MENU CLOSE

IT・科学

「#手書き」インスタが流行る理由 実話系と達筆系…卒論テーマにも

手書きインスタでフォロワー2万人、ママこぶたさんの投稿
手書きインスタでフォロワー2万人、ママこぶたさんの投稿

目次

 インスタグラムといえば、「写真映え」「リア充」が代名詞だったはず。なのに、あえて手書きの文章を投稿する人が最近増えています。映えないのに、手間なのに、いったいなぜ? 卒論のテーマにもなった「手書きインスタの人気の理由」を探ってみました。

【PR】手話ってすごい!小学生のころの原体験から大学生で手話通訳士に合格

子育てママの奮闘

 「知らない土地、初めての子育て、帰宅が遅い夫…。悶々と過ごす日々でしたが、言葉で表現すると気持ちがスッキリしました」

 手書き投稿の魅力をそう語るのは、北海道に住むママこぶたさん(30)(mama_kobuta)。3歳の息子をもつ専業主婦です。

 昨年、夫の転勤で実家のある兵庫県から引っ越してきました。投稿を始めたのは、それからまもなく。

 子育ての悩みや夫婦関係など、日常の何げない出来事を振り返り感じたままをつづっています。

・ ここ2週間ほどで目覚ましい成長を見せる息子。 自覚が出てきたんですね。 すごいです。 ・ そして何より、みていて、たまらなく可愛らしいです。 ・ 一生懸命なところ、頑張ろうと自分に言い聞かせているところ、できなくてイライラして泣いているところ、すべてが愛おしい。 ・ でも本当はまだまだ甘えたいことももちろん知っています。 これからもたくさん、抱っこして、抱きしめてあげたいです。 ・ ・ ・ ・ 昨年の5月に手書きツイートを初めて、来月で約一年になります。 たくさんの方とのやり取りや、共感、コメント、いいねで、この一年、本当に救われました。 ありがとうございます。 個人的な内容も多いですが、これからも楽しく続けてまいりたいと思います。 どうぞよろしくお願いします。 ・ #手書きツイート #手書きpost #イラスト #育児イラスト #子育て #育児 #記録 #エッセイ #コラム #子ども #夫婦 #家族 #幼稚園 #入園式 #年少 #3歳 #春 #新年度 #新生活 #北海道

mama_kobutaさん(@mama_kobuta)がシェアした投稿 -

スネる夫へアメとムチ

 たとえば、息子が熱を出し、タオルで体を拭いていた時のこと。

 ふと、自身が子どもの頃に母が同じようにしてくれたことを思い出し、「私もこの子を大切にしていこう。これから何度も何度も体を拭くことになるだろうけど、丁寧に優しく拭いてあげたい」と記しました。

 また、あるときは「スネる夫への接し方」を伝授してくれます。

 いわく、アメとムチを使い分ける。まずはムチ(3人でいる時は子どもが一番。子どもの前ではゴミ出しなど私のお願いを嫌と言わないでと伝える)。そして、アメ(子どもも好きだけどあなたも大好きだよと伝える)。

多分風邪でした。 今は元気になっています(o^^o) ・ 熱性けいれんについては、 過去post #kobuta家の熱性けいれん をご覧ください。 ・ ・ 今までは息子の体を拭いていても全然ピンとこなかったのに、今回突然ピンと来ました。きっと自分の幼い頃の記憶が、息子の年齢と同じくらいから始まっていて、母がやってくれていたことを覚えていたのだと思います。 ・ ・ #手書き #手書きツイート #手書きpost #イラスト #育児イラスト #子育て #育児 #子育て記録 #記録 #エッセイ #コラム #子ども #夫婦 #家族 #北海道 #札幌 #熱性けいれん #熱性痙攣 #ダイアップ

mama_kobutaさん(@mama_kobuta)がシェアした投稿 -

フォロワー急増「1人じゃない」

 そんなユーモアで温かい人柄がにじみ出る投稿は、共感を呼び、フォロワーは2万人にまで広がりました。

 「たくさんの共感のコメントをもらって、悩んでいるのは一人じゃないなって楽になれました。苦しいことも含め、毎日がかけがえのない日々。そのときの気持ちを忘れないために、続けたいですね」と、ママこぶたさん。

 ただ、夫には内容を知られたくないため、「アカウントをブロックしています(笑)」

達筆すぎる名言

 万年筆を使った達筆が人気の投稿もあります。関東在住の主婦トミーさん(32)(tommy_notes_16)。小学生の時に習っていた習字の経験を生かし、本やネットで見つけた「グッとくる言葉」をつづっています。

 「筆と似ていて濃淡が出やすく、書いた時の感情が表れるのが万年筆の魅力です」。家族写真などを投稿しているアカウントは別にもっていて、使い分けているといいます。

 育児や仕事のことで悩むことも少なくありません。でも、「毎日の日課」となった投稿が自身の支えにもなっています。

 「ネガティブ思考に陥らないように、自分に言い聞かせるように、前向きな言葉をつづっています。一生の趣味になるかもしれません」

私がいつも参考にしている方の著書の一部を要約しています。 ・ お友だちは親から離れてバンバン遊んでいるのに大丈夫かな? いつもお母さんお母さん言ってて大丈夫かな? 人見知りいつまでもなおらないんじゃないかな? と、いらぬ心配ばかりしていました。 ・ 初めての育児でいろいろなことに不安を持ちますが、これは不安を持つところではなく、息子の個性。 親から離れるその日までたくさん私に甘えてくれる可愛い個性なんですね。 ・ #佐々木正美先生の言葉 ・ #手書き #手書きツイート #手書きpost #イラスト #育児イラスト #子育て #育児 #子育て記録 #記録 #エッセイ #コラム #子ども #夫婦 #家族 #北海道 #札幌 #佐々木正美 #続子どもへのまなざし #母親 #初めての育児

mama_kobutaさん(@mama_kobuta)がシェアした投稿 -

手書きインスタ、二つのタイプ

 そもそも、手書きインスタとは、どういうものなのでしょう? はっきりとした定義はありませんが、以下のような特徴があります。

(1)ハッシュタグは、#手書きツイート #手書き部 #手書きpostなど
(2)書き手は多くが女性と推察される
(3)内容は主に、身の回りで起こったと思われる「実話タイプ」と、万年筆などを使い心にささる名言・ポエムを書く「達筆タイプ」がある
(4)本名は明かさず、身バレ(身元が明らかになること)を気にする人が多い

 (3)の実話の内容は多様です。彼氏の話のほか、不妊治療や同性愛などを赤裸々につづる投稿。中には、不倫や性的なものまであります。

 「読む側」の人もたくさんいて、フォロワーが1万人を超える人気アカウントもちらほら。

卒論を書いた大学生に聞く

 新しいジャンルとして広がりつつある手書き投稿。実は、いち早く気づいた大学生が卒論の研究テーマに選んでいました。

 今春、同志社大学経済学部を卒業した野浪萌香さん(22)です。

 友達との手紙交換が好きで、他人の文字が何かと気になるという野浪さん。実際の手書き投稿者にアンケート調査を実施して、傾向を分析しました。

 野浪さんに卒論からわかったことを聞きました。

 ――どのように調査したのですか

 「手書きと分かる投稿者に対してダイレクトメッセージを送り、投稿内容や投稿する理由について問うアンケートをお願いしました。152人の方にご協力いただきました」

インスタグラムであえて手書き投稿を選んだ理由を問う質問に対する主な回答
インスタグラムであえて手書き投稿を選んだ理由を問う質問に対する主な回答 出典: 野浪さんの卒論から

 ――調査して気づいたことは

 「実は、手書き投稿には相反する二つの特徴があるんですよ」

 ――二つの特徴?

「日記のようにすごくプライベートな内容を書いていて、個々の字体や使う文房具でも個性的な表現が出ているのですが……」

 ――ですが……?

 「一方で身バレには気を遣い匿名性が高い。この『個性』と『匿名性』という一見矛盾する二つの魅力を同時に満たせるのが手書き投稿なんです」

 ――どちらか一つだけではないんですね。

 「それが、見る側も共感しやすく、はやる理由なんじゃないかなと思います。写真投稿には見られない特徴ですね」

 ――今後、手書き投稿はどうなると予想しますか

 「少し心配なのが、もし身バレしたら本人や書かれている関係者のリアルな生活に影響してしまう投稿が時々見られることです」

 ――深刻な話がテーマならなおさら……

 「不倫などの話題がそうですね。SNS上のいじめなどにつながらないように、まずは投稿者自身の自覚が求められると思います」

手書き投稿の理由をグループ分けして分析
手書き投稿の理由をグループ分けして分析 出典: 野浪さんの卒論から

あの女優も手書き文字

 最近では、俳優の土屋太鳳さんが、直筆の文章をインスタにアップして話題になりました。

 インスタでアナログとも言える手書き投稿がはやるなんて、運営側もまさか思ってもみなかったのではないでしょうか。

 でも、そこには、日々の暮らしで悩みやストレスを抱える人、その中で見つけたささやかな幸せを感じている人の姿が浮かんできます。

 年がら年中リア充なんて人は、たぶんいませんよね。姿は見えないけれど、逆に写真よりもリアルな人柄が伝わってくるのが、手書き投稿の魅力だと感じました。

土屋太鳳さん=2017年9月1日
土屋太鳳さん=2017年9月1日 出典: 朝日新聞

関連記事

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます