話題
実はこれ、全部「食品サンプル」です 年1度の社内コンペで技を披露
まるで本物のような食品サンプルを集めたイベントが、ゴールデンウィーク中に大阪市で開催されます。
話題
まるで本物のような食品サンプルを集めたイベントが、ゴールデンウィーク中に大阪市で開催されます。
かじったばかりのハンバーガーの断面、フワフワのパンケーキ、トロトロのエッグベネディクト……。まるで本物のような食品サンプルを集めたイベントが、ゴールデンウィーク中に大阪市で開催されます。いずれも食品サンプル会社の職人が、年1回開催される社内コンペ向けに製作したものです。精巧さにこだわる理由について、製作元に話を聞きました。
5月3日から4日間、大阪市内で開催される「超リアル 食品サンプル展2018」。
テーマは「世界各地の料理」で、寿司やパンケーキ、トムヤンクンやピロシキなどを再現した食品サンプル約70作品が展示されます。
イベントを主催するのは食品サンプルを手がける「いわさき」(大阪市東住吉区)です。
1932年(昭和7年)に「岩崎製作所」として食品サンプルづくりをスタートし、現在では販促ツールの企画・デザインから、備品やディスプレイなども手がけています。
東日本を中心としている「イワサキ・ビーアイ」は、ルーツが同じグループ会社で、両社を合わせると食品サンプル業界でのシェアは7割に上るといいます。
ゴールデンウィーク中のイベントで展示されるのは、今年開催した「製作スキルコンペ」の作品です。
ほぼ毎年開催されているこの社内コンペ。どんな内容で、いつごろから始まったのか? いわさきの広報担当者に話を聞きました。
――製作スキルコンペの概要を教えてください
基本的に年1回開催される、食品サンプルの製作員全員(約70人)が参加するコンペです。スキルアップを目的に開催しています。
コンペには、関西・北陸・東海・中国・四国・九州にある製作工場から作品が集まります。
今回で10回目の節目を迎え、食品サンプルのパイオニアとして5年先・10年先の技術の発展につながる作品を創造し続けることを目指しました。
――どういった目的で、いつごろから始まったのでしょうか
前身である「第1回製作技術研修コンクール」が行われたのは昭和41年。食品サンプルの製造技術の向上と、製作者の創意工夫や意欲を高めることを目的として開催されました。
しばらく休止期間があった後、約10年前から製作スキルコンペとして再開。6回目からパート・再雇用の従業員も含めて製作員は全員参加になりました。
審査後に集合説明会を行うことで、社内の交流や技術の標準化も行っています。
――コンペでの評価基準は
審査員が考慮するのは以下の点です。
・お店の店頭を飾らせていただくのにふさわしい技術と情熱にあふれているか
・新しい見せ方、アピールの仕方など、今までに無いアイデアが生かされているか
・生産コストに配慮し、生産効率も期待できる製法か
・料理の一番おいしい瞬間を表現し、よりリアル、よりハイクオリティーで、食品サンプルの未来を予見できるか
――毎回テーマを設定しているのですか
毎回決めており、最近は以下の通りです。
2014年「熱々」
2015年「スイーツ」
2016年「季節を表現する料理」
2017年「日本のご当地料理」
2018年「世界各地の料理」
――コンペのルールは
全体の大きさの上限や、作業時間は決めています。サイズは実物大のものがほとんどで、何をどのように表現するかは事前に作品予定表を提出した上で製作に入ります。
――今年の優勝作品は
優勝作品は「スパイシー!タイカレーとソムタム(青パパイヤのサラダ)」です。名古屋工場の女性製作員の作品で、ひとつひとつの素材が丁寧に作り込まれています。
本人が書いたレシピには、以下のように書かれていました。
「カレーの油の表現にチャレンジしたくて、この料理を選びました。どのようにしたらにじまない油になるか、様々な材料で実験を重ねました。ソムタムは、素材一つ一つをできる限り本物を見て製作し、青パパイヤのシャキシャキ感とソースの表現、プチトマトの断面のみずみずしさ、インゲン豆の青い味の感じと、ピーナツ、干しえびのカリカリした食感などが伝わるようにこだわりました」
普段の食品サンプルでは、お得意先のお店から料理見本と容器の提供がありますが、コンペでは周りのディスプレイも含めて全て製作員が用意しています。今回は本物の「コブミカン」の葉を探すのが大変だったそうです。
――実物そっくりですが、あえて似せないこともあるのでしょうか
食品サンプルは、実物に比べて少し鮮やかな彩りで作られています。実際にはあり得ない場面を表現をすることもあり、斜めの角度で止めたり、箸やオタマで持ち上げたりも、食品サンプルならではの表現です。
――5月のイベントでは、コンペ作品の展示以外にも企画があるのでしょうか
食品サンプル体験として、ロウで作る天ぷら丼(1500円)、不思議に固まる樹脂を使ったとろりんクリームの製作体験(1000円)も用意しています。いずれも要予約です。
また、昨年話題になった「こぼれた味噌汁スマホスタンド」「こぼれたコーヒー」などの食品サンプルグッズや、過去の製作スキルコンペ作品の販売も予定しています。
巨大おにぎりや、骨付き肉などで楽しい写真が取れるコーナーや、サンプルの中にある本物を当てるクイズもあります。
ぜひ足を運んで、ご自分の目でご覧になっていただきたいと思います。
◇ ◇ ◇
「超リアル 食品サンプル展2018」は、5月3日から6日まで大阪南港ATC(ITM棟11階)で開催されます。
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