MENU CLOSE

IT・科学

幼い姉妹、命のツイート「私たちを許して…」シリアで起きていること

アサド政権軍の激しい攻撃を受けている東グータ地区から発信を続けるヌールちゃん(左)とアラちゃんの姉妹
アサド政権軍の激しい攻撃を受けている東グータ地区から発信を続けるヌールちゃん(左)とアラちゃんの姉妹 出典: 家族提供

目次

 内戦が続くシリアからツイッターで発信し続けている幼い姉妹がいます。「戦闘機が爆撃している」「どうか私たちを見捨てないで」。そんな中、投稿された3月12日のツイートに一瞬、言葉を失いました。「私たちを許してね……」。戦争が起きても、そこで暮らしていかなければならない人々がいます。少女たちを追い詰める「戦場」では何が起きているのでしょうか?(朝日新聞国際報道部記者・軽部理人)

【PR】手話ってすごい!小学生のころの原体験から大学生で手話通訳士に合格

背後には破壊された街


訳:私たちはいま、最も危険な場所にいます。アサド(大統領)と彼の仲間が私たちを破壊しようとしています。どうか私たちを見捨てないで

 3月11日午後、ヌールちゃんとアラちゃん姉妹のツイートです。

 ツイートは、戦いを優位に進めるアサド政権軍に包囲された「東グータ」という地区から発信されています。首都のダマスカス近郊に位置する東グータでは、ここ3週間の死者数が1000人を超えました。

 英文で書かれた投稿には動画も添えられ、ヌールちゃんがツイートを読んだ後にアラちゃんが"Stop War!(戦争を止めて)"と訴えます。窓の外からは戦闘機の飛行音が聞こえ、2人はおびえたような表情をしています。

 2011年に内戦が勃発したシリアでは、これまでに30万人以上が死亡。難民は500万人を超えています。アサド政権軍はロシアの支援を受けて戦いを優位に進めているものの、現在も反体制派、クルド人勢力などが入り交じり、戦いが続いています。



訳:ほとんどの人々は、地下で暮らして料理をするなどしています

 昨年11月時点で、ヌールちゃんは10歳、アラちゃんは8歳。

 姉妹が暮らす東グータ地区は反体制派の支配下にあり、アサド政権軍が2013年から包囲しています。今年に入ってからは空爆が止まりません。

 ツイートからは、倒壊した街並みの様子も見て取れます。


訳:昨日は大変な1日でした。戦闘機が建物を破壊しました。見てください。東グータの子どもたちを助けてください

空爆で自宅が破壊 泣き叫ぶ姉妹

 反体制派の在英NGO「シリア人権監視団」によると、東グータ地区では3月10日までの3週間で、1099人が死亡。そのうち227人が子どもです。同地区では医薬品も不足しており、医療体制は崩壊状態にあります。

 東グータ地区をめぐっては、子どもたちに水や食料などを届ける活動をしている国連児童基金(ユニセフ)が、非人道的なことが起き続けていることに憤りを示す「白紙声明」を出したことでも、話題になりました。

 そんな死の恐怖は、姉妹にも忍び寄っています。

 2月22日、姉妹は文字だけの投稿をつぶやきました。


訳:私たちの家が壊されて、アラがケガをした

 そして3時間後、今度は動画をアップしました。姉妹は泣き叫び、アラちゃんの左目付近からは出血しているのが分かります。

 ※音量注意



訳:どうかお願いだから、助けて!

 ある動画では、撮影中に戦闘機が近い場所を爆撃したとみられる音も収められています。


訳:戦闘機やヘリコプターが、近所を爆撃している。私たちを助けて

「他の子と同じように 学校に行きたいだけ」

 ツイッターの開始は2017年11月。姉妹に取材した朝日新聞イスタンブール支局の其山史晃記者によると、姉妹の母親であるシャムスさん(35)は英語教師で、姉妹に英語とツイッターの使い方を教え、スマートフォンから英語で発信しているそうです。


訳:私の名前はアラ、8歳です。私の名前はヌール、10歳です。私たちは、包囲された街の東グータに住んでいます。私たちの初めてのツイートです。
(その後動画では、ヌールちゃんが「私たちの日常生活をこのツイッターで紹介します。4年間包囲されています。学校に行きたいです」と述べている)

 シャムスさんは通信アプリの音声メッセージのやりとりなどで其山記者の取材に応じ「娘たちの声を通じて、私たちが直面している過酷な現実を世界に知らせたい」と話しました。

 姉妹もそれぞれの思いを伝えています。

 ヌールちゃんは「私の望みは、爆撃も飢えもない世界で、他の子どもと同じように学校に行きたいだけ」、アラちゃんは「学校に行きたい。友だちと遊びたい。東グータを離れたい。私たちを助けてほしい」と語り、今すぐ攻撃をやめてほしいと訴えました。

最新のツイート 意味は果たして……

 この原稿を書いていたところ、姉妹の最新の投稿を見て心臓が止まりそうになりました。



訳:何が起こっているか、なるべく伝えます。でも、もしも投稿がなければ、命はないということ。私たちを許してね。私たちは国際社会に、この人道危機を訴えて助けて欲しかった。でもどうやら、それができなかったみたいです。みんなのことが大好き。ヌールとアラ

 ヌールちゃん、アラちゃん……。どうか無事で。

関連記事

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます