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ウザすぎるあの人を好きになるには? 劇団ひとりさんとテレ東で学ぶ
嫌いな人への対処法を先人の知恵から探ろうという深夜番組があります。テレビ東京の『嫌いな人を好きになる方法』です。わずか2分30秒で、日常のウザすぎる人間関係をドラマ化。じゃーどうやったらそのイライラをおさめることができるかを、劇団ひとりさんが案内します。
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嫌いな人への対処法を先人の知恵から探ろうという深夜番組があります。テレビ東京の『嫌いな人を好きになる方法』です。わずか2分30秒で、日常のウザすぎる人間関係をドラマ化。じゃーどうやったらそのイライラをおさめることができるかを、劇団ひとりさんが案内します。
突然ですが、誰にでも嫌いな人、苦手な人が身の回りにひとりはいると思います。その嫌いな人と仲良くしようとしていますか? 小池百合子都知事の「排除します」宣言ではないですが、どちらかと言えば、合わない人とは関わらないのが最近のトレンドっぽい気がします。
一方、嫌いな人への対処法を先人の知恵から探ろうという深夜番組があります。テレビ東京の『嫌いな人を好きになる方法』です。わずか2分30秒で、日常のウザすぎる人間関係をドラマ化。じゃーどうやったらそのイライラをおさめることができるかを、ゲーテや山本七平といった、「知の巨人」たちの言葉を引きながら、関係性を客観視しつつ探る番組です。
番組は2月28日スタート。平日深夜25時30分からのわずか2分30秒で、タレントの劇団ひとりさんが、ウザすぎ人間博物館の館長という設定で、平成時代のウザすぎる人を全12パターン紹介してくれます。
テーマには時事性が感じられます。
例えば、飲み会で説教中にスマホをいじっただけで他部署の先輩にぶん殴られ、それを報告すると、なぜか自分の上司が処分されるという謎の「ポンコツカンパニー」の話。何がモデルになっているかはだいたい想像がつきます。
その理不尽極まりない状況を、番組では劇団ひとりさんが、戦後政治思想の大家、丸山真男の名著『忠誠と反逆――転形期日本の精神史的位相』から分析します。
いわく「時代が変わる際、最も反逆的だと象徴される者。それは、かつて最も忠誠的だった者」という一節から読み解き、「そう思いをめぐらせれば、好きになれる可能性も少しはある」と説きます。なんだか、わかったような、わからないような微妙な見終わった感が残ります。
番組ではこのほか、大切な文書を破棄したと言い張り、ちゃっかり出世する「モフモフ系上司」。味方のフリをしてグチを聞き出し、即座に社内で共有して仲間を売る「裏切りOL」。目標設定は上げるクセに労働時間は減らせと、バブルで脳みそが溶けた「エセ・ホワイト・クズ上司」などなど、ナウいテーマが扱われます。
番組を企画したテレ東制作局の高橋弘樹プロデューサー(36)は制作の意図を、「今のテレビの風潮とは逆と行ってみようと考えた」と話します。
高橋Pによると、最近のテレビは、嫌いなものはたたくという風潮にあるそうです。「例えば、TBSの『半沢直樹』やフジテレビ『痛快TVスカッとジャパン』。こうした番組がはやっているし、実際、数字をとる。ただ、現実では嫌いな人と仲良くする努力を怠ったがために、ますます生きづらくなっている気がする。じゃあ、逆に好きになる方法をテレビで考えてみようと思った」と高橋Pは話します。
確かに、最近はツイッターなどに嫌いな人の言動をさらして、自らの精神的優位を確保し、留飲を下げるという対処法がまかり通っているように見えます。でも、結局それってなんの解決にもなっていなくて、そうした知り合いの悪口に遭遇すると、いたたまれない気持ちになってしまいます。
高橋Pはこれまで、平成をテーマにテレビ番組をつくってきました。
例えば、終電を逃した人にタクシー代を支払う代わりに家の中を見せてもらう『家ついていってイイですか?』。平成を生きる市井の人たちの生活模様を、ぶっつけ本番ロケというスタイルで、バラエティーでありながら、ドキュメンタリーのように見せます。「平成庶民の生活記録そのもので、現代の遠野物語をめざしている」(高橋P)そうです。
また、タレントの吉木りささんに、ポンコツ男子がひたすら罵倒される『吉木りさに怒られたい』。昭和男子のような力強い男性性や家父長制が失われつつあるなか、平成男子の頼りなさや甘え、短絡さを、美女に罵倒されることで表現しました。
その高橋Pが今回の『嫌いな人を好きになる方法』で表現したいことについて、「ミネルヴァのフクロウは夕暮れに飛び立つと言いますが……」と、わざわざヘーゲルの「法の哲学」の序文を引用しつつ語り始めました。
すなわち――、今上天皇の退位が決まり、平成という時代が終わろうとしている今だからこそ、平成とはいかなる時代だったかをしっかり分析できる、と高橋Pは考えます。
大いに自戒の念を込めて、と前置きした上で「嫌な人や嫌なこと、価値観が違う人のことでも、笑いに変えて許せるおおらかな気持ちや雰囲気が、平成で失われたものかなと思う」と高橋Pは話します。
「ポスト平成、ポスト東京五輪を見据えたとき、日本は深刻な病に陥っていくかも、という気がする。ですから、その理由を探りつつ、ポスト平成ではそれを超克できるといいな、ということです」
ん? なんだか意味がわからなくなってきました。
「いや、まあこの番組はバラエティー・ドラマなので、笑えるよう、様々な思想をもてあそんで、ふざけながら探ります。キーワードは清末民初(※中国の清朝末期から中華民国への転換期)の阿Q(※魯迅の小説「阿Q正伝」に出てくる残念な主人公)と、ニーチェです。ますますわけがわからなくて、すみません(笑)」
ドラマ番組で2分30秒という異例の短さについては「一瞬です。深夜なので、気がつかないくらい一瞬です。そのすぐ終わる感じを楽しんでほしい」と高橋Pは話します。
一方、「2分30秒だからこそ、その一瞬に全精力を注ぎ、どんなゴールデンのドラマや番組よりも高いクオリティーを目指した」そうです。(※目指しただけです!笑 高橋P)
番組を進める劇団ひとりさんが「CM撮影よりも指示が細かかった」というほどの秒単位のセリフ読みで、収録後に「めちゃくちゃしんどかった」と話していたことからも、意気込みが伝わります。
また、博物館を模した大がかりなセットも「これ、なんのために?!」と感じます。テレ東によるとセットには「ゴールデンのセットの2.5倍の予算」を費やしたそうです。
劇団ひとりさんは「ここまでお金をかけて、天井まで組んだセットは珍しい。お台場のビーナスフォートみたい」と話していました。
最後に高橋Pは、番組にはポスト平成を楽しく生きるための仕掛けがあると言います。全12回のドラマのタイトルの頭文字をつなげると、あるメッセージが登場。最終回は30分ドラマにつながるという仕掛けがあるそうです。
『嫌いな人を好きになる方法 』は3月20日(火)まで、金曜日をのぞく平日25時30分から連日放送。3月21日(水)の最終話は午前9時11分からの30分放送です。
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