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五輪金・清水宏保の解説、「実に的確」と話題 選手目線の「説得力」
日本人のメダルラッシュで盛り上がりを見せる平昌冬季五輪。スピードスケートの女子1000メートルでは、小平奈緒選手が銀メダル、高木美帆選手が銅メダルを獲得しました。このレースを分析した長野五輪金メダリスト・清水宏保さんの解説が「分かりやすい」「実に的確」などとツイッターで評判です。番記者として追いかけた現役時代は「孤高」の存在だった清水さん。今回解説を直接聞いて、選手目線の「説得力」と本音を語る「親近感」をあわせ持った解説者に変貌していたことを感じました。(朝日新聞スポーツ部デスク・志方浩文)
14日の女子1000メートルを朝日新聞デジタルでの生中継で動画解説した清水さん。「ぼく、しゃべりだしたら、止まらないですよ」と最初に宣言した通り、約1時間半、レース映像を見ながらしゃべりまくってくれました。おかげで、司会として一緒に映像を見届けた私は楽をさせてもらいました。
この日、小平選手の心配点は、アウトスタートだということでした。スピードスケートの1000メートルはインスタートが有利なのです。清水さんはレースに前にそのことに触れ、理由を丁寧に説明してくれました。
「インスタートには二つの有利なポイントがある。一つ目はスタート直後の直線がアウトスタートより長く、スピードに乗りやすい。二つ目は疲れが出る最後の1周のバックストレートの交差で相手の後ろにつく形になり、相手のスピードを利用できるうえ、最後のコーナーで小さいカーブを滑ることができる。疲れた時に大きなカーブを曲がるのは、疲れるんですよ」
また、外国人選手のフォームを見ながら、「上半身、足、足首、そしてスケート靴が一直線になっている。こういうのがいいフォーム」ととっさに話す場面もありました。
こうした内容を、笑いをまじえて話すため、ツイッターでは「わかりやすい」「金メダリストで説得力があるうえに親近感が持てる」と好反応が続々。選手の滑りを見ながら、「スピードが落ちた。もうだめですね」など、テレビ解説ではなかなか言えない「本音」も繰り出していました。
まるで居酒屋でテレビを見ながら話すような解説のなか、プロの視点が発揮されたのが、小平選手の3組前にオランダのテルモルス選手が滑った時。
1分13秒56のタイムが出ると、「うわー、小平選手に金メダルをとってほしかったのになあ。でも、まあ本番は500メートルですから」。
小平選手は、まだこれから滑るのに、「負け」を覚悟した発言。そして、画面に映った小平選手の映像を見て、「目つきがかわりました。動揺しましたね。だれだって、あのタイムを出されたら動揺しますよ。ぼくでも動揺します」と、選手の心理描写も的確に言い表したのです。
これには、ツイッターで「清水さんの解説正直すぎて、スタート前から期待もさせてもらえなかったわ」といった声もありました。
結果はというと、清水さんの言った通り、小平選手はテルモルス選手の記録を抜くことができず、銀メダルでした。
「銀メダルは悔しいんですよ。金メダルはうれしい、銀はくやしい、そして銅はほっとする」
1998年長野五輪500メートルで金、1000メートルで銅、2002年ソルトレーク五輪500メートルで銀と、すべての色を獲得した経験を持つだけに、説得力があります。「金しかとっていない柔道の野村忠宏くんは、この心理はわからないって言ってました」
現役時代は、報道陣にもあまり語らず、「孤高」を貫いた清水さん。私は、長野五輪後から長年取材をしましたが、「一言」をもらうために、裏から逃げる清水さんを走って追いかけたこともありました。
今となっては笑い話。当時を振り返ると、「その方がかっこいいと思っていたんですね。現役時代からいろいろ話をしておけばよかったと、今は思っています」。そうやって素直に反省するところも、好感が持てます。
清水さんは引退後、大学院で医療経営などを勉強。最近では、札幌市で訪問看護施設と通所介護(デイサービス)施設、スポーツジムを開設するなど、地域に根ざした活動に力を入れています。
そんな一方で、テレビ朝日系の「しくじり先生」に失敗談も講師として出演するなど、バラエティー番組でも活躍。幅広い活躍が、解説ににじみ出ているのでしょう。
14日の朝日新聞デジタルの生解説のあとは、ニュース番組をはしごした清水さん。翌15日も各局のワイドショーなどを転戦と、ひっぱりだこ。19日の男子500メートルでは、テレビ朝日の中継の際のスタジオゲストを務めます。
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