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2018年03月13日

この本どう売る? 宣伝部員は元鉄道会社員、「ルビンの壺」の次は…

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関係者用に簡易製本した「わたし、定時で帰ります。」

関係者用に簡易製本した「わたし、定時で帰ります。」

 覆面作家・宿野かほるさんの小説「ルビンの壺(つぼ)が割れた」を知っていますか? 発売前に期間限定で無料公開してSNSで話題となり、増刷を重ねて7万2千部まで伸びています。同じ宣伝担当者が手がける新刊が、朱野帰子さんの「わたし、定時で帰ります。」です。今度はホワイトデーに一斉に定時退社を目指す「ホワイト退社デー」というリアルイベントを企画中です。2年前まで鉄道会社員だった彼に話を聞きました。

宣伝部の佐瀬圭介さん

宣伝部の佐瀬圭介さん

「ルビンの壺が割れた」では


 昨年7月、新潮社の特設サイトにこんな呼びかけが載りました。

 「“腕に覚えのある”読者のお力をぜひお借りしたい」

 発売前の小説「ルビンの壺が割れた」を電子書籍やサイトで全文無料で公開してキャッチコピーを募集しました。

 限定2週間の公開期間中、ダウンロード数は1万を超え、寄せられたキャッチコピーや感想は6千件を超えました。

 芸能人や実業家がツイッターやブログで取り組みを紹介。メディアにも取り上げられ、増刷を重ねて7万2千部まできました。

 この企画を担当したのが宣伝部の佐瀬圭介さん(30)。2年前まで鉄道会社で働いていて、沿線情報を紹介するフリーペーパーの発行やキャラクターを使ったイベント企画など、旅客誘致の仕事を担当していました。

覆面作家・宿野かほるさんの小説「ルビンの壺(つぼ)が割れた」

覆面作家・宿野かほるさんの小説「ルビンの壺(つぼ)が割れた」

出典: 新潮社提供

次は「わたし、定時で帰ります。」


 そんな佐瀬さんが新たに宣伝を担当するのが、今月30日に発売される「わたし、定時で帰ります。」です。

 絶対に残業しないと心に決めている会社員の結衣。批判されることもあるけれど、彼女にはどうしても残業したくない理由があります。そんな彼女の前に、むちゃな仕事を振って部下を潰すブラックな上司が現れて――というストーリーです。

 担当編集者の照山朋代さんは、「登場人物にリアリティーがあって『こんな人いる!』と思いながら、ふと自分の働き方を考えてしまう。そんな小説です」と説明します。

担当編集者の照山朋代さん

担当編集者の照山朋代さん


 「ルビンの壺が割れた」と共通するのは、初版がそれほど多くない点です。

 人気作家の本などは初版から多く刷って、新聞やポスター、店頭POPといったある程度決まった宣伝方法で売り出します。初版が多くない本は、宣伝費が限られる中でどう売り込むかが腕の見せどころです。

 佐瀬さんが今回企画したのが、読者参加型のリアルイベント「ホワイト退社デー」です。みんなで一斉に定時退社して、働き方について考えてみませんか、という取り組みです。

 「ルビンの壺が割れた」以降、他の出版社でも無料公開や装丁イラスト募集といった取り組みが出てきました。差別化するための次の一手がリアルイベントだったのか?

 「そうではありません。『わたし、定時で帰ります。』は働き方について考えるきっかけになる本だと確信がありました。読んだ後にアクションを起こしたくなる本なので、SNSよりもリアルイベントの方が合っていると思ったんです。方法は違っても、読んでもらうきっかけを作るということに変わりはありません」

「ホワイト退社デー」のロゴマーク

「ホワイト退社デー」のロゴマーク

出典:新潮社のホームページより

ホワイト退社デーの内容は


 ホワイト退社デーでは、定時退社が本を読むきっかけづくりになるよう工夫しました。

 当日17時から24時まで「わたし、定時で帰ります。」の電子版を無料ダウンロードできるようにし、紀伊國屋書店新宿本店では17時半から、一般には出回らない関係者用に簡易製本したもの(バウンドプルーフ)を限定50冊配布。

 また、東京都渋谷区の「森の図書室」では18時から、著者の朱野帰子さんと小説家・平山夢明さんのトークイベントを開催します。

 いずれも17時に定時退社しなければ参加できないように時間設定しました。

 「アイデアのきっかけは、大雪の日に話題になった『こんな日に早く帰れるなんて、雪の日だけにホワイト退社』というフレーズでした。それなら、ホワイトデーに定時退社を呼びかけようと」

 ホワイト退社デーの特設サイトでは、働き方に関するアンケートも実施。「本書のカバー裏や帯の一部に掲載することがあります」とことわり書きがあります。

 「無料公開で読んだ人が、あとで購入した時に帯やカバー裏を見て『自分のコメントが載ってないかな』と楽しんでもらえたら、という仕掛けです」と佐瀬さん。

 ツイッターで「#ホワイト退社デー」のハッシュタグをつけて発信を呼びかけたり、定時退社に取り組んでいる企業を複数取材してインタビューを掲載したり、発売日に向けて盛り上げている最中です。

3月14日18時から、著者の朱野帰子さんと小説家・平山夢明さんのトークイベントを開催

3月14日18時から、著者の朱野帰子さんと小説家・平山夢明さんのトークイベントを開催

このプロジェクトは就業時間内で


 宣伝が毎回うまくいくわけではありませんが、この仕事にやりがいを感じているという佐瀬さん。

 「鉄道と違って多くの人が知っているわけではなく、新しく出る本に触れる機会はどんどん減っています。興味がない人にどうアピールしていくか、工夫のしどころです」

 特設サイトを一番下までスクロールすると、こんな文字が現れます。

 「このプロジェクトはすべて就業時間内で行われています」

 佐瀬さんは「まずは自分が実行しなければと思いました。みなさんも14日は定時退社してぜひイベントに参加してください」と話します。

「ホワイト退社デー」の特設ページはこちら

この本どう売る? 宣伝部員は元鉄道会社員
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関係者用に簡易製本した「わたし、定時で帰ります。」。著者は朱野帰子さん
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