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甲冑マニアに教わった「武士道」 聖地で力説「コスプレじゃない」
「コスプレじゃないんです」。関ケ原に甲冑(かっちゅう)姿で現れた男性は言いました。日本刀ブームが注目されていますが、甲冑も熱いようです。いったい、いくらするの? 材料は? 古戦場で語った筋金入りのマニアから感じたのは、武士への敬意、礼儀でした。(朝日新聞岐阜総局記者・室田賢)
きっかけはツイッターでした。関ケ原観光協会のアカウントで「自前の刀などを他の方に向けないで」という記述がありました。投稿は観光客への注意喚起でしたが「最近、甲冑のコスプレをテレビなどでよく見るなあ」と感じていました。
城や刀、武将が人気なのは有名ですが、もしかして「マイ甲冑ブーム」も生まれているのは? そう思い取材を進めました。
【関ケ原からのお願いです】
— 関ケ原観光情報 (@1600_sekigahara) 2017年9月11日
自前の甲冑武者(マイ甲冑)で笹尾山等を散策している皆様、槍や刀等を人に向ける行為は、冗談やふざけての場合でも絶対にお止め下さい。
毎日、沢山の方が笹尾山などの史跡の見学にいらっしゃいます。皆様が楽しく見学して頂けるよう、ご協力お願いします。
甲冑マニアに向けの製品には、大きく分けて、非常に重たい鉄製の甲冑と、それ以外のプラスチックやアルミで作った甲冑があります。
人気なのはプラスチック製です。見た目も本物のように精巧な作りで、独特の「テカり」を表現した上で軽くて動きやすくなっています。
気になる値段は10万~20万円。高いか安いかは買う人の価値観によると思いますが、オーナーの一人は「クオリティが非常に高いので、買えてうれしい。もちろん何着も持てませんが…」と話していました。
こんな方もいました。関ケ原で会った40代の会社員男性は島津義弘の甲冑で「聖地巡礼」。雑貨店で買った木刀に自分で布を巻いたり、武具の紐の色をアレンジしたりとかなりのこだわりでした。
「コスプレじゃないんです。スポーツでユニフォームを着るのと同じで、古戦場にはそこにふさわしい格好で訪れるべきと思っています」と、ここで命をかけて戦った武将たちへの「敬意」や「礼儀」を重んじていました。
写真を撮ったり、むやみやたらに歩き回ったりするのではなく、戦地を一望できる丘の上からじっと見渡すだけ。それだけで男性はどこか満足そうでした。
不思議な感覚ですが、戦から400年経った今でも、思いはせてもらえる武将は、幸せだなと思いました。そしていくつになっても自分の好きなことにはまることができる方たちも、うらやましいと思いました。
マイ甲冑を持つ方に「関ケ原の戦いで好きなところは」と質問すると、にやりとしてから一言。
「話してもいいですけど、1時間じゃ足りませんよ」
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