コラム
心を壊す研修の実態とは… 〝30秒で泣ける漫画〟の作者が描く
漫画家・吉谷光平さんが「心を壊す研修の実態」について描きました。

参加者の心を壊す研修の実態とは? ツイッターに投稿した漫画「男ってやつは」が〝30秒で泣ける〟と話題になった漫画家・吉谷光平さんが描きました。


「弱みをさらけ出せ」。遺族や代理人弁護士によると、講師にそう迫られた男性は、吃音(きつおん)を同期の社員らの前で「告白」させられた。
「吃音ばかりか、昔にいじめを受けていたことまで悟られていたことを知った時のショックはうまく言葉に表すことができません」「しかもそれを一番知られたくなかった同期の人々にまで知られてしまったのですから、ショックは数倍増しでした。頭が真っ白になって、その後何をどう返答したのか覚えていません」。男性は研修日誌にそうつづったが、父親は「男性は吃音ではなかった」と話している。参加者によると、感極まって涙を流す受講者も多数出る異様な雰囲気の研修だったという。
その後も長時間の研修や自主学習を強いられた男性は同年5月19日、自宅に帰る途中で自殺した。

研修の一部を手がけたビジネスグランドワークス社(東京)は、ゼリア社のほかにも多数の上場企業や有名企業の研修を受託し、委託先の企業名をHPに載せていた(現在は削除)。うち一社の広報担当者は「自分もここの研修を受けたことがある。泣いている人もいた。達成感、一体感があってよかったが、来年度の委託は中止した。こういう研修を受けさせているのかと消費者の目も厳しくなっているので」と話す。
労働相談を受けているNPO法人POSSE(ポッセ)の今野晴貴代表理事は「肉体の酷使にとどまらず、人格を否定し、それまでの価値観を破壊するような『ブラック新人研修』はこの10年で増加傾向にある。ひどい労働環境でも辞めないように、最初に順応させる狙いがある」と指摘する。


【よしたに・こうへい】 漫画家。サラリーマン生活や漫画家アシスタントなどを経て、月刊スピリッツの「サカナマン」でデビュー。漫画アクションで「あきたこまちにひとめぼれ」を連載中、月刊ヤングマガジンの連載「ナナメにナナミちゃん」の単行本1巻が発売中。ツイッターで公開した2ページ5コマの漫画「男ってやつは」が〝30秒で泣ける〟と話題に。