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「FF外から失礼します」その歴史 最初は「フォロ爆」今は批判系
「FF外から失礼します」という言葉を、この1~2年でよく見るようになりました。「FF外=相互フォロー関係ではない」という意味で、礼儀として使う人がいれば、「いやいやツイッターってFF外と絡むものでしょ」という人もいます。そもそもこの言葉がどう使われてきたのか。歴史を調べてみました。(朝日新聞東京社会部記者・原田朱美)
「FF外から失礼します」の、現存する最古の投稿は、2012年10月30日午前11時42分。いまから5年前です。
米クリムゾンヘキサゴン社のSNS分析ツール「ForSight(フォーサイト)」で、2010年7月以降に「FF外から失礼します」を含む投稿がどれだけあったのか、調べました。
@kanenomouzya ff外から失礼します。この比較はつまり何がいいたいのですか?
— みろ与 (@3ron_3ron) 2012年10月30日
2012年11月は2件、12月は9件。
2013年に入って、急に投稿数が増えます。
2013年末は約8000件。この頃の投稿の多くは、まるでコピペしたように「FF外から失礼します。相互フォロ爆しませんか?」という内容でした。
「フォロ爆」とは、「フォローバック」。「フォロ爆しませんか」は、お互いに相手をフォローすることで、フォロワーの数を増やすことに協力してください、というお願いです。
「FF外」の黎明期は、フォロワーを増やしたくて、いろんなユーザーに声をかける用途だったようです。
とはいえ、最初に投稿があった2012年から5年間の「FF外から失礼します」の投稿数推移を見ると、2013年ごろはまだ微々たるものです。2015年あたりから、ぐぐっと数が増え、1カ月の投稿数が5万件を超えます。
2015年8月には、「ファイナルファンタジー(FF)外伝」に引っかけたネタ投稿も登場します。
<「FF外から失礼します」とは、「ファイナルファンタジー外伝 聖剣伝説から失礼します」という意味であり、つまるところ別世界の住人なので話が通じないことが多い。>
2万2千回以上もリツイートされています。「FF外」という言葉が広がってきたからこそウケたネタでしょう。
2016年2月にもファイナルファンタジーに引っかけたネタが約7万回リツイートされています。
「FF外から失礼します」とは、「ファイナルファンタジー外伝 聖剣伝説から失礼します」という意味であり、つまるところ別世界の住人なので話が通じないことが多い。
— 水沢清流は獣の爪牙 (@Mizsawa) 2015年8月26日
投稿数で、特に伸びが大きいのはこの1~2年です。
ピークは今年の夏。ネタになるだけでなく、「FF外から失礼します」という言葉への疑問も、投稿数を押し上げたようです。
<ツイッター始めてもう8年くらいになるけど、始めたばかりの頃は「FF外から失礼します」なんていう文化なくて、むしろツイッターの性質上外から失礼されるのが当たり前だと思うんだけど、いちいちそれを言わないと無礼、失礼、マナーがなってないってことになるって日本人どんだけ心狭いの>
今年8月のこの投稿には、約5万4千件の「いいね」がついています。
最近Twitterのマナーで色々話題になりましたが個人的に理解できないTwitter文化。
— DJ LOVE_SEKAINOOWARI (@DJLOVE_SNO) 2017年9月20日
・FF外から失礼します。
・○○垢
・無断転載禁止、二次使用禁止
・無言フォロー禁止
・巻き込みリプ止めてくださいっていうリプ
この辺わけわからん。#理解できないTwitter文化
9月21日には「SEKAI NO OWARI」のメンバーも、「理解できないTwitter文化」として「FF外から失礼します」を挙げています。
<最近Twitterのマナーで色々話題になりましたが個人的に理解できないTwitter文化。
・FF外から失礼します。
・○○垢
・無断転載禁止、二次使用禁止
・無言フォロー禁止
・巻き込みリプ止めてくださいっていうリプ
この辺わけわからん。
#理解できないTwitter文化>
「とにかくフォロワーを増やしたい」という一部の層で使われていた言葉が、ネタになったりなんだりで、ジワジワと広まった結果、ツイッターのメインストリートにも登場し、ついには議論を起こすほど知られるようになった、という歩みでしょうか。
ちなみに、今、ネタや批判以外で「FF外から失礼します」を使うのは、どんな人たちでしょうか。
SNS分析ツール「ForSight」は、「FF外から失礼します」と一緒に投稿されていることが多い言葉(頻出単語)も分析してくれます。
多かったのは、「よろしく/希望/いただく」といった、相手にお願いをする際に使う言葉と、「画像/チケット/交換」といった具体的にお願いする内容でした。ゲーム関連と思われる言葉もチラホラ。
「FF外から失礼します」を「使う派」だという高校生や大学生に話を聞くと、たしかにこの一文を使う場面は、
「好きなアニメキャラのイラストがほしい時」
「好きなアーティストのライブチケットが当たった人に同行をお願いする時」
「好きなタレントのグッズを交換してもらいたい時」
と、「どうしても手に入れたいものがある時」が多かったです。
ある女子高校生は「『FF外から失礼します』というのは、要は初対面の人に対する礼儀。礼儀がある態度なら、どんな言葉でもいい」と言います。
また、ある女子大学生は「相手がどんな人かわからないツイッターでの交渉は、トラブルがつきもの。警戒して『FF外から失礼します』と書かない人はダメというユーザーの気持ちも理解できる」と話します。
10~20代のツイッターの使い方は、友人との会話や趣味のつながりなどが主で、閉鎖的なことが多いです。
記者が周囲の高校生・大学生約50人に聞いたところ、半数近くが「FF外から失礼します」を使わないどころか、「そもそもFF外とやりとりをしない」とこたえました。
「FF外から失礼します」は、公開されたツイッター上に広がる閉鎖的なコミュニティという、ねじれた世界の象徴なのかもしれません。
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