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連載

#18 夜廻り猫

子どもの泣き声に「チッ」涙の主は… 「夜廻り猫」が描く子育て

目次

 電車の中で、お母さんに抱っこをせがみ、大声で泣く子ども。お母さんは何とかあやそうとしますが、まわりからは舌打ちも聞こえてきます。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られ、ツイッターで「夜廻り猫」を発表してきた漫画家の深谷かほるさんが「子どもの泣き声」を描きました。

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聞こえる舌打ち「うるさくてすみません」

 「抱っこ 抱っこーー うわーーーん」
 夕暮れの混み合った電車内。子どもが大きな声で泣いています。

 お母さんは両腕に荷物を抱えながら、「もうすぐだから」となだめようとします。

 「チッ」「ハーーー」
 あちこちから、舌打ちやため息が聞こえ、迷惑がられているのが伝わってきます。

 電車を降りてからも、子どもは泣いたまま。

 涙の匂いをかぎつける猫の遠藤平蔵は、歩く二人に気づきます。
 「もし そこなおまいさん どうした?」

 お母さんはすかさず「すみません 泣き声がうるさくて」と謝ります。
 すると、遠藤はあたたかく語りかけます。

 「泣いていたのはお母さんの方だ 心は号泣だったろう」

 お母さんは声にもならない声で、つらかったことを打ち明け始めるのでした。

子どもの声っていいな 感じられる社会に

 作者の深谷さんは「子育てが誰にも味方してもらえない難行苦行にならないようにしたいですが、すでになっているんじゃないかとも思います」と心配します。

 電車や飛行機といった公共交通機関での子どもの泣き声について議論されたり、
 子どもの声を気にする近隣住民の反対で、保育園が新設できなかったというニュースがあったり。

 深谷さんは、「本当はみんなが『子どもって希望だな。子どもの声はいいな』と感じられればいいのに」と願います。

 「子どもは、生き物としてまだ弱いころ。SOSを発する機能が高性能だから、うるさい声なのではないでしょうか。
  次世代の存在は誰にでも大切なこととして受け止めあいたいです」と話しています。

【マンガ「夜廻り猫」】
 猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
 泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
 そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
 遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。
 ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。

     ◇

深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。単行本1~3巻(講談社)が発売中。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受けた。黒猫のマリとともに暮らす。

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