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中国で「キラキラネーム」の進化が止まらない 最高裁が却下した名前

スイカ祭で巨大スイカに手を触れる子ども=中国・北京、ロイター ※記事と写真は関係ありません
スイカ祭で巨大スイカに手を触れる子ども=中国・北京、ロイター ※記事と写真は関係ありません

目次

 自分の子どもに、一般的はない読み方の名前をつける、いわゆる「キラキラネーム」は、中国でも生まれています。最近では人気オンラインゲームのタイトルが、そのまま女の子の名前になりました。一方、個性的な名前を求めるあまり最高裁で却下されるものも。いったい、どんな進化を遂げているのでしょうか?

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名字と合わせる

 中国のキラキラネームの特徴は、名字と名前が合体することで、特定の意味を持たせるところにあります。

 例えば「韋」という名字。親が「多利亜」という名前を付けると「韋多利亜=ビクトリア」になります。同じ「多利亜」ちゃんでも、「王」や「李」が名字だったら、その効果はありません。

 「光燦爛」は、「さんさんと輝く」という意味で、名前自体、キラキラしていますが、これが「楊」という名字と合わさると「楊光燦爛=太陽がさんさん」となります。徐さんに「栩如生」を付けると、語呂合わせで「栩栩如生」(生き生きしている)になり、キラキラネームになります。

サッカーボールを使った朝の運動をする子どもたち=中国・浙江省 ※写真はイメージです
サッカーボールを使った朝の運動をする子どもたち=中国・浙江省 ※写真はイメージです 出典: ロイター

個性を大事にする世代

 中国では一人っ子政策が実質的に廃止され、第2子が多く生まれるようになっています。

 現在の子育て世代である20代は「90後」(1990年以降生まれ世代)と言われ、親が個性を大事にした子育てをしてきた世代と言われています。そのため、自分の子どもに個性的な名前をつけようとする傾向が強くなっているようです。

 特徴的なキラキラネームは、父親と母親の両方の姓を入れるパターンです。

 例えば、夫が張で、妻は林の場合、普通につけると子どもは「張林科」になります。ところが、占いで水にちなんだ文字が縁起がいいと言われると、「張林澤科」となり、キラキラネームになります。

 そのほか、親の名字を一つ取って、格好いい名前を付けるケースもあります。例えば「張宇浩天(親の姓は張、名前は「宇宙と天が広大である」という意味)」「陸焰之瞳(親の姓は陸、名前の意味は漢字そのまま「ほのおの瞳」になる)」「倪羅飄雪(親の姓は倪、名前の意味は「シルクの高級服と雪が舞う」)」など、ロマンチックな名前になることになります。

伝統的な衣装を着る子どもたち=中国・江蘇省南通市 ※写真はイメージです
伝統的な衣装を着る子どもたち=中国・江蘇省南通市 ※写真はイメージです 出典: ロイター

鉄板は王子や姫

 固有名詞を付ける人も増えています。例えば、「唐詩」「宋詞」も名前になります。日本語では漢詩という意味になり、キラキラしてきます。

 また「藍天(青い空)」「白雲」などの名前も人気です。また「白富美(肌が白く美しい女性)」「高富帥(背が高く格好いい人)」のような対になっている言葉も、名前になると、キラキラ度が高いです。

 そのほか、王子、姫など王族の名前もあります。過去に話題になった名前では「王子殿下」「王子拼拼(王子がんばれ!)」「○○女王」「白雪公主(白雪姫)」などがありました。

屋根のない校庭で試験を受ける子どもたち=中国・陝西省 ※写真はイメージです
屋根のない校庭で試験を受ける子どもたち=中国・陝西省 ※写真はイメージです 出典: ロイター

とうとう出たゲームの名前

 最近中国で話題のオンラインゲーム「王者栄耀」は、プレーヤーが2億人もいると言われ、女性に人気です。

 ゲーム「王者栄耀」の開発会社は中国最大のメッセージアプリWeChat(微信)を運営するテンセントで、2015年にリリースされ、120億元(約2兆円)の売り上げを記録したと言われています。

 そして、ついに2017年、ゲームのファンである父親が「王者栄耀」を娘に付けたことで、話題になりました。戸籍登録の写真までネット上で公開されています。

幼稚園の卒園式でおどける子どもたち=中国・河南省 ※写真はイメージです
幼稚園の卒園式でおどける子どもたち=中国・河南省 ※写真はイメージです 出典: ロイター

5年の審理を経て却下

 キラキラネームは「不思議な名前」として受け止められていますが、これまで報じられたものは、実際に戸籍に登録されています。一方、度が過ぎたとして、裁判になったものもあります。

 2009年、山東省で「北雁雲依」という名前を娘に付けようとしました。「北雁雲依」は「秋に北から飛んできた雁が雲と一緒にいる」という意味で、親は「漢詩」から取った美しい名前だと説明しています。

 しかし、「北雁雲依」には、両親、どちらの名字の漢字も入っていません。つまり、名字まで変えて登録しようとしたのです。

 父親の呂さんは、親の名字を必ず使う法律がないことを理由に、地元の登録を拒否した公安局派出所を訴えました。

  5年間の審理の後、さらに全国人民代表大会でも議論され、2015年4月、最高裁が父親の呂さんの上訴を却下します。「北雁」という名字を新しく作ることなどは「公序良俗」に違反しているとして、「北雁雲依」を名前として認めませんでした。

 最近は、このケースが命名に関する「モデルケース」として再度公表され、命名権と含め、キラキラネーム関連の一つの判例になりました。

床屋で泣き出す子ども=中国・安徽省 ※写真はイメージです
床屋で泣き出す子ども=中国・安徽省 ※写真はイメージです 出典: ロイター

次は「魚香肉糸」「麻婆豆腐」か?

 「北雁雲依」の裁判を巡っては、ネット上では様々な議論が起きました。

【反対派】
・「王者栄耀もキラキラ過ぎるけど、少なくとも名字は『王』でした」
・「お父さんの名字が呂だったら、『呂氏春秋』にすれば問題ない」
・「ハンドルネームとしてはいいかもしれないが、一生で使う名前としては、やはりヘン」
・「北雁という名字は中華民族の名前に存在せず、みんなが気まぐれで名字を作るなら、社会が乱れてしまう」

【賛成派/同情派】
・「モンゴル族も名字がないけど」
・「古代の人が『勝手に』氏名を変更したおかげで、今の中国にはたくさんの名字がある」
・「日本でも近代になって村上、田中などの名字をたくさん作ったのに……」
・「『北雁』という名門を殺したかもしれません」

 中国では「魚」や「麻」という名字もあります。ネットでは「魚香肉糸(ユーシャンロース)」「麻婆豆腐」の名前も取りざたされているようです。

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