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桜の開花予想、国が認めた“魔法の公式”「福岡バッチリ、大阪は…」
3月は桜の開花予想が話題になる時期です。開花予想日、実は計算でわかります。「そんなこと本当にできるの?」と思って計算してみたら……できてしまいました。いったいどうやって予想日を突き止めるのか。鍵となる数字は「23.8」。気象庁が認めた「魔法の公式」そのカラクリに迫ります。
気象情報会社ウェザーマップの「さくら開花予想2018」では、3月13日時点で、平年より早く咲き、10日近く早い地域もありそうだ、と予想しています。
「今年の冬は寒い日が続き、『休眠打破』が順調に進んだ」「3月に入ってかなり暖かい日が多くなっている」と説明しています。
開花予想は、東京が3月18日、大阪は3月22日。
ほかの気象情報会社では、東京の開花予想日は、ウェザーニューズが19日(13日時点)、島津ビジネスシステムズの「お天気JAPAN」は20日(15日時点)などとなっています。
気象庁によると、東京の開花日は、平均すると26日。今年の各社の予想は、平年より早くなっています。
桜の花が開花するまでの流れこうです。
(1)桜の木は、前年の夏ごろには翌春に咲く花のもととなる「花芽(かが)」を作る。
(2)花芽はその後、休眠状態に入る。
(3)秋から冬にかけ、2~9度の低温に800時間~1千時間ほどされることで、休眠状態から覚める「休眠打破」が起きる。
(4)休眠打破の後、春先の気温の上昇とともに育ち、開花する。
自然現象である桜の開花ですが、実は、多くの気象情報会社が採用しているとみられる計算式があります。
この式が23.8になる日が予想開花日となります。
複雑なので、ざっくり言うと、こんな計算式です。
(1)花芽が成長を始める日を特定する
(2)気温から花芽の成長量を推定する
この式はもともと、大阪府立大学の青野靖之准教授たちが1989年に発表しました。その後、何度か改良されています。
(1)は「休眠打破する日」で「起算日」と呼びます。その地点の緯度や海からの距離、それにその年の冬の気温で補正します。
(2)は「温度変換日数」という値を使います。花芽の成長量を1日の平均気温から推定する値です。
青野さんたちが、過去の桜の開花日や気温など様々な条件を踏まえて検討した結果、この温度変換日数を足したものが「23.8」になる日を開花日とすれば、全国どこでも予想できるということを論文で発表しています。
2009年まで開花予想を発表していた気象庁も青野さんたちの論文を参考にしていました。
予想を発表している気象情報会社などのホームページの一部には、この計算式を採用していることが明記されていたり、参考文献としてこれらの論文が載っていたりしています。
最近はさらに発展させ、ビッグデータを用いてAI(人工知能)で予想している会社もあります。各社が独自に様々な改良を加えていっているようです。
そこで、青野さんに教えてもらいながら、今年の開花予想を計算してみました。
ここから先は、ちょっと複雑な数学の知識が必要になるので、数式を一部省略して紹介します。
まず、「休眠打破」が起きた日を突き止めますが、計算が難しいので、全国55地点の起算日の一覧を青野さんからもらい、昨年12月と今年1月の平均気温で補正しました。
この日から、温度変換日数を足していきます。温度変換日数は、1日の平均気温(日平均気温)の指数関数なのですが、エクセルに入力するとわりと簡単にできます。
3月15日の時点で、東京の場合で計算してみると、補正した起算日は2月7日。2月7日の日平均気温は3.4度で、温度変換日数に換算すると0.29。
それを3月14日まで計算して足し合わせていくと、17.6になります。その先は、予想最高気温と最低気温の平均で計算していきます。22日に23.09となり、23日に23.86となります。
つまり、東京の開花予想は、この値が23.8を超える3月23日です。気象情報会社の予想より少しだけ遅くなりました。
桜の木がある場所の日の当たり方や、風の通り方などによっても咲き方は違ってきます。
青野さんは「ちょっとした条件の違いで変わってきます。実用性を考えると、開花日が3日くらいの範囲に収まれば、という努力目標でやってきました。過去をみると、福岡はバッチリ当たりますが、大阪はあんまし当たらへんという傾向があります」と話しています。
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