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香港のスーパーに金ちゃんヌードル!?「日本好き過ぎ」背景には何が?
販売商品の6割が日本の商品。こんなスーパーマーケットが香港にあります。店内を見ると、自分の地元でしか売っていないようなマニアックな商品も……。香港の人、実は日本好きが多く街中では、あの有名なインスタントラーメンの専門店まであります。いったいなぜ? そこには香港ならではの、日本への「憧れ」がありました。(朝日新聞経済部・西山明宏)
スーパーの名前は「YATA(一田)」で、日本語の「やった!」から来ています。私が3月5日に訪れた香港の新興住宅地にある店舗には、入り口にてくまモンがお出迎え。店頭の最前列には「あまおう」など日本産のイチゴがずらりと並んでいました。店内の商品の6割が日本の商品だそうです。
奥に入ると日本のお茶を売る特設売り場があったり、日本のインスタントラーメンがたくさん置いてあったり。店員が常駐して日本酒の試飲が出来るコーナーもあれば、期間限定で徳島県の特産品を紹介する棚もありました。
私は四国の高知県出身ですが、東京でもあまり見かけない徳島製粉の「金ちゃんヌードル」が売っているのを見て懐かしさと、不思議な感覚を持ちました。
YATAは元々、西友でした。1990年に香港に進出しましたが、05年に地元企業が事業を買収して店舗や流通網を引き継ぎました。08年に「現代の日本式生活百貨」というコンセプトを掲げ、現在の名前に変更しました。
スーパーや百貨店の形態で香港内に11店舗を展開し、特に直近の1年間で4つの新店舗を出したそうです。多くが観光地ではない香港の住宅街近くなどの生活に近い場所にあります。
売上高も市場の平均よりも高い成長率を維持しているそうです。黄思麗・最高経営責任者は「香港の消費者は日本好きが多い。日本で出た最新や期間限定の商品もすぐに仕入れています」と話します。
実は香港の人々は「日本好き」だそうです。日本政府観光局の調査によると、人口約750万人のうち、2017年は前年から21.3%増の約223万人が日本に旅行しています。
16年の調査では、訪日した香港人のうち2割はすでに10回以上日本に来ていました。この割合は世界一だそうです。香港人の渡航先では15年に台湾を抜き、日本が1位です。
東京や大阪といった大都市だけでなく、地方にも多くの人が訪れており、香港事務所の清水泰正上席次長は「ズワイガニの解禁時期に合わせて行くような玄人もいます」といいます。地方都市にも格安航空会社の就航が増え、手軽に行けることも大きいそうです。
確かに街中でも日本に関連したものを見かけることがよくありました。香港では日清食品の「出前一丁」が人気だそうで、私が昼食で訪れた喫茶店のメニューでも出前一丁を使った食事を提供していました。
街中には出前一丁の専門店もあるようです。日本のファッション雑誌も日本語のまま書店やコンビニに並んでいました。
ここまで人気なのはなぜでしょうか。日本語で香港のニュースを発信している香港経済新聞編集部の木邨千鶴さんは、日本への憧れがあると指摘します。
「香港は自分でものを作るのではなく、お金も商品も中継点になることで成長をしてきました。しっかり時間をかけてものづくりをする環境が少ないなか、日本の工夫あふれる商品が目の前に現れたとき衝撃を受けるわけです」
香港は金融と貿易で発展しましたが、域内総生産に占める製造業の割合は1%ほどしかないなど、「ものづくり」とは遠い現実があります。
木邨さんは「いまや週末に予定を決めずに日本に旅行するような人もいる。日本好きではなく、すでに日本が日常に溶け込んでいるように見えます」と話しています。
日本のものづくりといえば、日産自動車や神戸製鋼所などの大企業で不祥事が相次ぎました。
香港の人々が憧れるという話を誇りに思いつつも、日本は大切な信用を失わないためできることは何か、考えさせられました。
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