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中国人留学生が見た衆院選 「ポスターの笑顔、見分けつかない」
10月22日に投開票された衆院選。選挙カーから連呼される名前や、ポスターなどは外国人の目にどのようにうつったのでしょう。「ポスターは笑顔ばっかりで見分けがつかない」「手伝う人は高齢者が多い」。日本の大学院で学ぶ留学生に聞いてみました。
話を聞いたのは、東大の大学院で建築を学ぶ莉さん(中国浙江省出身)です。
まず選挙カーについて。
「名前の連呼、やっぱりうるさいですね」
選挙用のポスターは「色が鮮やかで、笑顔や、やる気をアピールするものが多いです」。ただ肝心のポスターが誰なのかは「同じ表情ばかりでよく分からない」という感想。
「難しい漢字はひらがなに書き換えられているところが印象的でした」
また、選挙を手伝う人は高齢者が多いと感じているそうです。
「のぼりを持つ人やビラを配る人、街で見かける人はお年寄りが多いと思いました。候補者と握手する支持者も、やはり高齢者ですね」
選挙期間中に流れる政見放送は「見ない」そうです。
一方で、莉さんは「国会中継を時々見ています。実に面白いです」と話します。
「ヤジはかなり独特だと思います。誰かが発言すると、同じ党派の人は、声援やエールを送り、対立する党派だとバッシングに。普段、礼儀正しいと評判の日本人が、国会だとなぜか『酔っ払ったおじさん』のような感じになります。居眠りの人もけっこう映っていますし(笑)」
中国の国会にあたるものでは全人代が有名ですが「ヤジは絶対、見られない」と莉さん。
「国を背負うという厳かな雰囲気が漂っています。ただ、中国の全人代で審議される法案は事実上、すでに決まっていて99%や100%で賛成されます。そして、みんなで一斉に拍手するのも中国ならではでしょう」
莉さんは「中国は確かに西洋式の民主主義ではないです」と話します。一方で「人材の選抜に関しては、かなり厳しい制度があるのも事実です」と付け加えます。
「例えば、幹部が中央のポジションを得るためには、地方での長い勤務経験が必要です。また中央に行っても、いきなりトップになれるわけではありません。習近平氏がトップになるまで、中央でさらに5年間、実績を積み上げました」
11月にはアメリカのトランプ大統領が来日します。莉さんは、トランプ大統領のような、ビジネスマンから政治経験がゼロのまま政治のトップに転身することは「中国では絶対に無理」と強調します。
「政治経験がない人にとっては、おそらく、村長や町長などの幹部になるのも大変でしょう」
その上で「西洋式選挙」の問題点として、39歳の若さで当選したフランス大統領のマクロン氏や、31歳でオーストリアの首相候補になったセバスティアン・クルツ氏の例を挙げます。
「最近、ヨーロッパでは、若くて外見がハンサムな人が人気のようです。もちろん彼らは優秀だと思いますが、一国のリーダーとして、未知な部分が多いと感じます。中国では、政治経験が浅い人にトップを任せることは考えられません」
そこには中国独自の考え方があると言います。
「中国の指導者は、少なくとも顔や弁才では選ばれません。中央に入れる人は厳しい競争を勝ち抜いた、えり抜きの人材なので、ある意味、誰がトップになっても国民は安心できます」
中国でも、村や町の首長を決める際には選挙はあり、莉さんも両親が社区主任(村長相当)選挙に投票したことを覚えているそうです。
日本人と結婚した莉さん。現在国籍は中国ですが、もし将来的に日本国籍になったら「投票権があれば、きっと投票にいきます。まずは、街頭演説のところから、関わっていきたいと思っています」と話していました。
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