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2018年03月28日

銭湯ってなくなる運命?「都会の避難場所」勝ち組、負け組の現実…

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【この記事は「チャチャットニュース」でお届けします】
 若い銭湯ファンが増えている一方で、廃業する銭湯も相次いでいます。
「古き良き」銭湯文化は消えていく運命なのか、残すべきなのか。「1週間に10回は銭湯に行く」というライターのヨッピーさんと、銭湯を舞台にした小説を書いた作家の小野美由紀さんに、語り合ってもらいました。


 対談の舞台は、東京・田端の人気銭湯「梅の湯」さん。
 1951年創業の老舗です。
 2016年にリニューアルし、レトロモダンな姿に生まれ変わりました。
 3代目の栗田尚史さんによると、1日の平均利用客は250人ほど。東京都の銭湯の1日あたりの平均入浴者数は132人(2017年12月末時点)なので、かなりの人気銭湯です。

 

ヨッピー

昔の『古き良き』のままの銭湯は、いわゆる『逃げ切り世代』ですよね。おじいちゃん、おばあちゃんが経営していて、体力も追いつかないし、後継者もいないから、自分たちが元気なうちにもう閉めちゃおっか、みたいな。

 

ヨッピー

銭湯潰してマンションにしてのんびり暮らそうかな、とか。だからサービスもそんなに改善しないだろうし、新しい事してみようともならないじゃないですか。

 

ヨッピー

最近『銭湯をみんなで盛り上げよう!』みたいな動きもある中で、でも経営している人達が『もうこの辺でいいかな~?』って思ってたら絶対無理ですよね。

 

ヨッピー

だからそういうのもひとまとめにして『銭湯を盛り上げなくちゃ!』というのも、少し違うのかなあとも思うんですけど、どうでしょう?

 

ヨッピー

もちろん『頑張るぞ!』っていう所については応援したい気持ちがあるんですけど、入浴習慣の変化もありますからね

「昔の『古き良き』のままの銭湯は、いわゆる『逃げ切り世代』ですよね」

「昔の『古き良き』のままの銭湯は、いわゆる『逃げ切り世代』ですよね」

 

記者

小野さんの小説「メゾン刻の湯」(ポプラ社)では、古き良き銭湯が廃業の危機を迎えますね。

 

小野

無理に盛り上げる必要はないけど、銭湯って、街のアジール(避難所)だなっていう感じがして、行き場のない人の行き先になっていたりするから、銭湯が地域からなくなるのって結構切実な問題だなって思いますけどね。

 

小野

それで、『メゾン刻の湯』の中では、主人公たちがクラウドファンディングを使って、廃業の危機に陥った銭湯を救おうとする話を入れました

 

ヨッピー

銭湯の廃業って、経営している人達のモチベーションの問題もありますよね、栗田さん?

 

記者

突然話を振られて、栗田さんがびっくりしていますね(笑)。気鋭の銭湯経営者として、ぜひ、現状を教えてください。

 

栗田

まあ、廃業は『仕方なく』が多いですかね。続けたいけど、どうしても難しいという人もいますけど、だいたいは『もうそろそろ辞め時かな』という感じですね

 

小野

銭湯の労働ってめちゃくちゃ大変なんです。小説を書くために、銭湯で2日間働かせてもらったんですけど、細かい作業が多くて大変で、本当に疲れました。

「銭湯の労働ってめちゃくちゃ大変なんです。細かい作業が多くて大変で、本当に疲れました」

「銭湯の労働ってめちゃくちゃ大変なんです。細かい作業が多くて大変で、本当に疲れました」

 

小野

一方で、銭湯を必要としている方もいらっしゃるんですよね。以前住んでいた本郷3丁目(東京都文京区)の周りには、けっこう銭湯があって、2年前に築100年の乙女湯が廃業したんです。

 

小野

それでお風呂に入れなくなるおばあちゃんがいて、いまもお風呂がない家に住んでる人がいるっていうことに驚きました

 

ヨッピー

そういう人にとっては切実な問題ですよね

 

小野

あと、独居老人って引きこもりがちですが、特に男の人が引きこもるんです。定年退職して奥さんも亡くなって、どこにも出ていかない。

 

小野

そういう人にとって、銭湯に行くだけで、たとえ誰かとコミュニケーションをとらなくても、暮らしの質が上がるんじゃないかなと思います

 

ヨッピー

そういえば、前に千葉かどこかの温泉に行った時、そこには宴会場があって、ご飯も食べられてて、色んな人が集まって地元の公民館みたいになっていたんですよ。ああいう場所が地域にあるのかないのかで、変わってきますよね。

 

ヨッピー

行く場所があって、コミュニケーションを取れる相手がいるというのは、長生きと健康には不可欠なものだから。そういう機能を銭湯が担うようになるといいなぁって思ってます

 

記者

ヨッピーさんは「今の銭湯には勝ち組と負け組がある」とおっしゃっていますが。

 

ヨッピー

そうですね。この梅の湯さんみたいに若い世代に上手く受け継いで、改修したりイベントしたりっていう経営努力をしている所はやっぱりお客さんが増えてるんですよね。そこらへんは如実に出てる気がします。

 

ヨッピー

でもその一方で改修するってなるとお金が必要だし、お年を召した方が新たに借金して改装するか、ってなると難しいところがあるとは思うんですけど、もうちょっと銭湯がコミュニティ化していくと、『私がやります』みたいな人も出て来るだろうしいいのかもしれませんね

「梅の湯」にあるアヒルのマスコット

「梅の湯」にあるアヒルのマスコット

 

記者

私は長崎県生まれで、おふたりの銭湯愛を聞いていると、「都会だな」と思ってしまいます。

 

小野

え、そうなんですか!?

 

記者

銭湯があるってことは、その地域にある程度たくさん人が住んでいるってことなので。人が少ない田舎の場合、コミュニティ型の銭湯はとっくに廃業してしまって、郊外型のスーパー銭湯になっている、ということも多いかと。

 

ヨッピー

ああ、それはそうですね。東京の銭湯が潰れているって言いますけど、地方に比べたらまだまだありますよね。

 

ヨッピー

大阪はもっと潰れている気がする。僕の地元の銭湯なんて7割は廃業しましたもん。それでもまだ大阪には銭湯が残っている方だと思いますけどね

 

小野

そういえば、東京の銭湯の数って、マクドナルドとモスバーガーを足した数より多いらしいんですよ。けっこうありますよね

 

ヨッピー

えーそうなんだ!

 

記者

これは意外ですね。調べてみましょう。それぞれ公式サイトによると、マクドナルドが都内に346店、モスバーガーが183店、計529店です。一方、東京都内の銭湯は2017年12月末で562件。たしかに銭湯の方が多いです。

 

小野

だから、今までの銭湯はむしろ多すぎで、適正な数になりつつあるんだ、という意見もあるんですよね

「東京の銭湯の数って、マクドナルドとモスバーガーを足した数より多いらしいんですよ」「えーそうなんだ!」

「東京の銭湯の数って、マクドナルドとモスバーガーを足した数より多いらしいんですよ」「えーそうなんだ!」

 

記者

都会だからこそ、若い人も多いですから、多様な人が集う場になるのでしょうか。

 

栗田

うちは2016年にリニューアルしたので、特に若い人は多いです。リニューアルするところってそんなに多くはないので、話題の場所に行くという感じでうちに来る人はいます。

 

栗田

うちで『銭湯ってこんなもの』を体験して、いいなと思ったら次は近所の銭湯に行ってみようかな、と、自分の生活圏に落としこんでいく、みたいな感じですかね

 

小野

高円寺の人気銭湯『小杉湯』(東京都杉並区)に通っている若い人で、会社の帰りに必ず来るという人がいました。会社のしがらみや人間関係に疲れて、銭湯で人間関係を1回リセットして、会社から解き放たれた自分に戻ってからじゃないと、家で寝られないって言っていましたね

 

ヨッピー

あー、わかるわかる!

 

ヨッピー

僕が上野の寿湯(東京都台東区)にめっちゃ通っていた時期は、まさにそれですね。当時はサラリーマンでしたから、会社では脳みそが仕事モードになって、それを引きずって家に帰ると、頭が冴えててなかなか寝られないんですよ。

 

ヨッピー

でも銭湯に行って、大きな露天風呂で足伸ばして、ジェットバスで肩のマッサージやったり水風呂入ったりサウナ入ったり、すごくリラックスして一気に全部どうでもよくなるじゃないですか。

 

ヨッピー

家庭のお風呂だとそこまでリラックス出来ないんですよ。それがよかったですね。毎日リセットボタンを押してから寝られるというのが

 

小野

同じコミュニティの人とばかりつるんでいると疲れてくるんですよね。

 

小野

私が銭湯に通っていた時期って、フリーライターになりたてで、『頑張らなきゃ』『お金を稼がなきゃ』って思っていたんですけど、銭湯でいろんなセグメントの人たちに会うと、『案外生産していない人もいるんだなあ』って、ほっとできる感じがありました。

 

小野

これだけいろんな人がいるんなら、自分がしょうもない人間でも許されるのかなって

 

記者

小野さんの小説では、入れ墨のある常連さんが出てきます。

 

ヨッピー

僕は、ガンガン入れ墨が入っている人が近くにいても、ぜんっぜん気にならないんですよね~。別に良いんじゃないのって思ってるんですけど

 

小野

入れ墨OKって、すごくいいなって思うんですよ。自分も含めて、許容されている気がするんですよね。入れ墨でも、コミュ障でも、排除されないというのを小説でも書きましたけど、私の中で、銭湯は居場所という感じがすごくあって

 

記者

「銭湯は今後こうなってほしい」というのはありますか。

 

ヨッピー

さっきも言った通り、うまく若い人に代替わりしていってほしいですよね

梅の湯にあるレトロなうちわ

梅の湯にあるレトロなうちわ

 

小野

この『梅の湯』は、うまくいってるじゃないですか。栗田さんにむしろ聞きたいんですけど、うまくやるポイントってなんなんでしょう?

 

栗田

うーん。ちゃんと仕事としてやることじゃないですかね

 

ヨッピー

いやあ、そうですよね。やる気次第だと思う。根源はモチベーションですよね

 

栗田

『癒やしの場』とか『単純に風呂として利用』とか、いろんなニーズの人がいるのはわかっているんだけど、それは来たお客さんが好きに使ってもらえればいいだけで。自分はこの場所をキープするのが、仕事ですから。

梅の湯の3代目、栗田尚史さん

梅の湯の3代目、栗田尚史さん

 

栗田

あと、銭湯はサービス業だと思っていますので、世間一般のサービス業がやっていることを当たり前にやっている、という感じです。お客様のことを考えて新しくこれをやるとか、サービスを充実させるとか。

 

栗田

それくらいしか、まだ思い浮かばないです

 

小野

でもイベントたくさん仕掛けて、新しいことをいろいろやっていますよね

 

栗田

それって銭湯だから新しいってだけで、ショッピングセンターとか他のサービス業からしたら普通のことでしょう?

 

ヨッピー

確かになぁ。そんなに難しくないと思うんですよ。当たり前のことを、当たり前にやるというか。こんな事言うと銭湯の仕事舐めてんのか、って怒られそうだけど

 

栗田

時代が変わるのと一緒で、使う人は年々変わっていくので、変わり続けないといけない。それを淡々とやるというだけです。時代のちょっと先を行くのか、ど真ん中をいくのか、遅れたところをいくのか。

 

栗田

遅れていると『ちょっとあそこは……』と、お客さんに避けられてしまうでしょうけど、ちょっと先かど真ん中なら、いいんじゃないでしょうか

梅の湯にはフリーWiFiも飛んでいる

梅の湯にはフリーWiFiも飛んでいる

 

記者

「時代のど真ん中」を知ることも、大変そうですが。

 

栗田

僕はラクですよ。梅の湯ではフロントでテレビが流れているので、参考にしています。だって、テレビってそういう風に作っているでしょ?

 

栗田

『いまこんなのが流行っています』とか。じゃあ、取り入れればいいじゃんって思います。

 

栗田

その先をやりたければ、自分で情報収集をして、考えればいいと思うけど、『ちょっと先』のことはリスクもある。お客さんにとってピンとこないっていう(笑)

 

記者

なるほど。では最後に、おふたりにメッセージをもらえますか。

 

ヨッピー

ほんと、みんなが銭湯に行くようになると、日本の経済は全部よくなると思うんですよね。不景気から労働環境から何から全部良くなります。たぶん。知らないけど。

 

ヨッピー

僕、本当によく『お礼』のメールをもらうんですよ。銭湯に行って『体調がよくなった』とか。『ヨッピーさんが銭湯が良いって騒いでるの、ぜったいにちょっと盛ってるだろって思ってたけど、本当でした。最高!』っていうメールきますもん。

 

ヨッピー

男女問わず。よく言うんですけど、だまされたと思って銭湯に行きましょう

「だまされたと思って銭湯に行きましょう」

「だまされたと思って銭湯に行きましょう」

 

小野

私は、街の空白というか、“誰でもない自分になれる場所”としての銭湯が好きです。

 

小野

社会に居場所がないと感じていたり、ブラック企業で疲弊していたりする人がいたら、死のうとする前に銭湯に来て欲しいですね。

「誰でもない自分になれる場所”としての銭湯が好きです。」

「誰でもない自分になれる場所”としての銭湯が好きです。」

 

記者

体があたたまって、不幸になることはないですからね。ヨッピーさん、小野さん、栗田さん、ありがとうございました。

入口が「男」、番台は「DJスペース」レトロ感満載、元銭湯の料理店
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調理場の壁には男湯だったときの富士山の絵が残っている=福岡市博多区吉塚1丁目、河合真人撮影
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