お金と仕事
日本人は寄付しないって本当?「推計7756億円」の知られざる世界
寄付をしたこと、ありますか? 寄付というと街頭募金をイメージする方が多いかもしれませんが、いま寄付のカタチがどんどん広がっています。ふるさと納税でお米や牛肉などの返礼品をもらいながらNPOを応援したり、金融機関で眠ったままの預金がNPOなどの活動に使われたり。そんな寄付のいまを超解説します。(朝日新聞地域報道部記者・山下剛)
推計7756億円。これ、2016年に個人が寄付した総額です(日本ファンドレイジング協会「寄付白書2017」)。東日本大震災が起きた2011年よりは減ったものの、45.4%の人がお金を寄付したことがあり、ふるさと納税をした人も10.2%にのぼっています。
このように寄付が広がったきっかけの一つが「寄付税制」。寄付をすると税金が戻ってくる制度です。
民主党政権時代の2011年に大幅に拡充され、都道府県などが認定したNPOに寄付をすると最大で寄付額の半分近くが納めた税金から戻ってくるという、世界でも類をみない仕組みです。
最近では、ふるさと納税でNPOなどを支援する動きも盛んになっています。インターネット上で資金を募る「クラウドファンディング」という仕組みで地域の課題を解決しようというものです。
ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」は2013年に「ガバメントクラウドファンディング」のページを開設しました。
「日本で殺処分される犬をゼロに」(広島県神石高原町)、「こども宅食でこどもと家族を救いたい」(東京都文京区)などなど。
このページに掲載されているプロジェクトは100件余りにのぼり、寄付総額も累計で30億円を超えました。
佐賀県はふるさと納税の使い道として、具体的なNPOを選べるようにしています。事務手数料の5%をのぞく、寄付額の95%がNPOに渡る仕組みで、NPOが返礼品も用意しています。
がん対策のNPO「クレブスサポート」(佐賀市)は、こうしたふるさと納税で集まったお金で、小学生向けに「がん教育」を始めました。がん患者が医師ともに教壇に立ち、自らの経験を語る取り組みです。
「がんのことを正しく知ってもらい、偏見をなくしたい。ふるさと納税で活動資金が集まり、様々な事業が展開できるようになった」と吉野徳親理事長は話していました。
もう一つ、注目されるのが休眠預金です。金融機関で、10年以上出し入れされていない預金を、NPO法人の活動を助成するためなどに使う法律も2016年に成立。来年秋から、年500億円ほどがNPOなど民間の公的な活動に活用されるようになります。
欧米と違って「寄付文化がない」と言われてきた日本。簡単に寄付ができる仕組みが次々と出てきたことで、自分のお金を何に使うか、が問われるようになってきたのです。