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フィギュア、五輪逃した選手たち それぞれの本音「悔しい、でも…」
冬季五輪のフィギュアスケートは、ファンの多い花形競技の一つです。出場選手は男子3枠に対し女子は2枠。当初から熾烈な争いが予想されました。選考会となった全日本で涙をのんだ選手たちは、結果に向き合い、それぞれの道に歩き出しています。(朝日新聞スポーツ部記者・浅野有美)
昨年12月の全日本選手権6位に終わった本郷理華選手(21)=邦和スポーツランド=は1月末、甲府市であった冬季国体成年女子でSP(ショートプログラム)、フリーともに1位に輝きました。
「新たなスタートとして、いいスタートを切れた。もっと次がよくなるようにしたい」。合計204.29点で3連覇を果たしました。
全日本のSPでは、主要大会で自身初の70点台を出して3位に。ただその後のフリーではジャンプのミスが重なって、順位を落とし五輪切符をつかめませんでした。
「全日本のような演技はもうしたくないと思った。練習からしっかりやろうと思って切り替えた。1回1回大切に練習してこられた」。
冬季国体は大きなミスなく滑り切りました。SPは全日本に続き70点を超え、フリーとの合計も目標の200点台にのせました。
「200点を超えられたのはうれしい。もっといい演技を試合で出せるようにしたい」。国際大会で再び200点を超えることが次の目標です。
樋口新葉選手(17)=東京・日本橋女学館高=は、2月のチャレンジ・カップに向けて練習を重ねてきました。結果はショート、フリーともに1位で合計203.94点で優勝しました
全日本4位で平昌五輪を逃した後、ツイッターでこうつぶやきました。
「悔しい、もちろん悔しい、でも前を向くしかない。まだこれで終わりじゃない。次があるんだ。やってやろう」「大変だ、だけど四年もかけてじっくりじっくり煮込むからきっと美味しくなるね」。
3月の世界選手権代表に選ばれており、今後の活躍に期待がかかります。
三原舞依選手(18)=シスメックス=は、同じ所属で同じコーチの指導を受ける坂本花織選手(17)の五輪出場を「一緒に練習してきた仲間が出てくれてうれしい」と祝福しました。
そして、自身は1月に台北で四大陸選手権に挑みました。
「(5位だった)全日本がすごく悔しくて、立ち直るのが大変だった」。
しかし四大陸選手権出場が決まり、「チャンスを無駄にしないように」と心に決め、銀メダルを獲得しました。「来シーズン以降も四大陸に出られたら、うれしい」と前を向いています。
日本女子は誰が五輪に出ても世界の上位で戦え、心を動かす演技ができる実力を持っています。
しかし、それだけの力があっても、出られない選手の方が圧倒的に多いのが現実です。
選手たちは、五輪出場枠が決まった昨季の世界選手権後から選考会までの約9カ月にわたり、可能性を信じて、一時も気が抜けないほど練習に打ち込んできました。
五輪は4年に1度。誰もが五輪に合わせられるわけではありません。代表とそうでなかった選手は、わずかな差しかありません。
五輪への戦いを終えた後、彼女たちがどう向き合っているのか。代表に選ばれなかったとしても、素晴らしい選手であることを知っていてほしい。そう思い、彼女たちの「その後」を追いました。
次の五輪を目指す選手もいれば、年齢や気持ちの面で迷う選手もいます。それでも、競技に向き合い、自分の限界に挑戦し続けています。
極限まで自分を追い込んだ末の新たな一歩。それは、アスリートに限らない、多くの人にとって大事な生き方のヒントになるはずです。
以前、高校野球を取材したとき、ある高校の監督が言っていた言葉があります。
「競技を終えた人生の方が長い」。
戦いの後、どう生きるかの方が大事なのだということを、彼女たちから、あらためて教えてもらった気がします。
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