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最大40個!ツイッターのサブアカいくつある? 若者の意外な使い方
ツイッターのアカウントって、いくつ持っていますか? 10~20代の若者に取材をしていると、リアルな友だちがフォロワーのメインアカウント(本アカ、リアアカ)とは別に、サブアカウント(サブアカ)を複数もっているという話をよく聞きます。何個くらいもっているのか、どう使い分けているのか。気になるので調べてみました。(朝日新聞東京社会部記者・原田朱美)
調査に応じてくれたのは、10~20代の約90人。
首都圏の大学生が中心です。
ちなみに、「複数のアカウントを使い分ける」と言うと、上の世代の方々は「イマドキの若者は複数の人格を使い分けるのか」と、気味悪く受け取ってしまいがちです。
でもそれって、大いなる誤解です。
例えば、おじさんが家、会社、飲み屋、同窓会で少しずつ話す内容を変えるのと同じことなのです。それぞれの場所がアカウントにあたると思えば、わかりやすいでしょうか。
まず、若者たちには本アカを除き、サブアカをいくつもっているのか、聞きました。
1~2個が最も多く、過半数以上でした。ただ、4個、5個という人も少なくなく、最高で「40個以上もっている友だちがいる」(大学2年 男性)という声も。ただ、「40個をどう使い分けているのかは謎」だそうです。
サブアカをもっていないと答えたのは1割程度。厳密な調査ではありませんので、若者全般の傾向とは言えませんが、やはりサブアカを持つのはスタンダードなようです。
では、そのサブアカを、どう使い分けているのでしょう。
最も多かったのは、趣味。
好きなバンド、好きなアニメ、好きなスポーツの話を思う存分楽しむために、同じ趣味の人たちとつながるというのは、とても分かりやすいです。好きな人同士にしかわからない会話もありますし。
「知らない人とやりとりをしているところを本アカのフォロワー(大学などのリアルな友だち)に見られたくない」という声もありました。
次に多かったのが、愚痴。
例えば、飲み屋で会社では言えない愚痴をこぼすのはよくある光景ですが、若者の「愚痴アカ」はそれに近いです。本アカは、大学などリアルに関係がある人たちがフォロワーであることが多いので、愚痴を思う存分書き込むには、差し障りがあります。
愚痴アカは、公開範囲を限定して、鍵をかけます。愚痴アカウントの存在自体を周囲には秘密にしていることが多いようです。
素朴な疑問ですが、バレたくないなら、LINEのグループで話す方がいいのではないでしょうか。これには、「LINEは既読が付いたら返信をしなくちゃならない。ツイッターはスルーするのもアリなので、返信プレッシャーがない」(大学1年 女性)
とのことでした。
ある女子大学生の秘密の愚痴アカを見せてもらいました。
フォロワーは親友2人だけ。周囲にバレないように、出身校などのプロフィールはすべて架空の経歴を並べています。カバー画像は男性っぽい戦隊モノ。「私の周りでは、ウソを書いてバレないようにするという手段が多い気がします」と、女子大学生は言います。
今の若者は、上の世代に比べて人間関係に繊細です。愚痴を書いていると知られることで周囲を気まずくしないように、慎重に気を遣っています。
一方、ある男子大学生は、「他人の悪口は絶対にネットに書かない」と決めています。
高校時代には、愚痴アカを持っていましたが、「他人の愚痴アカを見ていて、自分のこともこうやって裏で言われているのかな」と思うと嫌な気持ちになり、やめたそうです。「手帳に日記を書いているので、それで気が済む」とのこと。それもまた、ひとつの知恵ですね。
記者として見逃せないのは、「ニュース用」というサブアカの使い方です。
周りの友だちのツイートが流れてくる本アカと、情報収集用とを分けるというのは、頭の切り替えにもなりますし、「なるほど」な使い方です。「就活用にニュースアカを作った」という人もいました。
一方で、
「ニュースに反応したら『意識高い系』と引かれてしまう」という意見が複数ありました。
社会問題に関心があるけれど、人には言えない。政治や社会に関するネタって、やはり若い人にとって、ハードルが高いようです。
今回サブアカの使い方を聞いたのは、約90人ですが、上記三つ以外にも、たくさんのバリエーションがありました。
例えば、
恋人との共同アカ/のろけ用/エロ用/芸能人にリプ(返信)する専用/勉強用/ダイエット用/ネタ投稿用/短歌投稿用/イラスト投稿用/インスタグラム連動アカ
などなど。
小中高の同級生ごとにアカウントを分け、同窓会名簿代わりにしているという人もいました。演劇をやっていて、俳優としてのアカ、演出家としてのアカを分けているという例も。
フォローもフォロワーもゼロにして鍵をかけて、日記や「to doリスト」、写真保存庫として使うという事例も、ちらほらありました。
でも、それ専用のアプリを使った方が便利なのではないでしょうか……?
疑問をぶつけてみると、
「アプリを入れすぎたらメモリの空き容量が少なくなる」(大学4年 女性)
「アプリを切り替えるのが面倒。ツイッター内で全部済むならその方がいい」(大学4年 女性)
といった返事が返ってきました。なるほど……。
ただ、
「ブラック気味な職場で働いている友人は、鍵アカ(非公開アカウント)で『出勤した』『退勤した』と毎日ツイートしていました。ツイートには何時何分と表示されるので、今後なにかあった時に、どれだけ働かされていたのかという記録になる」(大学4年 女性)
という話を聞いたときは、うなりました。まさかツイッター社も、こうした使われ方は想定していなかったでしょう。
さて。ここまでサブアカの使い方を書いていて、気になることがひとつ。
じゃあ「本アカ」は、どう使っているのでしょう?
身の回りのことをつぶやいているという以外に、こんな意見がありました。
「あんまりツイートしません。リア友のツイートを見るための閲覧専用アカという感じ」(大学4年 男性)
リアルな友だち相手に、うっかり引かれてしまう投稿はできません。「結局みんな、閲覧のみにして牽制(けんせい)しあっている状態」だそう。そして、サブアカを用途別につぶやき分ける一方で、本アカは真空状態になるのだとか。
SNSが日本で使われるようになって、すでに10年以上。
上の世代の様々な失敗を反面教師に、いまの若い世代は、合理的に、したたかに、SNSを使いこなしているようです。
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