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幼い姉妹、命のツイート「私たちを許して…」シリアで起きていること
内戦が続くシリアからツイッターで発信し続けている幼い姉妹がいます。「戦闘機が爆撃している」「どうか私たちを見捨てないで」。そんな中、投稿された3月12日のツイートに一瞬、言葉を失いました。「私たちを許してね……」。戦争が起きても、そこで暮らしていかなければならない人々がいます。少女たちを追い詰める「戦場」では何が起きているのでしょうか?(朝日新聞国際報道部記者・軽部理人)
Now we are in the most danger area and Assad and his allies will destroy us but we have hope in you please don't let us alone#SaveGhouta#Ghouta#Syria pic.twitter.com/9D8DdWOSZO
— Noor And Alaa (@Noor_and_Alaa) 2018年3月11日
3月11日午後、ヌールちゃんとアラちゃん姉妹のツイートです。
ツイートは、戦いを優位に進めるアサド政権軍に包囲された「東グータ」という地区から発信されています。首都のダマスカス近郊に位置する東グータでは、ここ3週間の死者数が1000人を超えました。
英文で書かれた投稿には動画も添えられ、ヌールちゃんがツイートを読んだ後にアラちゃんが"Stop War!(戦争を止めて)"と訴えます。窓の外からは戦闘機の飛行音が聞こえ、2人はおびえたような表情をしています。
2011年に内戦が勃発したシリアでは、これまでに30万人以上が死亡。難民は500万人を超えています。アサド政権軍はロシアの支援を受けて戦いを優位に進めているものの、現在も反体制派、クルド人勢力などが入り交じり、戦いが続いています。
Most of the people are living and cooking in underground (cellars)#SaveGhouta#Ghouta#Syria pic.twitter.com/JVZJpGNdCV
— Noor And Alaa (@Noor_and_Alaa) 2018年3月9日
昨年11月時点で、ヌールちゃんは10歳、アラちゃんは8歳。
姉妹が暮らす東グータ地区は反体制派の支配下にあり、アサド政権軍が2013年から包囲しています。今年に入ってからは空爆が止まりません。
ツイートからは、倒壊した街並みの様子も見て取れます。
Yesterday it was very difficult, warplanes destroyed our building and our Neighborhood
— Noor And Alaa (@Noor_and_Alaa) February 23, 2018
Look at our Neighborhood
Save the #Children of #Ghouta #SaveGhouta#Syria pic.twitter.com/oYOOdVVaEI
反体制派の在英NGO「シリア人権監視団」によると、東グータ地区では3月10日までの3週間で、1099人が死亡。そのうち227人が子どもです。同地区では医薬品も不足しており、医療体制は崩壊状態にあります。
東グータ地区をめぐっては、子どもたちに水や食料などを届ける活動をしている国連児童基金(ユニセフ)が、非人道的なことが起き続けていることに憤りを示す「白紙声明」を出したことでも、話題になりました。
そんな死の恐怖は、姉妹にも忍び寄っています。
2月22日、姉妹は文字だけの投稿をつぶやきました。
Our house is destroyed
— Noor And Alaa (@Noor_and_Alaa) 2018年2月22日
Alaa is injured 😔#SaveGhouta Now#Ghouta#Syria
そして3時間後、今度は動画をアップしました。姉妹は泣き叫び、アラちゃんの左目付近からは出血しているのが分かります。
※音量注意
For God's sake help us!#SaveGhouta #Ghouta#Syria pic.twitter.com/9QXVypUSrA
— Noor And Alaa (@Noor_and_Alaa) 2018年2月22日
ある動画では、撮影中に戦闘機が近い場所を爆撃したとみられる音も収められています。
Warplanes and helicopters attack our neighborhood by barrels
— Noor And Alaa (@Noor_and_Alaa) February 21, 2018
Please help us #Ghouta#Syria #SaveGhouta pic.twitter.com/Du5gJyOQhg
ツイッターの開始は2017年11月。姉妹に取材した朝日新聞イスタンブール支局の其山史晃記者によると、姉妹の母親であるシャムスさん(35)は英語教師で、姉妹に英語とツイッターの使い方を教え、スマートフォンから英語で発信しているそうです。
My name is Alaa I am 8 years old
— Noor And Alaa (@Noor_and_Alaa) November 3, 2017
My name is Noor I am 10 years old
We are living in Besieged #Ghouta #MyFirstTweet from #Syria pic.twitter.com/7pvMauDMdg
シャムスさんは通信アプリの音声メッセージのやりとりなどで其山記者の取材に応じ「娘たちの声を通じて、私たちが直面している過酷な現実を世界に知らせたい」と話しました。
姉妹もそれぞれの思いを伝えています。
ヌールちゃんは「私の望みは、爆撃も飢えもない世界で、他の子どもと同じように学校に行きたいだけ」、アラちゃんは「学校に行きたい。友だちと遊びたい。東グータを離れたい。私たちを助けてほしい」と語り、今すぐ攻撃をやめてほしいと訴えました。
この原稿を書いていたところ、姉妹の最新の投稿を見て心臓が止まりそうになりました。
We will try to put you in touch with what happens when we can. When there is no news, there is no life.
— Noor And Alaa (@Noor_and_Alaa) March 12, 2018
Forgive us. We tried to awaking humanity in the international community to save us. It seems we couldn't.
We love you so much
Noor and Alaa#SaveUs#SaveGhouta#Syria pic.twitter.com/NFp8vu1aoc
ヌールちゃん、アラちゃん……。どうか無事で。
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