
家賃を滞納する人が増えています。司法書士の太田垣章子さんは、これまでのべ2千人以上と交渉してきました。強制執行で入った部屋にいたカップラーメンを「かじる」子ども。精神疾患で働けなくなった夫婦。太田垣さんは、滞納の背景には貧困化する日本社会の縮図があると言います。家賃滞納の現場について聞きました。(朝日新聞文化くらし報道部記者・田渕紫織)

カップ麺バリバリ
太田垣章子さん
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両親はおらず、急いでお弁当を買ってきましたが、言葉が通じませんでした。
太田垣章子さん
台所には入居者と異なる、様々な名字の印鑑が。『いわゆる貧困ビジネスだ』と思って見ていました。

聞いてみると……
太田垣章子さん
緊急連絡先にある親に連絡すると『どうしたらいいんでしょうか』『私たちの育て方が間違っていたのでは』と逆に相談されることも。
本人が幼少期の段階でサポートを受けられていればと何度も思いました。
太田垣章子さん
夫はうつ状態になってしまうと仕事を休みがちになり、仕事を辞めざるをえなかった。妻は妊娠していました。
太田垣章子さん
それでも平行線で、何度も一緒に役所に通い、やっと生活保護の申請が通りました。

必要なことは
太田垣章子さん
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残された妻には3人の幼い子どもがいました。連帯保証人の父には資産があり、『お孫さんと一緒にご実家に戻ることを許してあげて下さい』と電話をしました。
滞納額は払ってくれたものの、結婚に反対していたので実家に戻ることは許しませんでした。
太田垣章子さん
母子シェルターに入った後、公団に転居して、生活を立て直しました。今でも母の日には毎年、彼女から白い花が送られてきます。
寄り添った結果、100人に1人は、このように、やり直すきっかけになったと言ってくれる人がいます。

それでも支援する理由
太田垣章子さん
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しかし、それだと同じことを繰り返して、根本的に滞納者は減っていかないし、気持ち的にもそれはできない。

引っ越せないワケ
太田垣章子さん
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当時80代。入った頃は目も見えていて働いていたのに途中で見えなくなったために、部屋のある物の位置が変わるところに行きたくないし、人が信用できなくなっていた。
太田垣章子さん
しかし、身内のサインが必要で、90代の兄にもらいに行きましたが、くれなかった。結局、1年かけて別の施設を探してそこに入ってもらいました。
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太田垣章子(おおたがき・あやこ) 2001年に司法書士試験合格。2006年独立開業。章(あや)司法書士事務所代表。近著に『賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド』(日本実業出版社)。