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「入手不可能」と言われた文枝師匠のコケる椅子、ベトナムで再現
日曜のお昼すぎに放送されている長寿番組「新婚さんいらっしゃい!」。名物の桂文枝さんが椅子からコケるシーンは、たまたま採用された転びやすい椅子から生まれました。約40年同じ物が使われ「入手不可能」と言われている、この椅子。遠く離れたベトナムで再現されていることがわかりました。ベトナム版「新婚さんいらっしゃい!」では、司会の男性が見事なコケっぷりを披露しています。ベトナムの「椅子コケ」を支えているのは、本家にはない黒い3つの「イボ」でした。
制作している朝日放送によると、ベトナムのリメイク版は2013年に放送が始まりました。クォック・トアンさんとホン・ヴァンさんが司会を務めています。
2013年2月、ベトナムの制作会社が朝日放送へ初めて視察に訪れ、半年後の8月にはそっくりのスタジオでオンエアが始まりました。
本家「新婚さんいらっしゃい!」の美術を20年以上担当している朝日放送美術部の佐々文章さんが、初めてベトナム版のスタジオを見たのは2014年のことでした。
スタジオがほぼ再現されていて「衝撃をうけました」。文枝さんの椅子についても「師匠の椅子は曲線のフォルムで採寸しようがない。ほぼ再現していて、よう作ったなと驚きました」。
というのもコケる椅子は文枝さん専用で、海外収録の時も文枝さんの椅子だけ空輸しています。
大阪万博が開かれた1970年代ごろの流行した曲線のデザインで「たまたま使い続けているだけでしたが、今となっては替えようがない」と佐々さん。
「最初は古くさいから現代的なおしゃれな椅子に替えたろうと思ってましたが、条件を満たすものがありませんでした。今でも家具はなんとなくその目線で見ています」
佐々さんが長年見つけられなかった椅子が、ベトナムにあるのですから驚きは相当なものです。
ベトナム制作者の朝日放送視察では、美術担当者同士の話し合いはありませんでした。「スタジオは図面と写真でほぼ再現しています。椅子についてやり取りした記憶はないのですが、写真を撮っていたんでしょうね」
触ってみるとベトナム版の椅子は日本のものより「やわらかい感じ」がしたそうです。
実際に座ってみると本家にはないぐらつきが。なぜグラグラするのかと裏向けてみると、椅子の底に3つの黒いイボがありました。これがこけやすい秘密だったようです。
「あざとさが見えるのでイボは邪道ですね」と佐々さん。文枝さんの椅子は「仕込みはありません」。
それでも美術担当者として「苦労したと思う。見えないところの努力は絶対している。それがわかるだけに情熱を感じます」。
「派手派手しさではなく、幸せな新婚夫婦の情景を大切に」美術制作を心がけているという佐々さん。
文枝さんの椅子はメンテナンスしながら今後も使い続ける予定ですが「2020年代を託せる理想の椅子が見つかったら、ひょっとしたら」と理想の椅子探しは続いています。
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