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金はない!体力はある!探検部が頼ったネットの力 ロシア未踏峰登頂
早稲田大学探検部「カムチャツカ遠征隊」は今年8月、ロシア極東・カムチャツカの未踏峰登頂を果たしました。40日間の探検への準備は、9カ月にも及びました。「本当に行けるのか」「安全は」「お金は」……。体力自慢の学生たちが頼ったのがネットの力でした。
まずは相手を知るところから。歴史や文化、気候に、動植物の生態。多岐にわたる情報を集めるとともに、1970~80年に現地で行われた調査報告書を手がかりに、ルートを考えました。
特に重要なのが地形図。山や川、沼地の位置などの特徴をつかみながら、行程や装備品の検討をつけ、1日の行動予定や移動距離、消費カロリーに基づいた食料の計画など細部を詰めていきました。
中でも、最も重要なのが「安全対策」。まず、探検部内の「審議」で全部員からOKをもらえないと、先に進むことは出来ません。
「ガイドが死んだら」「雪山での生活は」……。他の30人の部員から集中砲火を浴び、「本当に大丈夫なのか」と隊員の親が訪ねてきたことも。想定を繰り返し、6回の審議を重ねた末、計画書は100ページになっていました。
それでも、「万が一」は考えてしまうもの。「熊が本当に怖かった」という2年の野田正奈さん(20)は、徹底的に情報を集めて不安を和らげていきましたが、それでも「食べられるかも」と、出発前日には遺書をしたためたといいます。
井上さんは言います。「正直に言って、危険性をゼロにすることは出来ません。対策を怠らないで、リスクを減らしていくことに尽きます」。そのために、実地訓練も欠かせません。約30㎏の荷物を背負っての歩行、ロープでの川渡り、雪山登山、釣り……。体にムチを打ち、必要となる技術を鍛えていきました。
現地の入域許可を取り、企業から装備類のサポートも得て、計画が固まったのは6月になってから。次の課題は「資金集め」です。
旅費は1人約50万円。個人と部、OBの協力だけでは限界がありました。そこで目を付けたのが、クラウドファンディング。
これまで、部外から資金を募った例はほとんどありませんでした。しかし、「一般に知ってもらうチャンス」と、ウェブサイトを自作し、お返しのオリジナルポストカードやエコバックを用意。SNSでの発信に力を入れ、ラジオにも出演して支援を呼びかけました。
その結果、1カ月半ほどで約60万円が集まり、資金のメドもつきました。
洞窟や雪山探検、東京23区完全歩行などを経験してきた井上さんでしたが、今回は、ゼロから探検を作っていく難しさを痛感したと言います。
最初は、ツアー会社を利用することも考えました。しかし、金額が高い上、海外渡航が厳しい時代に地力で探検を作り上げた猛者のOBたちから激励を受け、手探りで「手作り」を目指すことに。ツイッターなどをきっかけに、芋づる式に現地に詳しい人たちとつながり、活路を見いだしていきました。
とはいえ、「入国出来るのか」「ヘリは飛ぶのか」「食料は大丈夫か」と、不安の種は尽きませんでした。一時、計画が白紙になりかけたことも。しかし、企業の支援や一般からの寄付も受け、後戻りは出来ません。
「隊長は揺らいではいけない。実行出来ると信じて走り続けないと」。自身の責任の重さと格闘しながら準備を進めたと言います。
「探検は自己完結することが多い。でも、クラウドファンディングのように色んな人を巻き込んで応援や共感を得るには、『何のためにやるか』『どんな意味があるか』を言葉にしないといけない。その大切さを実感しました」
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