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防衛費って何?アメリカから兵器を買い続ける理由「4881億円」の内訳

「日本が(米国から)膨大な量の兵器を買うことだ」。日米の兵器のやり取りを超解説すると…
「日本が(米国から)膨大な量の兵器を買うことだ」。日米の兵器のやり取りを超解説すると…

目次

 「非常に重要なのは、日本が(米国から)膨大な量の兵器を買うことだ。そうすべきだ。我々は世界最高の兵器をつくっている」。11月に来日したトランプ米大統領の口から飛び出した、突然の「兵器売り込み」発言。日本が米国から主要な防衛装備品を輸入する背景には、どんな理由があるのでしょうか。超解説します。(朝日新聞政治部防衛省担当記者・相原亮)

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「FMS」という方式

 自衛隊が保有する最新鋭の防衛装備品は、多くが製造を米国に頼っています。米国には巨大な軍事産業があり、その技術は世界随一。一方、日本の防衛産業は規模が小さく、国内開発には限界があります。

 米国から防衛装備品を導入する場合、実は一般的な「購入」という形ではなく、有償の対外軍事援助「FMS」という方式をとります。軍事技術の流出を防ぐため、日米両政府間で取引するもので、日本政府が代金を前払いし、防衛装備品の導入とあわせて技術支援も米政府から提供してもらいます。

 安倍晋三首相は11月29日の国会で「(軍事機密性の高い装備品は)買いたいと言って買えるものではない。FMSの仕組みによって、米国しか製造できない最新鋭の防衛装備品を調達できる。我が国の防衛力を強化するために非常に重要だ」と説明しました。

 今後、日本がFMSで米政府から取得する主な防衛装備品を見てみましょう。

一般の購入とは違う有償の対外軍事援助「FMS」
一般の購入とは違う有償の対外軍事援助「FMS」

オスプレイは1機「114億円」

 まずは戦闘機「F35」。ロッキード・マーティン社製の最新鋭ステルス戦闘機で、相手のレーダーに映りにくいうえ、高度な電子戦能力もあわせ持ちます。

 米空軍も使用する通常タイプの「A」型、垂直離着陸が可能な「B」型、艦載機型の「C」型の3種類があり、航空自衛隊が導入するのは「A」型。計42機の配備が決まっており、1機あたりの単価は147億円に上ります。

 そして対空型無人機「グローバルホーク」。画像や電波情報の収集などを任務とする無人偵察機で、ノースロップ・グラマン社製。3機を導入します。1機あたりの単価は189億円。

 そして、陸上自衛隊はベル・ボーイング社製の輸送機「V22オスプレイ」。これはヘリコプターと飛行機の両方の機能があり、従来の輸送ヘリよりスピードが速く、航続距離が長いのが特徴です。離着陸時はヘリのようにプロペラを上に向け、飛行する際は飛行機のようにプロペラを前方に向ける形状をしています。1機あたりの単価は114億円。計17機を配備する予定です。

 この「日の丸オスプレイ」について、陸上自衛隊は離島が他国に侵攻された際に奪還作戦に当たる部隊を運ぶ際に使うことを想定しています。佐賀空港に配備したい考えですが、米軍のオスプレイがたびたび事故を起こしていることなどから、地元から反対の声が上がり、代替地を含めた配備先の検討を進めています。

1機「114億円」するオスプレイ
1機「114億円」するオスプレイ

1600億円「もっと上がる」兵器とは?

 さらに今後、FMSの目玉となるのは、ロッキード・マーティン社製の「イージス・アショア」。弾道ミサイルを大気圏外で撃ち落とす迎撃ミサイルを発射するシステムで、いわゆる「陸上配備型イージス」と呼ばれるものです。

 日本海側の国内2カ所に1基ずつ置く方針で、秋田市と山口県萩市にある陸上自衛隊演習場が候補地に挙がっています。防衛省の試算では、1基800億円、総額は1600億円。しかし詳細な費用はこれから米政府との間で詰めることになっており、防衛省幹部は「もっと金額が上がるのは確実」と話しています。

 こうしたFMSによる取得は近年増え続けています。2012年度は1372億円でしたが、昨年度は4881億円に。輸入に占める割合も53%から76%に上がりました。FMSは高度な技術を備える防衛装備品を早く取得できるメリットはありますが、防衛省関係者は「米国の『言い値』になることが多く、価格が不透明な点があるのは確かだ」と明かしています。

総額1600億円。「もっと金額が上がるのは確実」と言われる「イージス・アショア」
総額1600億円。「もっと金額が上がるのは確実」と言われる「イージス・アショア」

日本5兆円、中国28兆円

 装備品の米国依存を進める背景には、トランプ発言のような米国による求めのほか、周辺国の動きも影響しています。2016年度の日本の防衛予算が5兆円を突破したのに対し、中国は少なくとも28兆円に上ります。

 中国は近年「海洋強国」を掲げ、最新鋭戦闘機や国産空母などを投入して海洋進出を強めています。日本政府関係者は「中国を物量で上回るのは不可能だが、最新鋭の装備で対抗しないといずれ圧倒される」と警戒を強めています。

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