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2018年05月10日

回転させると変形する矢印、実は「目の錯覚」です 脳が誤情報を補完

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不思議な立体「右を向きたがる矢印」

不思議な立体「右を向きたがる矢印」

 一見すると右向きの矢印。180度回転させると左向きになるはずが、なぜか回しても右向きのまま――。そんな様子を映した動画が、ネット上で注目を集めています。いったい、どのような仕組みなのか? この立体を考案した明治大学の杉原厚吉・特任教授に話を聞きました。

この立体を考案した明治大学の特任教授・杉原厚吉さん

この立体を考案した明治大学の特任教授・杉原厚吉さん

えっ、なんで?


 今月5日にツイッター投稿された動画。矢印のような立体が写っています。

 とがった矢印の先は右を向いているようで、反対側は丸い形状に見えます。

 人の指で180度回転させると、本来なら矢印は左を向くはずですが、なぜか右を向いたまま。

 先ほどまでとがって見えていた部分は丸く、反対側の丸い部分はとがっているように見えます。

 反対回りさせても結果は同じ。しかも、立体を鏡に映すと、実体と向きが反対になっています。

 この動画に対して、「何でか全然分かんない」「動画でなく実物で体感してみたい」といったコメントが寄せられ、リツイートは3万、いいねは6万を超えています。

「右を向きたがる矢印」

出典:杉原厚吉・明治大学特任教授提供

考案したのは杉原厚吉さん


 投稿者は、この立体を考案した人物を明治大学の杉原厚吉・特任教授と紹介しています。

 明治大学先端数理科学インスティテュート所長も務めている杉原さん。「目の錯覚」などと言われる「錯視」を応用したこの立体を「右を向きたがる矢印」と名付けています。

 なぜ180度回転させても矢印の向きが変わらないように見えるのか? 杉原さんはこう説明します。

 「この立体の上端は上がったり下がったりしている空間曲線ですが、私たちの脳は水平な面で切断した切り口を見ていると解釈してしまうのです。空間曲線を平面曲線だと思っているため、見る方向を変えたとき、期待に反した形に見えてしまいます」

真上から見るとこんな形です

真上から見るとこんな形です

わかりやすく教えてください!


 この説明だけだと理解できない! そんな思いでもう一度尋ねると、わかりやすい解説が返ってきました。

 「写真と同じで、人間の目は基本的に縦と横の平面のデータしか脳に伝えていません。奥行きについては、目が2つあることで把握できていますが、その精度はそれほど高くないため、それまでの経験などから脳がデータを補完しているんです」

 立体を真横から見ると、上端は上がったり下がったりした曲線を描いていますが、側面の長さをすべて揃えていることによって、「起伏のある曲線ではなく水平な切断面だ」という誤ったデータを脳が補完するため、錯視が発生しているそうです。

 「これまでの研究から、脳が図形を理解しようとする際に『できるだけ直角として捉えよう』という傾向があることがわかってきました。今回もこの傾向を利用しています」

目の錯覚を利用した不思議な立体

出典:杉原厚吉・明治大学特任教授提供

錯視に数学的アプローチを


 杉原さんが、数学的アプローチで錯視の仕組みを調べる「計算錯覚学」というテーマに本格的に取り組み始めたのは明治大学に来た9年前。

 かつては通産省の電子技術総合研究所で、ロボットの目を作る研究をしていました。

 きちんとした方程式を用いることで正確な目の働きを実現できるロボットに対して、人間はどうして錯視を起こしてしまうのか?

 そんな疑問を解くべく、それまで心理学や認知科学的な視点でアプローチされていた錯視を、数学的アプローチで説明することに取り組んでいます。

 「右を向きたがる矢印についても、『斜めから見下ろすと右向きに見える』という方程式と、反対側から同じように見下ろした時にやはり右向き(つまり最初の人の左方向)に見えるという2つの方程式を連立させて解くことで、この立体を導き出しているんです。計算なしで手作業でやったら、気の遠くなるような時間がかかります」

 話題になったことについては、こう話します。

 「たいへん嬉しいのひと言です。目で見たからといって必ずしも形が正しくわかるわけではないことを、体験していただけると思います。『数学って何の役に立つの?』と聞かれることもありますが、これを機に数学の力を感じていただけたら、もっと嬉しいです」

 ◇ ◇ ◇

 今回話題になった右を向きたがる矢印は、杉原さんが監修して東京書籍から出版された「鏡で変身!?ふしぎ立体セット」に収録されています。


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