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「うんちマン」に変身したら美女が寄ってきた 多様性時代の究極の姿
全身黄色のタイツにとぐろを巻いた金のかぶり物。その名も「うんちマン」。新幹線でも飛行機でも基本的にこの格好。そうしたら美人が寄ってくるようになった!? ダイバーシティー時代の究極の姿とも言える生活から見えてきたものとは。
「うんちマン」の本名は「小関昭彦」さん。ゲーム会社を経営している。うんちが主人公の「PooPride」(うんちを誇りに思う人)というゲームの宣伝のため、3年前に変身したのがきっかけだ。
――なぜうんちに?
ゲームを作るなかで、1度、うけるかどうかではなくて、自分が作りたいゲームを作ろうと思って開発しました。子どもって「うんち」大好きでしょ。僕はそのまま大きくなって、大人になってもよく話題にしていたんです。それでゲームの宣伝のためもあって、3年前に東京ゲームショーのパーティーで「うんちマン」変身をしたら好評でした。周りのみんなが喜んでくれて、笑顔になってくれた。それで、この格好だと人を幸せに出来るという勘違いに突入しました。
――うんちって敬遠されませんか?
開発しようとしたら、社員はなんで? って言ってやりたがらないし、プログラマーは「うんちのゲームは作れない」って動いてくれない。最初から大変でした。スマホ用のゲームですがアンドロイド用のみです。アップルさんからは認めてもらえませんでした。
でもそれ以上にみんなが喜んでくれています。海外でも好評。うんちは国境を越えます。中国ではさすがに「うんちマン」は怒られるかと思いましたが、公安(警察)も「しょうがないな」って顔して笑うだけで、何もありませんでした。
――正直恥ずかしくないですか?
恥ずかしかったですよ。最初の頃は目的地近くのトイレで着替えて。いつもドキドキしていた。でもそのうちにコソコソしているのが格好悪いと思うようになって2年くらい前のある日から家からこの格好で出かけるようになりました。
――どんな変化が?
美人から声をかけられることが増えました。
なんでか考えたんですけど、「うんちマン」に声かけるのって勇気が必要だと思うんです。で、勇気って、普段から自己肯定をしている人の方があるのかな? 美人のほうが普段から褒められているからか、自分を肯定する力が強いのだと感じています。
それに僕ってインスタ映えするじゃないですか(笑)。きっと美人のほうがインスタを活用している人が多いんですよ。うらやましいでしょ。
でも、一番うれしいのは小学校低学年くらいの子供に声をかけられること。「うんこ」「ちんこ」って言っていれば一日中幸せな人たち。道を歩いていても子供たちが最初は遠巻きに見ているんだけど意を決して近寄ってきて、「うんちマン」とか「うんこマン」って満面の笑みで声をかけてくれるんです。これがうれしいですね。
――ところで、冬や夏も同じ格好はつらいですよね?
冬はインナーなどで何とかなりますが、夏の炎天下はちゅうちょしますね。半袖半ズボンの「夏服を作れば?」と言われたこともあります。でも、そこは僕も「マン」のはしくれ。バットマンとかスーパーマンが夏服着ないじゃないですか。僕も同じ格好で通しています。
――家族の反応は?
妻は最初のころは一緒に出かけるのは嫌だったようです。ただ、もともと変わり者だと思っていたようですし、「うんち」や「全身タイツ」が好きなことも知っていたので受け入れてくれています。
「今日は普通の格好で出かけよう」と言われれば脱ぎますしね。
――どうして続けているんですか?
この格好になって素直に人の声が聞けるようになりました。最初のころは靴が黒かったしメガネも普通でしたが、電車に乗っていたらおばちゃんから、「その格好で、靴とメガネが普通なのはおかしい。黄色にしなさい」って言われて、すぐに変えました。素直になると周りも喜んでくれる。そうすると僕もうれしい。毎日が楽しくなりました。出かければ出かけるだけうれしいことがある。こんなことは今まではなかった。
――なにが見えてきましたか?
みんな、「こうでなければいけない」にとらわれすぎているんだと思います。僕も、「社長とはこうじゃなきゃいけない」みたいなのが元々あって、自分は管理されるのが嫌なのに、一生懸命管理しようとしていた。
でも違うなと。それで原点に立ち返って、自分が好きなゲームを作ろうとおもってうんちのゲームを作った。
年齢も186歳を自称しています(昨年12月取材)。去年は185歳でしたよ。この数字になんの意味もありません。「何歳だからこうであれ」ってどうでもいいじゃないかと。子どもでも大人でも好きなことやろうよと。
――最近はどんなことを?
自己肯定感を高め、限界や常識から解放される「UN(うん)理論」を提唱してワークショップなどをしています。「うんちマン」になって見えてきた物です。ワークショップではまずみんなでものすごく馬鹿なことをしてもらいます。頭を空っぽにしてもらって自分の原点に立ち返る。「一生でもっとも自分らしい幸せの時間」というものを共有し、それを聞いた人から直感的に感想をもらいながら、自分の本質を見つめ直す手伝いです。
みんなでうんちマンの格好をして町に集まる「フラッシュモブ」もしています。みんながいつも「うんちマン」にはなれないけど、たまにはこういう格好して解放されようって。
――いま考えていることは?
世界の紛争地でみんなでこの格好してフラッシュモブをしたい。紛争地でこんな格好して敵味方なくみんなで踊ってみたら、いろんなことがばからしくなるでしょ。そんなことを専門家に話をしたら「考えは甘ちゃんだと思うけど否定はしない」って言われました。
僕も甘ちゃんだと思うけど、それでもやりたいと思っています。
こんな格好をしていると、近づいてくる人と、近づいてきてくれない人がいます。自分に壁を作って心の扉を閉ざしている人はなかなか近づいては来てくれない。でも、そういう人たちも多くが、そんな自分から脱出しようとしていることに気づきました。きっと紛争地の人たちもそうだと思うんです。
世の中にはいろいろな人が雑多に存在している。それが互いに許しあいながら生きていければいいと思っています。ダイバーシティーなんて言いますが、うんちマンが認められればなんでも受け入れられると思うんです。
胸には「PooPriders」の文字。「うんちを誇りに思う人たち」という意味だ。この言葉を胸に今日も「うんちマン」は街中を歩いている。
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