話題
清宮、閉店まで粘る プロ野球、迫力のキャンプ飯 272キロを肉調達
プロ野球はキャンプ真っ盛り。体が資本の選手たちは、どんな食事をとっているのでしょう。米国アリゾナ州のスコッツデールでキャンプ中の日本ハムが報道陣に公開した試食会に参加してみました。(朝日新聞スポーツ部記者・山下弘展)
マグロ、ハマチ、タコ、ホタテの刺し身にイクラのしょうゆ漬け、サバのみそ煮に納豆もあります。牛肉のステーキ、骨付きカルビ、みそ汁に白米に玄米も、おいしそうな湯気をたてています。
ルーキーの難波侑平選手(岡山・創志学園高)のご家族が勤務されている関係で、永谷園から提供された「ふりかけ」や「マツタケの味のお吸いもの」も並びます。ここは本当にアメリカなのかと、見まがうほどです。
記者の米国滞在も1週間になり、本場のハンバーガーも食傷気味。日本の食事が恋しい、でも、和食レストランは高い。そんなジレンマのさなか球団が開いてくれた試食会は、まさに砂漠のオアシス。牛肉のステーキは軽く歯を当てただけでかみ切れ、ジューシーな肉汁が口のなかいっぱいに広がります。
お刺し身も、札幌のお店に負けないくらい新鮮です。つんと鼻を通る、ワサビの風味が、なんだか懐かしい……。味がじっくり染み込んだサバのみそ煮を一口ほおばれば、ついついご飯も進みました。
日本ハムは2016年からアリゾナ州で春季キャンプを実施しています。1日の活力になり、練習の疲れを癒やす、大切な食事。選手や球団スタッフは基本的に、使用する大リーグ・ダイヤモンドバックスの施設内にあるクラブハウスの食堂で朝、昼、晩の3食をとります。
キャンプ開始当時から調理を指揮するのが、ロサンゼルス近郊のレストランでシェフを務める水原英政さん(58)。
昨季までの球団通訳で、今季からはエンゼルスに移籍した大谷翔平の専属通訳になる水原一平さん(32)のお父さんです。このキャンプの時期は休暇をとって、朝5時から厨房(ちゅうぼう)に入ります。
「肉は牛、豚、鶏と600パウンド(約272キロ)を用意しました。調味料も、店一軒開けるくらいありますよ」と水原さん。食材は普段つきあいのある店や、足りなくなると近くのスーパーで調達します。
苦労するのは料理酒の確保。「米国では州が変わると、ライセンスも違ってお酒が手に入りにくいのです。なので、ロサンゼルスから持ってきました」。調理器具も、「ザルがないんですよね。こっちは」
水原さんら食堂スタッフの尽力で、食事時間は選手たちにとって何よりも楽しみなひとときになりました。ルーキーの清宮幸太郎選手は「何でもおいしいです。いつもたくさんのメニューがあって、飽きないようにしてくれています」。
食事と先輩とのおしゃべりに夢中になるあまり、「閉店」の午後8時までいたこともありました。
毎日の食事に誰よりも感激しているのは、栗山英樹監督かもしれません。監督はヤクルトでの現役時代、同じアリゾナ州のユマでキャンプをした経験があります。
「当時のごはんはね、みんなに一度食べさせたいよ。マッシュポテトに硬い肉。パサパサのごはん。あまり食べられなくて、代わりにこっそり『ヤクルトラーメン』食べてたもんね。今は、日本と同じ食事を食べさせてもらっている。本当に感謝です」
1/6枚