです。

 

千歳原

それは上司目線でも重要なポイントですね。

 

竹中

遅刻に対して、「次回から気を付ける」といった抽象的な内容ではなく、具体的かつ相手が納得する対策である必要があります。

 

倉知

具体的っていうと、例えば……?

 

竹中

原因が寝坊であったのであれば「目覚まし時計を幾つか用意し、家中に置いて起きざるを得ない状況を作ります!」「モーニングコールのサービスに申し込みます!」など、その状況に合わせて方法は選択するようにしましょう。

 

大神

オレ、目覚まし時計増やすっす! でもって音量マックスにしとくっす!!

 

倉知

ちゃんと起きて止めないと近所迷惑だからね、それ。

 

竹中

謝罪しなければいけない状況というのは、できれば避けたいですが、起きたことに対してしっかりと謝罪ができれば相手からの信頼につなげることができ、自分のファンになってもらうこともできます。

 

千歳原

ミスは誰にでも起きうる。だからこそ、そこでの対応が問われるということですね。

 

竹中

起きないように予防しつつも、起こってしまった状況を生かして信頼関係の構築につなげていっていただき、あなたを応援してくれるファンを増やしていって下さい。

 

大神

うっす! 勉強になりました!

 

倉知

お話ありがとうございました。
【「withnews」×「城崎広告」コラボの経緯はこちら】

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【今回お話を聞いた人】
竹中 功(たけなか いさお)
謝罪マスター/作家

1959年大阪市生まれ
 同志社大学法学部法律学科卒業
 同志社大学大学院総合政策科学研究科修士課程修了
1981年吉本興業株式会社入社。
1981年宣伝広報室を設立、「マンスリーよしもと」初代編集長。
1982年芸人養成所「よしもとNSC」開校。プロデューサーとして心斎橋筋2丁目劇場、なんばグランド花月、ヨシモト∞ホールなどの開場に携わる。河内家菊水丸の担当として、イラク・バグダッド、ロシア・モスクワ、北朝鮮・平壌公演などをプロデュース。沖縄映画「ナビィの恋」、香港映画「無問題」などの製作。リスク・コンプライアンス委員、「百年史編纂委員」、「東北担当住みます専務」、よしもとクリエイティブ・エージェンシー専務取締役、よしもとアドミニストレーション代表取締役などを歴任。2015年退社。ニューヨーク・ハーレム生活を経て現在に至る。

 【著書】
「よい謝罪 仕事の危機を乗り切るための謝る技術」日経BP社 2016/11発行
「よしもとで学んだ『お笑い』を刑務所で話す」にんげん出版 2017/7発行
「わらわしたい 正調よしもと林正之助伝」KKロングセラーズ 2017/9発行
「吉本興業をキラキラにした男 林弘高物語」 (監修)KKロングセラーズ 2017/9発行
「お金をかけずにモノを売る 広報視点」経済界 2018/1発行
「謝罪的藝術」(「よい謝罪」繁体字中国語版)台湾角川 2018/3発行

【ラジオ】
「竹中功のアロハな気分」文化放送 毎週日曜 19−20時

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