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何のため?「イスラム国」が人道団体を襲う理由 決めつけの敵意
アフガニスタン東部ナンガルハル州の州都ジャララバードで1月24日午前、子どもの教育などを支援する国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」の事務所を武装集団が襲撃しました。州政府によると、少なくとも6人が死亡、25人が負傷。死者のうち4人はNGO職員でした。善意でアフガニスタンに貢献しようとする人たちが、なぜ襲われるのでしょうか?(朝日新聞イスラマバード支局・乗京真知)
州政府によると、事務所前で車爆弾が爆発した後、混乱に乗じて襲撃犯数人が事務所内に侵入。当時、事務所には40人以上がいたそうです。駆けつけた治安部隊との間で、およそ10時間にわたって銃撃戦が続きました。
銃撃戦が収まったころ、同州に拠点があるイスラム教スンニ派系の過激派組織「イスラム国」(IS)支部が、系列のアマク通信を通じて犯行声明を出しました。
IS支部は声明の中で「十字軍への攻撃」という表現を用い、異教徒や欧米社会への敵意を示しました。スンニ派の教えを信じない人たちや、欧米の価値観の浸透につながる活動を、いずれも異端視して攻撃対象とする考え方です。
これまでもアフガニスタンでは、IS支部や反政府勢力タリバーンによる政府機関や人道支援団体への攻撃が続いてきました。
国連人道問題調整事務所によると、同国では2017年の1年間で、人道支援の施設や活動が巻き込まれた事件が377件あり、支援に関わる17人が死亡、47人が誘拐されました。
セーブ・ザ・チルドレンは70年代から子どもの保健教育などに従事し、十数州で市民社会を支えてきた主要NGO。活動の一時中止が援助離れを加速させるのではないかとの懸念が高まっています。
2016年12月以降に職員ら7人が死亡した赤十字国際委員会は、すでにアフガニスタンの事業縮小を決めています。
活動のリスクを象徴する今回の攻撃は、アフガニスタンで踏ん張る他の国際NGOの活動にもいっそうの制約を課すことになりそうです。
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