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家系ラーメンは風邪に効く?フェイクニュース警戒すべき「8タイプ」
フェイクニュースなどネット上の誤った情報には、どんな「落とし穴」があるのか? 大学生に「だまされやすい」ニュースを挙げてもらったところ、いくつかの傾向が見えてきました。「ステレオタイプなイメージのある政治家や有名人」「確かめることが難しい健康情報」「身近なiPhoneネタ」など。八つのカテゴリーにわけて考えてみました。
一緒に取り組んだのは明治大学情報コミュニケーション学部の清原聖子准教授のゼミです。ゼミではメディアやインターネットを切り口に日米を比較した政治の研究などに取り組んでいます。
アメリカ大統領選や日本の衆院選でも、誤った情報がネット上で拡散したことから、日本でのフェイクニュースの広がり方をゼミのメンバーと考えました。
学生に「だまされやすそうな」ニュースを挙げてもらったところ、いくつかの特徴が見えてきました。学生が感じた「要注意」ポイントを整理することで、似たようなテーマのニュースに対して、一度、警戒して読むことができそうです。
食品の異物混入系ではツイッターなどに写真が「証拠」として投稿されるため、信用度が増した形で拡散していきます。
健康被害に結びつく可能性があるので、善意で呼びかける動きも重なります。
検証するには、当事者として名前が出ている企業の公式サイトや、消費者庁など関係省庁の公式サイトでも同じような告知が出ているか確かめる必要があります。
しかし、学生の一人は「多くの人は、そこまでの労力をかけないので、結果的に拡散してしまうのでは」と話します。
著名人の不祥事は、不倫報道などが事実かどうかわからないまま、広まる事例が挙げられました。
ワイドショーなどで、芸能人が別の芸能人についてコメントする場面では「タレントがニュースについてコメントするより、芸能界について話す内容は説得力があるので信じてしまいがち」との声が出ました。
過去に問題を起こした企業については、事実かどうかわからないまま、同様の問題が再発したかのような情報が流れやすいようです。
値段の安さが人気のファストフードチェーンでは、たびたび、不適切な原料が使われているとの記事が流れています。
健康問題につながるため、注意喚起をする気持ちから、シェアをしたことがあると答えた学生もいました。
一方で、実際に健康被害にあった事例は明らかにされないことが多いため、日常生活では、チェーン店を利用する人も少なくありませんでした。
「結局、便利なので使ってしまう」「大企業なので、ネームバリューがあるから」という声も。
すでに日常に溶け込んでいるサービスの場合、ネットでの風評と、実際の行動には差があるようです。
ステレオタイプの人物として挙げられたのがトランプ大統領です。
政治経験が浅く差別的、言葉遣いが過激、などのイメージに沿った内容だと、誤った情報でも拡散しやすいことが、報告されました。
学生の1人は、韓国訪問時に、ホテルに泊まらず、専用機に宿泊したという情報について取り上げました。証拠として使われた画像は、韓国訪問時とは別の日時にトランプ大統領のフェイスブックに投稿されたものでした。トランプ大統領のこれまでの言動から「しかねない」と思われ、情報が拡散したようです。
「画像検索で調べれば、すぐにわかるけど、そこまでせずにシェアをしてしまいそう」
ステレオタイプの国についても、フェイクニュースが生まれやすいことが指摘されました。
その一つが北朝鮮です。ゼミでは、平壌の衛星写真に写っていたマンションが取り上げられました。パレード用の「張りぼて」と指摘された建物が、実は、普通のマンションと同じ作りである可能性が高いことが指摘されました。
ミサイル問題で国際社会と緊張関係にあること、経済制裁によって財政が厳しいこと、独裁的な政治体制であることなどが重なり、「張りぼて」という情報が拡散したようです。
ネット上で過激な意見が出やすい中国や韓国についての情報も、真偽不明のものが拡散する傾向にあることが指摘されました。
ワイドショーなどでニュースが多く取り上げられるようになり、タレントの影響力が強まっている状況も報告されました。
タレントの発言が広まる理由について学生の一人は「世間的に言いにくいことを言葉にする。強い表現を使うので、インパクトがある」と分析しました。
また、発信元の注意点として、タレント本人がツイッターなどで直接、発信したものなのか、テレビの発言をキュレーションサイトやニュースサイトがまとめて記事にしているか、確かめるべきだとの意見も出ました。
タレントの発言で広まりやすいのは「誰かをたたく内容が多い」との声も。
学生の一人は「番組で紹介されるニュースは、タレント本人が取材したり調べたりしたものではないはず。それでも、タレントの発言として、誤った情報が拡散されてしまう状況があると思う」と話しました。
生活保護の受給者のような社会的弱者や、LGBTのようなマイノリティーについての情報も、偏りが出やすいことが指摘されました。
学生の一人が挙げたのが、生活保護で受け取れる受給額についての情報についてです。あるブログでは支給額が「17万円」という金額を巡って、高すぎるのではないかという主張がされていました。
学生は「どういう条件なら、いくらもらえるのかがわからないまま、17万円という金額が一人歩きしていた。高いのか、安いのか、根拠があいまいで、書き手の体験談を元に批判していた」と話します。
原因として、情報が少ないことから生まれる誤解もあるようです。
「制度について知らないことが多く、調べようとしても、正しい情報に行き着くのが難しい」
トランプ大統領がトランスジェンダーの軍入隊を認めない発言をしたことも、挙げられました。
「医療コスト」を理由とした発言に対し、トランスジェンダーが入隊することによる経費は、それほどかからないという反論もありました。
自分事として心配しやすい健康情報についても、不確かな情報が出回る危険があることが指摘されました。
学生が挙げたのが「ラーメンが風邪にきく」という情報です。
濃厚な豚骨スープを使った家系というラーメンが、風邪の症状に効果があるという情報が出回りました。
学生は「栄養はありそうなので、思わずシェアをしたくなる」と話します。
医学的な根拠はあいまいなままでしたが「検証しようがないし、フェイクじゃないような気もした」と受け止め、シェアをしてしまったそうです。
ジカ熱、デング熱やヒアリなど、国内外で騒動になる伝染病などの健康に関する情報も、臆測が混じった形で広まりやすくなります。
「政治の話より身近で、誰かに広めなきゃ、と思いがち」である一方、「WHO(世界保健機関)や厚労省などで調べるほどのことはしない」人がほとんどなため、真偽不明のまま情報が出回るようです。
音楽やドラマなど関心が多様化している時代、iPhoneのニュースは「誰もが気になる」数少ない情報だと言えます。そのため、真偽不明の情報も広まりやすくなります。
基本ソフト(OS)を更新するとバッテリーの性能が落ちるという情報。アプリの設定が原因との反論もありましたが、スマートフォンの性能に直結するだけに「思わずシェアをした」と学生は振り返ります。
新型のiPhone出荷を巡っては、生産台数を増やすため意図的に性能を落としたというニュースが拡散する一方、アップル側の反論はそれほど広まらなかった形跡があることも指摘されました。
新製品の情報が出るたびに、CGで加工された縦に長いだけの端末の画像が、ジョークとして拡散されることも報告されました。
清原准教授は八つのカテゴリーについて「これまでに定着したイメージの影響」「情報量が少なくて事実確認が難しいもの」「発信者の特徴」の三つに大別できると指摘します。
「これまでに定着したイメージの影響」に当たるのは以下の項目です。
(2)過去に問題を起こした企業や人物系
(3)ステレオタイプの人物系
(4)ステレオタイプの国系
「情報量が少ないもの」に当たるのは以下の項目です。
(1)異物混入や「不祥事」系
(6)マイノリティーに対する批判系
(7)健康情報系
(8)iPhone系
「発信者の特徴」に当たるのは以下の項目です。
(5)ニュースについて発言するタレント系
ゼミでの議論を踏まえ、学生の受け止め方として、実際にシェアなどの行動に出たかは慎重に考える必要があると見ています。
「最初に予想していたよりも、大学生はSNSで簡単に拡散しないのではないか、という印象を受けています。ただ、健康情報のように身近な話題になると、情報量が少なくて真偽を判断しにくくても善意から拡散するということが考えられます」
学生がフェイクニュースにだまされないためには何が必要か。対策として清原准教授は、以下の行動を挙げます。
【1】最初に目についた情報をうのみにしない
【2】信頼できるソースなのか、誰が情報発信源なのか意識する
【3】一手間かけてその情報の周辺を検索する
【4】自分で真偽を確かめる
一方、注意が必要な点として清原准教授が指摘するは「ニュースについて発言するタレント系」です。
「議論の中で、学生はワイドショーで取り上げられるニュースも、報道番組で取り上げるられるニュースも、区別なく信頼して受け取ってる傾向があることがわかりました。どちらも、テレビ局が発信する情報だけに、ネット上の怪しい情報を見分ける対策とは別の取り組みが必要になるでしょう」
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