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「中国のガッキー」今後は? 騒動後に投稿した「初心」の意味
新垣結衣さんに似ていることから「中国人のガッキー」として、中国人の大学生、栗子さん(22)のインスタが話題になりました。ガッキー騒動の後「初心を忘れず、日常生活や好きなものをシェアし続けていきたい」と投稿した栗子さん。実は、中国でも、ネット上の有名人が過激な動画を投稿して注目を集めようとする問題が起きています。栗子さんのメッセージからは、中国のインフルエンサーを巡る問題が見えてきます。
栗子さんの本名は龍夢柔(ロン・モンロー)で、中国湖南省生まれの22歳です。俳優・小栗旬さんのファンで、「栗」という文字を入れたハンドルネームを使っています。
中学生だった2011年から微博を使っていた栗子さん。2014年にオーディション番組『来巴! 灰姑娘』(「シンデレラ、来てください」)に出演し、グランプリに輝いたことからフォロワーが増え、2015年には10万人を超えました。
中国でインターネット上の影響力がある人物は「網紅(ワンホン)」と呼ばれます。フォロワーが10万人を超えると「網紅」の仲間入りができると言われています。
つまり、栗子さんは、インスタで人気になる前から中国では「網紅」だったと言えます。微博に加え、大学で始めたインスタ上でも2017年末ごろから、ガッキーに似ていることで注目が集まり、日本でも有名になりました。
「インターネットというプラットフォームで、その自身の特徴・行為あるいは事件でネットユーザーの注目を集めた人」という意味を指す
「網紅」は、2015年の中国の流行語のトップ10に選ばれました。2016年に発表された統計『網紅経済白皮書』によると、2016年の「網紅」の人数は100万人を超えています。
中国では網紅を「Instant Online Celebrities」と英訳しています。日本の「インフルエンサー」と同じ意味ですが、中国では平均で3カ月ぐらいの人気しか維持できない人が少なくありません。そのため「インスタント」が付いています。英訳の単語からも「網紅」の世界で繰り広げられている厳しい競争が見えてきます。
中国のネット企業「iResearch」社と微博が共同で発表した報告書『中国網紅経済発展洞察報告2017』によると、2017年には、フォロワー数が10万人を超える
「網紅」の人数は、2016年に比べ57.3%も増えています。
現在、中国で最も有名な「網紅」は、2016年に人気に火が付いた「Papi醤」という女性だと言われています。
彼女は都市部のホワイトカラーの日常生活にフォーカスし、名門演劇大学の演劇監督専攻卒という専門性を生かし、質の高い動画コンテンツを発信しています。
中国の不動産王の御曹司である王思聡氏は「国民的花婿」と呼ばれ、2015年の「網紅」のトップに選ばれました。芸能界に関する特ダネを発信することで有名です。
そのほか「美貌」を武器にECサイトで商品を販売する「網紅」も少なくありません。
400万人以上のフォロワーを持つ「張大奕」はモデルで、スタイリスト。彼女のファッションセンスにひかれたフォロワーに、彼女自身がすすめる商品を紹介しています。2016年の「独身の日」(11月11日)には、中国最大のECであるタオバオに店舗で、わずか2時間で3億円の売り上げをたたき出したことで話題になりました。
「網紅」の中には、フォロワーが「生活の糧」となっている人も少なくありません。より多くのフォロワーを獲得するために、投稿するコンテンツの中身が「プロ化」しています。フォロワーが数十万人から数千万人の「網紅」の場合、チームで運営しているアカウントも珍しくありません。
中国のSNSでは、UGC(ユーザー参加型コンテンツ)からPGC(専門家生成型コンテンツ)へのシフトが進んでいます。これまではアマチュアによるコンテンツが多かったですが、「網紅」としての人気を維持するためには、内容や技術の専門性が高くなっているのです。
「網紅」の存在が大きくなるにつれ、問題も起きてます。
ユーチューバーによる不適切な動画の投稿が問題になっていますが、「網紅」でも同じ問題が起きています。
ある「網紅」は、中国で最も貧しいと言われている四川省で、現地の村人に現金や物資を配り、その様子を中継しました。ところが、実際は、中継後、配った現金はすぐ取り戻され、卵や鉛筆なども半分以上が回収されたことが暴露されました。貧しい村民たちが道具として利用されたことが分かると批判が集中し、そのアカウントは閉鎖されました。
性的な内容の動画を拡散をする「網紅」も存在します。「たまたまライブ中継を切り忘れた」という口実で、入浴や着替えのシーンなどを「中継」し、フォロワーを引き付けようとするのです。
それらのフォロワー獲得狙いのアカウントの人気は長続きしません。
栗子さんは、これからどうなるのでしょうか?
現在、インスタのフォロワーは8万人強、微博のフォロワーも20万人を突破したばかり。100万人以上いると言われる「網紅」の世界では、「これから」の存在だと言えそうです。
ガッキー騒動を巡っては「栗子さんが企画した話題づくりではないか」といったネガティブな声も出ています。
栗子さんは困惑しつつも「初心を忘れず、日常生活や好きなものをシェアし続けていきたい」と微博上でコメントを投稿しています。
取材に対して「日常生活をシェアするという基本理念は変わりません。中国国内と日本はかなり異なる感じですので、今後は日本をもっと意識して、頑張っていきたいと思います」と語った栗子さん。中国国内では、女優やモデルのオファーも届いているそうです。
何度も来日するほど日本に親しみをもっている栗子さんが、新しい時代の「網紅」として活躍してくれることを期待しています。
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