地元
「実は、乗ってるんですよ」熊本城修復「無人重機」で見たものは…
地震で大きな被害を受けた熊本城は、20年かけた復旧計画が進んでいます。工事にはたくさんの「新技術」が投入され、専門家からも注目されています。危険な場所で作業をしてくれる「無人重機」もその一つ。最先端のマシンを望遠レンズでのぞいた時、見覚えのある操縦士が……。(朝日新聞熊本総局記者・池上桃子)
2016年4月14日午後9時26分、熊本地方でM6.5の地震(前震)が発生し、28時間後の16日午前1時25分にはM7.3の地震(本震)が起きました。
家屋の倒壊などで亡くなった直接死は50人。避難生活による環境の変化などが原因の災害関連死は140人を超えています。熊本県で約4万棟の住宅が全半壊し、最大18万人が避難しました。
熊本地震の被害は熊本城にもおよびました。熊本城自慢の石垣は大きく崩壊し、ちょっとした余震でも更に崩れる可能性があり、作業員が近づいて作業するのは危険です。そこで登場したのが「無人重機」です。
熊本城の修復に使われているリモコンで操作できる無人機は、大規模な工事では初めて使われたそうです。
2017年5月29日、「一本石垣」で倒壊を免れた飯田丸五階櫓(やぐら)の下に崩れ落ちた石材を、無人の重機で撤去する作業が公開されました。
数十メートル離れた高所作業車のゴンドラから作業員がリモコンで操ります。文化財である石材を傷つけないようゴム製の覆いをつけた五つの爪でつかんで取り除いていました。
率直に「すごいなあ」と現場で関心していたら、大林組の社員さんが近づいてきて「実は、くまモン乗ってるんですよ」。
驚いて望遠レンズで写真を撮り、拡大してみたら、確かに操縦席にくまモンのぬいぐるみが座ってました。くまモンは人じゃないので、乗っていても問題ないそうです。
熊本県のシンボルで全国的にも人気のくまモンは、震災復興の象徴でもあります。
地震後、3週間は活動を自粛していましたが、こどもの日に合わせて被害の大きかった熊本県西原村の保育園で再開しました。
くまモンは、子どもに囲まれ、もみくちゃに。手を合わせ、涙を流すお年寄りもいました。それ以来、くまモンは被災地を元気づけてきました。今は、支援をしてくれた全国各地にお礼をするツアーも続けています。
復興工事は真剣勝負ですが「こんなとろこにも、くまモン」を見つけた時、現場のちょっとした遊び心に心が温まりました。
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