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2017年11月14日

「ネ裏」「ハトノス」って? 野球の撮影、知られざる“昇進制度”

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阪神甲子園球場のバックスクリーン。センターのカメラマン席もこの中のどこかにあります=加藤諒撮影

阪神甲子園球場のバックスクリーン。センターのカメラマン席もこの中のどこかにあります=加藤諒撮影

出典: 朝日新聞社

 野球場にはいくつかの撮影ポジションがあります。クライマックスシリーズや日本シリーズ、高校野球などの重要な試合では、複数のカメラマンがチームを組んで撮影することがあります。それぞれのポジションにどんな人が、どんな狙いで撮影にあたるのか、解説したいと思います。

基本ポジションは四つ

 基本的なポジションとしては、一塁側カメラマン席(一カメ)、三塁側カメラマン席(三カメ)、センターのバックスクリーン横(センター)、バックネット裏(ネ裏)などがあります。

出典: 朝日新聞社

 それぞれの場所から撮影しなければならないものは、大体決まっています。一カメなら打撃と本塁生還、三カメは三盗や三塁打の滑り込み、センターは全ての打撃、ネ裏は投球やピッチャー返しの打球などです。

 先日の日本シリーズで、ポジション別の撮影例を見ていきましょう。

同じ打席も、狙いはいろいろ

 こちらは一塁側カメラマン席から撮影した内川選手の本塁打です。打球がバットに打ち返されている「インパクト」と呼ばれる場面を見事にとらえています。

九回裏ソフトバンク1死、内川は左越えに同点となる本塁打を放つ=長沢幹城撮影

九回裏ソフトバンク1死、内川は左越えに同点となる本塁打を放つ=長沢幹城撮影

出典: 朝日新聞社


 同じ場面を三塁側カメラマン席から見るとこうなります。こちらはバットを振り切った後の「振り切り」と呼ばれる場面です。

九回裏ソフトバンク1死、内川は同点本塁打を放つ=林敏行撮影

九回裏ソフトバンク1死、内川は同点本塁打を放つ=林敏行撮影

出典: 朝日新聞社


 次に、センターのカメラマン席から見てみましょう。一塁を回る内川選手の後方に打球の行方を見つめるソフトバンクの選手の姿が見えます。

九回裏ソフトバンク1死、内川は左越えに同点本塁打を放ち、一塁を回る=上田潤撮影

九回裏ソフトバンク1死、内川は左越えに同点本塁打を放ち、一塁を回る=上田潤撮影

出典: 朝日新聞社

 センターのカメラマンは、打撃を撮影した後、打者を追ってカメラを振るのが定番です。本塁打の場合、打者のガッツポーズや相手投手と一緒に写っている場面、三塁を回ったところで相手ベンチとからんでいる所も撮影します。

 再び、三塁側の三カメに戻ります。先ほど内川選手の「振り切り」を撮影した後、ピントを打たれた山崎康投手に合わせます。後ろに内川選手が走るタイミングを見計らって、その表情をとらえます。

九回裏ソフトバンク1死、内川に同点本塁打を許した山崎康=林敏行撮影

九回裏ソフトバンク1死、内川に同点本塁打を許した山崎康=林敏行撮影

出典: 朝日新聞社


 ネット裏のカメラマンは、三塁を回ってコーチに向かって喜びの表情を見せる内川選手を撮影しました。ベースを回る選手をカメラで追いかけながら、激しい感情を見せる瞬間を狙っています。

九回裏ソフトバンク1死、内川は同点の本塁打を放ち三塁を回る=日吉健吾撮影

九回裏ソフトバンク1死、内川は同点の本塁打を放ち三塁を回る=日吉健吾撮影

出典: 朝日新聞社


 こちらもネット裏からの写真です。投球する投手を正面から撮影することができます。サファテ選手の表情には気合の入った、鬼気迫るものがあります。

延長十一回、力投するソフトバンク・サファテ=日吉健吾撮影

延長十一回、力投するソフトバンク・サファテ=日吉健吾撮影

出典: 朝日新聞社

野球撮影では「お約束」が大事!

 これはいわば、撮影における決まりごと・ルールを、撮影者全員で共有しているようなもの。そのルールを破って勝手に撮影していては、チーム取材が成り立ちません。

 たとえば走者を二塁に置いて、三塁打が飛び出したとき。一カメが走者の生還を撮っていてくれるから、三カメは三塁打を放った三塁走者の滑り込みを狙えるのです。そういう意味で、同僚との信頼関係はかなり重要です。

 新人のカメラマンにとっては、まずはこの基本ルールどおりに撮影できるようになることが目標です。いきなりプロ野球を撮影するのはハードルが高いので、夏の高校野球地方大会や大学野球で、ポジションごとの撮影方法を学んでいきます。

センターのカメラマン席ではこのように大きな600ミリのレンズを構えます。パソコンはすぐ横の台に置いて、すぐに写真を送信できるようにしています

センターのカメラマン席ではこのように大きな600ミリのレンズを構えます。パソコンはすぐ横の台に置いて、すぐに写真を送信できるようにしています

各社のエースがしのぎを削る「一カメ」

 「一カメに始まって、一カメに終わる」
 私がスポーツ紙に出向していた頃、こんな言葉を聞いたことがあります。

 朝日新聞では、一カメには若手のカメラマンが入ることが多いのですが、スポーツ紙では全く逆。各紙のエースカメラマンが毎日、一カメでしのぎを削っているのです。

 一カメは全てのプレーを見渡せる、いわば「万能のポジション」。球場内のどこにカメラを振るかは、そのカメラマンの判断にかかってきます。ここが腕の見せどころなのです。

 私が新人だった頃、東京ドームや阪神甲子園球場の一カメには、なんとなくピリピリした雰囲気が漂っていました。ベテランのカメラマンに恐る恐る名刺を渡し、あいさつをしたものです。

一カメは、打球を追う選手の邪魔にならないようにすることも大事です。WBC2次リーグ・オランダ戦で、飛球に飛びつく中田翔選手=2017年3月12日、川村直子撮影

一カメは、打球を追う選手の邪魔にならないようにすることも大事です。WBC2次リーグ・オランダ戦で、飛球に飛びつく中田翔選手=2017年3月12日、川村直子撮影

出典: 朝日新聞社

 朝日新聞では、新人カメラマンは一カメからスタートします。いろいろなプレーをひととおり撮影できる場所から学んでいきます。最初は先輩の後ろに座って、その撮影方法を見たり、先輩に隣に座ってもらい、同時に撮影しながらアドバイスを受けたりします。

 一カメで問題なく撮影することができれば、三カメ、ネ裏、センターと徐々に進んでいきます。

 一方、スポーツ紙にとっては、センターは若手に任せることもよくあるようです。このポジションは一球一球、全ての打撃を撮影します。バットにボールが当たっている瞬間はタイミングを取るのが難しいのですが、淡々とリズムを崩さずルーティン通りに撮影することが求められます。いわば「マシン」のような正確性が必要なのです。

忘れられない試合

 私が16年ほどプロ野球を撮影してきた中で、忘れられない試合があります。2013年の日本シリーズ。仙台で楽天が巨人を破り、初の日本一になったときのことです。

盛り上がる楽天ファン=2013年11月2日、長島一浩撮影

盛り上がる楽天ファン=2013年11月2日、長島一浩撮影

出典: 朝日新聞社

 このときは久々に一カメで取材をしたのですが、自分自身、判断ミスの連発。投手を撮るべき場面で、打者を追っていたり、打撃を撮り逃したり。思うように撮影できない日々が続きました。

 そんな中、第7戦9回表の場面でマウンドに上がったのは、まさかのマー君こと田中将大投手。見事な投球で胴上げ投手となりました。

 ラッキーなことに、優勝が決まるとマウンドに選手が集まり、特に田中投手が一カメに向かって喜びの表情を爆発させた瞬間を撮影することができたのです。「ああよかった。これで無事に会社に帰れる」とほっとしました。

 自分としては、ほろ苦いシリーズ。久々の一カメは、初心を思い出させてくれたのです。

日本シリーズを制し喜ぶ楽天の選手たち。中央は田中将大投手=2013年11月3日、矢木隆晴撮影

日本シリーズを制し喜ぶ楽天の選手たち。中央は田中将大投手=2013年11月3日、矢木隆晴撮影

出典: 朝日新聞社

 阪神甲子園球場で開催される高校野球の撮影ポジションではほかにも、三塁と本塁の延長線上にある「三本」や、そのさらに上のほうの「三本上」。かつては銀傘のすぐ下に設置され、球場を俯瞰(ふかん)できる「鳩の巣」と言われる場所もありました。

 全てのポジションをクリアする「無双状態」になるには、それなりに長い年月がかかるのです……。

背中で語る男・筒香 クライマックスS、雨中の死闘をもう一度
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DeNAの主砲、筒香のユニフォームは泥で真っ黒になってしまった=小林一茂撮影
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出典:朝日新聞
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