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2017年12月02日

現役ユーチューバーが語る、過激動画の落とし穴「負のループに…」

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約100万のチャンネル登録者がいるバイリンガール・吉田ちかさん

約100万のチャンネル登録者がいるバイリンガール・吉田ちかさん

 今や、小中学生のあこがれの職業にランクインされるようになったYouTuber(ユーチューバー)。「チャレンジ精神と興味本位に心を揺さぶられた」「再生回数を狙った不愉快なものが少なくない」。YouTubeを使いこなす中高生や大学生から届いた声について、約100万のチャンネル登録者がいるバイリンガール・吉田ちかさん(32)に答えてもらいました。

なりたい職業にランクイン

 小中学生にとって、ユーチューバーの影響力は絶大です。2017年にソニー生命が実施した調査で、男子中学生の将来なりたい職業3位に「ユーチューバーなどの動画投稿者」が入りました。

 朝日新聞が「ユーチューバー」をテーマに若い世代から投稿を募ったところ、中高生や大学生から400通を超える声が寄せられました。

 ユーチューバーは、狭義では投稿した動画再生回数によって広告収入などを得て生活している人を指しますが、投稿を読むと「YouTubeに投稿する人」と広義に捉えている人が大半でした。書かれていた内容も様々で「感想」「実用」「課題」と多彩です。

 そんなユーチューバーへの声を、現役ユーチューバーであるバイリンガール・吉田ちかさんにぶつけてみました。

「作って見てもらってフィードバック」

 まずは「感想」。京都府の女子中学生から。

「ユーチューバーは身近なアイドルだと思う。YouTubeを知ってから自分の人生が変わった気がする。テレビにない面白さがある。自分で撮影し、自分で編集した動画は、個性が出ていて見る人を楽しませる。そして一番の魅力はユーチューバーと視聴者が会ってふれ合えるところだ」

 ちかさんはこうコメントしてくれました。

 

ちかさん

「テレビのアイドルは視聴者に問いかけているよりもテレビの一部として企画が成り立つように演じていると思いますが、私たちは毎回、視聴者と話している感覚なので、反応を受けてコンテンツを作っています。作って見てもらってフィードバックしてもらって作るというループです。だから身近さを感じるのだと思います。そしてSNSを含めて自ら自由に発信しているので、間に多くの人がかかわるアイドルとは距離感が違うと思います。自分で考え出した企画の自由って大きいですよね。だから個性的なものが多いと思います」

「この人ができるんだったら私もできる」

 ユーチューバーと視聴者のリアルな距離感もアイドルと違うと言います。

 

ちかさん

「私も視聴者は友だちだと思って発信しているので、街中でも視聴者とお会いすることが多いのですが『ちかちゃーん』と友達のように声を掛けてくれる人が多くて、ユーチューバーと視聴者のリレーションシップはリアルにつながると感じます。彼女がファンイベントに行って感じたのもそれに近く、バーチャルな世界だけでなく、リアルな世界まで関係性は続いていくんだなと思います」

 神奈川県の女子高校生は、「暇な時間にふと見ると面白かった」「チャレンジ精神と興味本位に心を揺さぶられ、ついユーチューバー地獄におちいる」「作る方も見る方も笑顔になれる。今の時代には必要なものです」と言います。

 そんな意見について、ちかさんはこう考えています。

 

ちかさん

「チャレンジ精神は、テレビだと大勢がかかわるところでやっている一方、YouTubeは基本1人なのでより共感できるんですよね。この人ができるんだったら私もできるかな、とか。身近な人がやっていることで、見る側もインスパイアされるきっかけになるんじゃないかな」

「先生目線じゃない」

 ちかさんは小学1年生から大学卒業までアメリカで過ごしました。それを武器にしてコンテンツを作り、YouTubeにコンテンツをアップしています。視聴者の大半がスマホからのアクセスです。海外の人と会話を楽しめるようになりたいという東京都の女子大学生も、ちかさんのファンです。

「(ちかさんの動画は)単語の使い分けや会話で使えるフレーズなどを教えてくれます。教科書や参考書では知ることのできないちょっとした気になる疑問を解決してくれたり、実践的で役立つ表現を教えてくれたりします。動画を見ることで英語学習のモチベーションにつながっています」

 ちかさんは、どんな思いでコンテンツを作っているのでしょう?

 

ちかさん

「私のチャンネルを簡単に言うと『英語を教えているチャンネル』になりますが、教えている感覚は全くなく、『英語を話せる友だち』として私が知っていることや思いついたことをシェアしているので、先生目線じゃないのが面白く感じてもらえているのかな。レッスンの動画もありますが、洋楽をコスプレしながら解説したり、実際に海外に行った時のリアルな会話とかも多めに映像に出していたりするからだと思います。英語ってコミュニケーションのツールなので、誰かと話して初めて楽しく思うもの。だから、話している姿を見ることはすごく大事だと思う」

「英語ってコミュニケーションのツールなので、誰かと話して初めて楽しく思うもの。だから、話している姿を見ることはすごく大事だと思う」

「英語ってコミュニケーションのツールなので、誰かと話して初めて楽しく思うもの。だから、話している姿を見ることはすごく大事だと思う」

「英語で検索するのは大きい」

 YouTubeの中から、実用的なコンテンツを探し出したり、使いこなしたりするポイントは何なのか? ちかさんも、英語で検索してコンテンツを探すメリットは大きいと言います。

 

ちかさん

「英語で検索するのは大きいと思います。日本のコンテンツはすごく限られています。テーマもそうですし、英語圏は日本より早くYouTubeをやっている人が多いので、バラエティーも豊富です。感覚的に、日本では若い子たちによる、やってみる系が多いんですけども、英語圏のユーチューバーは、専門知識を持つ大人が、ハウツー系として、料理、インテリアのデコレーション、それこそお父さんがイケアのベッドのアレンジの仕方などを教えるなど実用的なコンテンツも出している。動画のいいところは見て分かる情報が多いので、英語が分からなくても映像で学べる部分が多いと思います。たぶん英語で検索する人が日本人は少ないんじゃないかな」

 YouTubeは視聴者側のスタンスもテレビなどとは異なるとか?

 

ちかさん

「実は見る側にも責任があると思います。何でも『参考までに』という感覚は重要です。YouTubeは個人体験が多いので、真に受けないで参考程度にすることがとても大事。テレビだとチェックする機能もあるし、色々な人がかかわっている。YouTubeは面白い分、その人の経験だったり、体験だったりするので、あくまでも参考までに」

日本語のコンテンツ「クオリティーの幅は狭い」

 日本語のコンテンツの現状を尋ねると、厳しい意見が飛び出しました。

 

ちかさん

「YouTube歴が英語圏に比べると短い分、クオリティーの幅は狭いように感じます。一番気づくのが、外に出て発信するのではなく、みんな部屋から発信している。年齢層も限られている。学生や若い子が発信する場とイメージがついちゃっています。だからテーマも狭くなってしまう。例えば、美容の動画でも、商品を部屋の中で紹介するだけではなく、映像の美しさや演出など、クオリティーが高く『作品』と呼べる動画が英語圏には多くあります。私も海外の動画と肩を並べられるよう、クオリティーを上げていきたいと考えています」

 ユーチューバーも、アメリカと日本では大きく違うといいます。

 

ちかさん

「日本はインフルエンサー的なユーチューバーがほとんどで、クリエーター的なユーチューバーはまだ少ない気がします。視聴者と近いところで共感できる存在として発信できる人であって、作品を作る人という感じじゃないと思います」

「過激なことをやると、負のループに」

 一定のルールに従えば、誰でも投稿できるYouTubeを見ている人たちからも、注意しなくてはいけない点が挙がっています。埼玉県の男子大学生は、再生回数の多さを目指すあまり、一部の人に不快感を与えてしまう動画があることが気になるそうです。

「視聴数を得るために動画の内容が過激になり、特定の人からすれば不愉快なものになってしまう場合もあります。再生回数の中の大きな数に埋もれて見えない少数の人が不愉快な思いをしないようにユーチューバーのみなさんには気をつけて動画を作成して、視聴者を楽しませて欲しいと思っています」

 ちかさんが気をつけていることは何か、聞いてみました。

 

ちかさん

「どこまで再生回数を増やすためにやるのか? 人それぞれのモラルによると思います。ただ、過激なことをやると、次はそれ以上のことをやらないといけないっていう負のループになるので、私だったらそれに耐えられないなと思います。自分が何か伝えたいことがあるのかというコアがないと再生回数だけにに走ってしまうと思います」

「過激なことをやると、次はそれ以上のことをやらないといけないっていう負のループになるので、私だったらそれに耐えられないなと思います」

「過激なことをやると、次はそれ以上のことをやらないといけないっていう負のループになるので、私だったらそれに耐えられないなと思います」

不適切なものには「フラグ機能を」

 神奈川県の男性は、YouTubeでよく動画を見る中で、関連動画として表示される中に、障害者や高齢者を侮辱したようなタイトルの動画が気になるそうです。

「ネットは匿名性があるので過激な行動や考えが生まれてしまうかもしれませんが、高齢者や障害者の気持ちも考えてネットを使って欲しいです」

 ちかさんは、発信する人の意思表示は難しいと言います。

 

ちかさん

「ネットが出る前は、自分の輪の中の人としか話す機会がなかったので、同じような感覚の人が集まっていましたが、今はネットで色々な人の意見や考えも知ることができます。そのため、自分には考えられないこともたくさん出てくるんですよね。私の動画のコメントでも、たまにこんなこと思う人がいるんだとか、こんなこと言ってくるんだとか、かなり驚きのコメントもあります。相手の気持ちを考えてネットを使うのがベストですが、他人のアクションはなかなかコントロールできません」

 だから視聴者もYouTubeの機能を使ってコントロールをしていくことを勧めています。

 

ちかさん

「YouTubeには、フラグという機能があります。動画が不適切な場合にYouTubeに報告できる機能で、見ている側もそういう仕組みを活用して自分の意見を反映することが出来ます。日本はマジョリティー(多数派)の声が静かすぎると思います。アメリカや海外では『これは駄目だよ!』という声も大きいので、不謹慎なコメントに対してアクションを起こす人も多いです。そうなれば、ネットがもう少し居心地のいい場所になると思います」

ちかさんからのメッセージ

《YouTubeを使いこなす中高生、大学生へ》

 私はYouTubeで英語をテーマに楽しんでもらうコンテンツを作っていますけれど、YouTubeという場所はきっかけ作りの場所だと思うんですよ。共感して私もやってみたいとか、いいなというインスピレーションを受ける場だったり、やる気が出る場だったり。それを感じて、一歩踏み出してくれたらうれしいです。

 一つ実用的な話をすると、YouTubeの機能って知られていないものが多く、字幕の機能もスマホやパソコンの設定で文字の色を変えられたり、スロー再生できたりします。パソコンで視聴すると画面の字幕だけでなく、横に見やすく表示させる機能もある。勉強で使う人は機能を知ることで使いやすさが変わって、より使いこなせるようになると思います。
 

《ユーチューバーに憧れ、目指す若い人たちへ》

 憧れは人を成長させてくれるものだと思うので、それをきっかけに新しいことに挑戦してみることは、すてきなことだと思います。私は元々コンサルティング会社に勤めていて180度違う仕事をしていたのですが、新しいことにトライしてみたいという気持ちからYouTubeを始め、そして会社を辞める決断をし動画制作一本に絞りました。自分にとって良い決断だったと思っています。

 もちろん、大変なこともたくさんありますよ!一見ただただ楽しそうに見えると思いますが、多くの人の目に触れるということには責任もリスクもありますし、自分で一つ一つ判断していかないといけません。でも、自分自身でやってみないと気づけないことがたくさんあると思うので、少しでも興味があるのであればモラルとマナーを意識しながら一歩踏み出してみてください!新しいことにチャレンジすることは自分の発見、成長にもつながります!

大手コンサルティング会社を経てユーチューバーになったバイリンガール・吉田ちかさん

大手コンサルティング会社を経てユーチューバーになったバイリンガール・吉田ちかさん

バイリンガール・吉田ちか 小学1年生から大学卒業までをシアトルで過ごす。大手コンサルティング会社を経て2011年よりYouTubeにて英語学習コンテンツ「バイリンガール英会話」を開始。2016年、国連とYouTubeの共同プログラムによる「Change Ambassador」にも就任。チャンネル登録者数約100万人、再生回数は2億回に及ぶ。吉田正樹事務所所属。

     ◇

 朝日新聞の投稿欄「声」では、みなさんの投稿を募集しています。テーマは自由。身近な経験や問題、社会現象など多様なテーマ、多様な声を新聞とデジタル版の記事でご紹介します。投稿はメール(tokyo-koe@asahi.comメールする)で550字以内。原則実名です。住所、氏名、年齢、性別、職業、電話番号を明記してください。


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